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わたしにはわたしの考えがある。
陸
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田舎ではあたりまえの大人の遊園地とも揶揄される大型のホームセンターが、ない。これは、わたしが都会でのひとり暮らしを始めて、一番に不便を感じたところ。
そこで目を付けたのが、百円ショップ、通称百均だ。
ほぼすべての商品が百円(税別)で売られているお財布へのやさしさはもちろんのこと、文具、化粧品、台所用品、園芸用品等の生活用品から趣味の小物その他諸々、日用使いの品はなんでも揃っている便利さも素晴らしい庶民のパラダイスである。
御多分に洩れずわたしも百均好き。街へ出れば自然に足が向いてしまう。
「だ、か、ら! なんでもかんでもぽいぽいカゴに入れないでくださいって何度言ったらわかるんですか?」
「えーなんでー? 面白そうじゃない? これ」
「面白いから買うんじゃなくて必要だから買うんです。いいから、元のところへ戻してきてください」
まただ。これで何度目だろう。
荷物持ちがいたほうが便利だろう、との言葉をついうっかり真に受けて車を出してもらったのはいいけれど、庶民生活とは縁もゆかりもない御曹司を連れての買い物が、これほどの苦行とは。
というか、こういう買い物自体、こいつはしたことがあるのか、甚だ疑問ではあるが。
「ねえ、なんでそんなの買うんだよ? 茶碗とか皿とか、うちにたくさんあるだろ?」
「……あのですね、マイセンとかバカラとか古伊万里とか、その他諸々食器棚に眠っているのは知ってますけど、あんなご大層なものを普段使いにできると思いますか?」
「なんで? ふつーに使えばいいじゃない?」
「無理ですよ。あんな高価なもの恐くて使えません。食洗機にだって入れられないし……」
——食洗機は是非とも使ってみたいのに。
「入れればいいじゃない?」
「……傷ついたり割れたりしたらどうするんですか?」
「べつに……割れたら補充するだけだし、気になるんだったら使ったまま置いておけば、吉沢さんが片付けてくれるでしょ」
「そんなの……勝手に使ったものまでお願いできません」
「それが彼女の仕事だし」
「だからって……とにかく! 使用済みの汚れ物を置きっぱなしにするのは嫌いなんです。それに、あんな高級食器にインスタントラーメンやレトルトカレーなんて似合いません」
「あ、俺、インスタントラーメンって食いたいかも」
言うが早いか、嬉々として食品コーナーへ向かおうとする専務の腕をガシッと握って動きを止める。
「このあと食品スーパーへ行きますから、そこで買ってあげます」
「いまじゃだめ?」
まったく。目的の買い物が進まず時間ばかりが過ぎていく。たかが日用品の買い物程度で、三十二歳にもなったいい大人の男のこの浮かれ様はなんなのだ。
「専務、お願いがあるんですが」
「ん? なあに?」
「買い物の邪魔になるので、もう喋らないでいただけますか?」
「…………」
子どもみたいに膨れても、ちっともかわいくありません。
そこで目を付けたのが、百円ショップ、通称百均だ。
ほぼすべての商品が百円(税別)で売られているお財布へのやさしさはもちろんのこと、文具、化粧品、台所用品、園芸用品等の生活用品から趣味の小物その他諸々、日用使いの品はなんでも揃っている便利さも素晴らしい庶民のパラダイスである。
御多分に洩れずわたしも百均好き。街へ出れば自然に足が向いてしまう。
「だ、か、ら! なんでもかんでもぽいぽいカゴに入れないでくださいって何度言ったらわかるんですか?」
「えーなんでー? 面白そうじゃない? これ」
「面白いから買うんじゃなくて必要だから買うんです。いいから、元のところへ戻してきてください」
まただ。これで何度目だろう。
荷物持ちがいたほうが便利だろう、との言葉をついうっかり真に受けて車を出してもらったのはいいけれど、庶民生活とは縁もゆかりもない御曹司を連れての買い物が、これほどの苦行とは。
というか、こういう買い物自体、こいつはしたことがあるのか、甚だ疑問ではあるが。
「ねえ、なんでそんなの買うんだよ? 茶碗とか皿とか、うちにたくさんあるだろ?」
「……あのですね、マイセンとかバカラとか古伊万里とか、その他諸々食器棚に眠っているのは知ってますけど、あんなご大層なものを普段使いにできると思いますか?」
「なんで? ふつーに使えばいいじゃない?」
「無理ですよ。あんな高価なもの恐くて使えません。食洗機にだって入れられないし……」
——食洗機は是非とも使ってみたいのに。
「入れればいいじゃない?」
「……傷ついたり割れたりしたらどうするんですか?」
「べつに……割れたら補充するだけだし、気になるんだったら使ったまま置いておけば、吉沢さんが片付けてくれるでしょ」
「そんなの……勝手に使ったものまでお願いできません」
「それが彼女の仕事だし」
「だからって……とにかく! 使用済みの汚れ物を置きっぱなしにするのは嫌いなんです。それに、あんな高級食器にインスタントラーメンやレトルトカレーなんて似合いません」
「あ、俺、インスタントラーメンって食いたいかも」
言うが早いか、嬉々として食品コーナーへ向かおうとする専務の腕をガシッと握って動きを止める。
「このあと食品スーパーへ行きますから、そこで買ってあげます」
「いまじゃだめ?」
まったく。目的の買い物が進まず時間ばかりが過ぎていく。たかが日用品の買い物程度で、三十二歳にもなったいい大人の男のこの浮かれ様はなんなのだ。
「専務、お願いがあるんですが」
「ん? なあに?」
「買い物の邪魔になるので、もう喋らないでいただけますか?」
「…………」
子どもみたいに膨れても、ちっともかわいくありません。
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