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42 コボルトさんの街でお手伝い

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 コボルトの坑道街での一夜が明ける。
 俺が目を覚ますと、同じベッドの上には大型犬もゴロリと寝転がっているのだった。正確にはフェンリル大狼、ようするにロアさんである。

 枕元ではミニトカゲ姿のトカマル君も丸まって眠っている。
 
 このベッドはコボルトさんサイズで作られているので小型である。ただでさえ狭いのに、もはやギュウギュウの極みだった。

「おはようございますエフィルアさん。昨日よりは小型化しているはずですから、そこを褒めてください」
 ロアさん狼は寝ぼけ眼を前足で擦りながら言った。

 彼女の体躯は確かに、昨日の状態よりは小型化されていた。今はゴールデンレトリーバーを2倍にしたくらいのサイズにはなってる。

「これほどのサイズ調整能力は、そんじょそこらの人狼には出来ないですよ?」

「そうは言われても、まだ少しベッドに対しては大きすぎるかと」
「ぐるるるる」

 唸るロアさん狼をベッドの上からズリおとし、俺は部屋の外へ出た。
 コボルトさん達は皆、朝からもうバタバタと動き回って仕事をしているようだった。周囲の探索に行く者、鉱物採集に行く者、鉱物を加工してアイテム制作をする者、掃除や食事の支度をする者。あとは元気いっぱいに遊びまわる子供たち。

 さて、俺達もしばらくこの街に滞在させてもらうわけだから、さっそく何か仕事を探さねばならんな。

「おはようございますジョイポンさん、何か俺に手伝える事でもありませんか」
「そんなそんな、恐れ多い。街に滞在して下さるだけで心強いのですから。すでに昨夜もアースクラーケンのような強大な敵から街を守って下さるという大業を成されたのですし、しばらくはごゆるりとお寛ぎ下さい」

「いえいえ、それでは困りますよ。何かやる事がなければ落ち着きませんし、ただで御やっかいになるのも気がひけます」
 
 むりやりにジョイポンさん達から話を聞きだすと、3つの仕事案が浮上してきた。

 1つ目は、また食事を作ってふるまってほしいという依頼だった。
 これは俺にとっても願ってもない仕事だ。いつでもやろうではないか。コボルト料理も学びたいしな。ただし、この世界の食事は基本的に晩御飯のみ。まだ今の時間だと食事の準備には早すぎる。 

 そして2つ目の仕事案。空間転移を元に戻せないかという話が出てきた。
 これに関しては解決方法がまるで分からないので、とりあえず保留とした。

 最後に3つ目。近くに埋まってるアンデッドの古城が怖いから様子を見てきてほしいという依頼だ。
 ここよりもさらに下層にあるらしい。

 はい。そんなわけでやってきました。
 アンデッドが巣食うという埋もれた古城の前に到着です。

 とはいっても、基本的に城全体が地中に埋まっているので、外から見ただけではこれが本当に城なのかは分からない。大きさも良く分からない。
 ただ城らしき建物の一部が土の中から顔をだしているという状態である。

「ここから中に入ることが出来ます」
 案内してくれたコボルト族の戦士団が教えてくれる。
 そこには朽ちかけた扉がある。もともとは立派な木製の扉だった様子が伺えるが、今では扉を開けずとも中が見えてしまうような有様だった。
 
「中から美味しそうな成熟したアンデッドの香りがプンプン匂ってきますね、エフィルア様っ!」
 無邪気に喜ぶトカマル君。すでに戦闘モードになっていて、全身が白銀のプレートで覆われている。トカマル君の身体はミニトカゲ状態だったり少年モードだったり、騎士モードだったり。時と場合によって自由に変化してゆく。


「魔神様。この城の奥にはなにやら怪しげな死霊術士が棲んでおるのです。我らの街にも一度顔を見せた事がありますが、あれは只者ではありませんでした」

 コボルト戦士の団長が、眉間に皺を寄せてグルグルと喉を鳴らした。
 死霊術士はアンデッドモンスターを引き連れてふらりと街に立ち寄ったが、すぐに古城へと消えてしまったという。
 
 さて今日の古城探索は俺とトカマル君、ロアさん。それにプラスしてコボルトの戦士団から選抜された精鋭10名で行われる。

 精鋭とはいっても彼らのレベルは30前後。身につけた装備品が上等なので防御力は高めだが、今日のメンバーの中では戦闘能力は低い。

 トカマル君は昨日進化しているし、その前の戦闘でもレベルは上がっていたからな。なかなか強くなっているぞ。
 一昨日のダンジョン探索を始める前では29だったのに、色々あってその日のうちに41にあがっていた。
 そして昨日の鉱物料理をたらふく食べた事でさらに進化。
 新トカマル君、白銀鎧モードのステータスはこうなっている。


  【名前】トカマル
UP 【種族】冥界ジュエルサラマンダー (人型→ 白銀の騎士)
  【職能】未設定
UP 【LV】29→ 58
 ------------------------
UP 【H P】32→ 62
UP 【M P】39→ 73
UP 【攻撃力】44→ 115
UP 【防御力】36→ 122
UP 【魔 力】41→ 75
UP 【速 度】32→ 65

 魔物を倒したときの通常のレベルアップでは、全ステータスが平均的に伸びていた。おおむねレベルが1上がるごとに各能力地も1上がっていた。

 大きく上昇したのは白銀の鎧状態に進化した時。攻撃力と防御力の数値は、通常のレベルアップよりも2倍以上の上昇を見せた。
 トカマル君が摂取した鉱物料理の多くは、ミスリルなどの良質な金属鉱石をたくさん含んだものだったらしい。そのせいで身体が固く強く進化したのだろう。
 
 種族名も変わって、冥界ジュエルサラマンダー(白銀の騎士)となっていた。
 いつのまにやらトカマル君は騎士様になっていた。もちろん爵位としての騎士とは違うのだろうけど、なんだか立派になったものだ。
 それでも彼はまだ0歳児だし、俺やロアさんに比べたらステータスも低いのだから無理は禁物だが。

 そんなトカマル君に、今日もステータス上昇食材を食べてもらう。
 上昇効果には時間制限があるから、戦いの直前に摂取してもらうのが良いと思っている。

 さて今日のブースト肉はこちら。
 オーク、ハルピュイア、窟化バジリスク。こちらの3種になります。
 ハルピュイアとバジリスクのブースト肉は新登場だ。昨日獲れた新鮮な素材を、今朝のうちに九十九さん達と加工をしておいた。

 ハルピュイアは速度、バジリスクは魔力と防御力の上昇効果だった。
 これにオーク肉を加えた3種。それぞれを3段階目までフルに摂取すると、トカマル君はこんな具合。
 ()表示されているのはブースト肉の効果が追加された数値だ。

【H P】62 (81)
【M P】73 
【攻撃力】115
【防御力】122(242)
【魔 力】75 (138)
【速 度】65 (133)
  HP自然回復 +12% 

 いままで使っていたブースト肉の効果は、だいたい+18前後だったが、流石にレベルの高いモンスターの肉だと効果は高まる。バジリスクの防御上昇効果なんて+102もある。

 ちょうどトカマル君のレベルも上がってきていて、角兎では物足りない上昇値になっていたからありがたい。これでまたガシガシとレベルを上げられそうだ。
 ちなみにイカ肉も準備してきたのだけれど、

【アースクラーケンのブースト肉】
  【HP】+41(+128) 【MP】+22(+74)
  【HP自然回復】+10%(+31)
   使用可能レベル:66

 仕様可能レベルが66からとなっていたのだった。このアイテムはトカマル君のレベルだとまだ摂取できないのである。

 1回の使用でもHPが+41。()内の数字は3回重複使用したときの最大上昇値で、イカ肉の場合は+128も上がる。
 これをトカマル君が使えるようになるまでは、あと8レベルか。それまで楽しみに取っておこう。
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