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11 武器錬成

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 トカマル君が進化したのはめでたい。
 いまや俺と同等かそれ以上に強くなってしまったのだから。戦力は倍増したのだ。

 2人で連携して戦う事だって出来る。
 防御力だけがやたらと高い俺が魔物を引きつけておき、その他のステータスが平均的に高いトカマル君が攻撃する。そんな感じだ。

 それからもう1つ、トカマル君のスキル欄に新たな技が追加されていた。【金属練成】という名称のスキルだ。
 
「やってみて良いですか?」
 なんとなく本能的に使い方が分かるそうだ。
 ヤル気満々のトカマル君。何かを生み出すような、あるいは身体を拡張するようなスキルらしいが。

「広いところに行かなくて大丈夫?」
「たぶん」

 なんとなく心もとない返事だったので、念のため大屋さんの店から外に出る事に。

「ヒッヒ、なら裏庭を使うがいいさね」
 そう言った大屋さんも一緒に裏庭へと付いてきた。見学したいらしい。目をまん丸に見開いてトカマル君を見つめている。

 トカマル君は再び少年モードに変身して準備万端。

「じゃ、いきますね…… …… ふぉい!」
 気合いの雄たけび。その瞬間、彼の手の中に一本の剣が現れていた。それは見覚えのある剣だった。

 そう、さきほどトカマル君が吸収した俺の剣と良く似ているのだ。
 ただし、錆びてもいなければ刃こぼれもしていない。今まさに鍛えなおしたような上等な長剣だった。

「うーん、はいっ。エフィルア様どうぞ」

 トカマル君はその剣を俺に手渡してくれる。トカマル君に食べさせた剣がパワーアップして返ってきてしまった。

 しっかりと握ってみると、明らかに元の状態とは違っていた。
 単に綺麗に打ち直されているだけではない。
 感覚的な事なのだが、魔力の通りが良くなったような手応えがあるのだ
 手に良く馴染んで、剣が自分の身体の一部になったかのような感覚だともいえる。

【魔鋼の長剣】
 魔鋼製の頑丈な長剣。魔鋼は鉄鉱石に長い年月をかけて魔素が浸透して生まれる素材。比較的安価で幅広く用いられる。この剣には微量の魔銀も含まれているため魔素伝導性能も高い。

 鑑定スキルで見てみると、武器の名称まで変わっていた。
 これを装備した状態でステータスを確認してみると。
【攻撃力】18→ 32 (14up)

 素晴らしい性能だった。ジャンク品扱いで5000ロゼで買った武器だとは思えない。トカマル君やるなぁ。なかなか素敵な能力ではなかろうか?

 そう思って、トカマル君のほうを見てみると、おや? なんだ、どうしたんだ?
 お腹を押さえてしゃがみこんでいるではないか?!

「ト、トカマル君大丈夫か? お腹痛いのか?」
 慌てて近寄る俺だったが、彼は首を振った。お腹が痛いわけではないらしい。

「お腹が減っちゃったんです」

 詳しく話を聞いてみると、あの剣を身体の外に出した分だけお腹が減ってしまったらしい。俺が剣を返すと、再び手から身体の中に吸収されていった。
 こうすると、お腹の減りも収まったようだ

 どうやらハラペコ状態にならないように武器を生成するためには、もう少し他の金属や鉱物を体内に取り入れる必要があるらしい。今はまだ栄養不足なのだろう

 それならばと、大屋さんの店にあるいくつかのオンボロ武器を購入し、トカマル君に吸収してみてもらう事に。お金が足りなかったので骸骨狼の魔石を2つ売却。合計売価22,000ロゼだった。
 そして再び剣を生成してみてもらうと、今度はハラペコ状態にもならずに、さらに先程よりも上等な長剣が生み出されていた。

 
【魔鋼の長剣+3】
 魔鋼の長剣の中でも選別された上等な素材を使って作られた逸品。

 基本的には先ほどの物と同じだが、これを装備するとさらに攻撃力が3上昇していた。俺の攻撃力は合計35になった。
 そして次にもう1本。トカマル君は自分用にも武器を生成していた。


【魔銀のダガー】
 魔素伝導性の高い魔銀をフンダンに使った短剣。素材自体の頑丈さや切れ味よりも、魔力を通して使用する事で威力を発揮する。
 魔銀とは、普通の銀を錬金術で加工し、魔素伝導率や魔素含有容量を増加させたもの。ミスリルに近い性質を持つが劣化しやすい。長期的な使用にはむかない。

 これを装備したトカマル君のステータスも確認。
【攻撃力】24→ 34 (10up)

 魔銀は量が少なくて小さな武器しか作れなかったようだが、それでも自分で扱いやすい最適な形状の武器を作ったようで、攻撃力の上昇効果は高かった。

 この2本の武器生成にかかった費用は合計26,000ロゼだった。
 始めに買った長剣と、いま追加で購入した3本の総額である。

 トカマル君が再練成してくれた2本の剣。これとと同じような性能をもつ武器を普通に購入すると、その価格は7~8倍以上にはなりそうだった。
 凄まじいお得感である。

 お得すぎて、なんとなく大屋さんに申し訳ないような気分にもなる。しかし、

「ひやっひゃっひゃ。何を言ってるんだい? ちゃあんと私も稼がせてもらったじゃないか。売った商品をどう使おうがあんたの勝手。やるじゃぁないか。ガラクタから利益を生み出した。あたし好みの芸当だ。ひっひ、あんたらはきっといい男になるねぇ。もっともっとお稼ぎよ」

 大屋さんは何だか楽しそうだった。まあいいか。

 さてトカマル君も強くなったし、なかなかの武器も手に入った。
 俺達はもう1度アンデッドの出現ポイントに移動し、ガンガン討伐を進めていった。

 本来なら異状にしぶとい敵であるはずなのだが、トカマル君の特性でアンデッドの魂を吸い込んでくれるのでサクサク倒せる。

 トカマル君のステータスに記載されている【魂魄奉天】という特性は、おそらくこれの事なのだろう。

 アンデッド達を覆っていたモヤモヤは、淡い光の粒子になって消えてゆく。次々に消えてゆく。
 お昼過ぎくらいまでには、荒地のアンデッドは綺麗さっぱり消えて無くなっていた。
 荒地全体を覆っていた不浄っぽいモヤモヤすらも、今はもうなくなっている。

「ふぃ~、良く働いたなー」
「もう食べられません~」

 流石のトカマル君も後半は苦しそうだった。霊魂ばかりを食べていると飽きてくるらしい。違う味が欲しくなるという。

 骸骨狼の魔石×28
 ゴーストの魔石×12
 骸骨兎の魔石×24
 骸骨剣士の魔石×6
 とろけた腕先の魔石×8

 もはや安定の100%魔石ドロップ。合計78個。
 どれも欠けや割れや濁りもなく綺麗な輝き。品質も良さそうだ。
 おそらく78万ロゼくらいにはなる。
 これ以外に、朝方に倒した3体分もあるわけだ。
 
 もはや運が良いとかの話ではないのは明らかである。

「もしかしてトカマル君が何かしてる?」

 冥界ジュエルサラマンダーである彼の影響が何かあるのではと思って聞いてみる。

「え? 違うと思いますよ。エフィルア様から漏れでてる闇の魔力の影響じゃないですかね? そのせいで、どの魔物も凄く活きが良いように思いますし」

 トカマル君はそんなふうに見立てていた。
 闇属性の魔力ねぇ。人間には不快でも、魔物にはプラスの影響があるのやもしれぬ。だとしたら、俺って人類の敵だよなぁ。こわいこわい。

「エフィルア様。大丈夫ですよ。僕は魔物じゃなくって精霊ですけど、エフィルア様の魔力が大好きですから。それにほら、雑巾の九十九神もエフィルア様の事好きですから」

 ぬう。いいこだな。トカマル君はいいこだな。
 そんな彼を頭に乗せつつ、今日の任務はこれにて終了。冒険者ギルドへ帰還する。
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