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番外編SS
初夜◇
しおりを挟む「――もう、本当に信じられない」
「すみません」
「すみませんじゃ、足りないわよ。あんな所で」
「スティーリア様が可愛いのがいけないんです」
「私のせいにしないで」
式も無事終了し、ウエディングドレスから着替え私達は寝室にむかって歩いていた。その間、私はお説教という形で、昼間のファルクスの駄犬っぷりについて話していた。ファルクスはそれを聞きながら、はい、とか、そうですね、とか、すみませんでした、と口にはしていたけれど、全く誠意が感じられないものばかりだった。挙げ句の果てに、「スティーリアが美しすぎて」とか、「スティーリアが離さないでくれと目で訴えかけてきて」と責任を私になすりつける始末。学習しないというより、それでも私に許して貰えるといったそういう自信がある、というように私は感じた。確かに、ファルクスのやることは度が過ぎていることもあるけれど、最終的に私は許してしまう。だからこそ、こんな性格になってしまったのだろうと、完全に躾を失敗し、犬に舐められている主人になってしまったわけだが。
「……ふっ」
「ひゃあ!? な、や、やめなさい。何、ファル。耳に……!?」
「期待してますよね。これから結婚後初めての夜なので」
「べ、別に。いつも通りじゃない」
後ろから耳に息を吹きかけられ情けない声がでてしまった。それと共に心臓がドクンと跳ね上がる。けれど、ここで彼に屈したら、結婚式が終わったとはいえさすがに……と、私は前を向いて歩くスピードを早める。
結婚後初めての夜。つまりは初夜。
これだけ身体を重ねても、その響というか、色気のある言葉にドキドキしないわけではなく、初心に戻って彼と一夜を、と想像するだけで顔が赤くなる。何も変わらないはずなのに、意識すればするほど、ファルクスの顔が見えない。完全にペースに飲まれている、と感じつつも、流されてしまいたいという私もいた。
「初夜ですよ。スティーリア様? 俺、いつも以上に興奮して――」
「あ! そ、そうだわ。私、お風呂に入るから!」
「さっきはいったばかりじゃないですか。誤魔化し方が下手ですよ。スティーリア様」
「きゃあっ!?」
彼の言葉に過剰反応を示したがために墓穴を作った気がする――そう思ったときには時すでに遅く、私の体を抱き止めたファルクスにより寝室へ運ばれていくのだった。
優しく、腫れ物を扱うようにベッドに下ろしたファルクスは、プチッと一番上のボタンを外し、首筋にキスを落としながら私を押し倒してくる。その感覚に背筋がゾクゾクとして、目がとろんとなりながらファルクスを見つめてしまう。
「ふっ……はっぁ……」
「もうそんな顔してるんですか? まだキスしかしていないのに。やっぱり期待してたんですよね」
そう口にしながらも、首筋から鎖骨へとキスを繰り返す彼を止められないでいる私。彼を止めることができる人なんてこの屋敷にいるのだろうかというほどの駄犬ぷりなのだが、これは躾に失敗した私の落ち度だろう。彼は、『待て』のできる犬でないことを私は知っているから。
ちゅっちゅっと、キスの雨を降らせ、これでもかというくらい、彼は私の身体に自分のものだと痕を残していく。これだから、肌の露出したドレスは着れないというのに、彼が贈ってくるドレスはどれも露出のあるものばかり。多分、わざとなんだろうが、いい趣味をしていると。
「ファル、ダメ、待って」
「なんで?」
「……そんなに、一気に求められたら」
「求められたら?」
「……ファルで、一杯に、なっちゃうから……っ、ひゃあ!?」
「なんで、そんなに可愛いこと言うんですか」
彼は私を拘束するように抱きしめると、ベッドに縫い付けるように押しつけてくる。その手がいやらしい手つきで私の身体を撫で回してきたので、思わず腰を引いてしまうが、彼の指が私の胸を服の上からふにふにと揉みしだいてきたものだから、私はされるがままに彼に身体を委ねていた。
彼の指は執拗に私の胸の形を確かめるように、そして弄ぶかのようにまさぐっていくものだから私は顔を真っ赤にさせるしかできなかった。
最近はゆっくりと胸をいじられることはほとんどなかったため、くすぐったいような、焦れったいような感覚におそわれる。
「今日は、優しくしようって思ったのに……初夜だから……でもスティーリアが」
「また、私のせいにするの?」
「……っ」
「『待て』ができない、駄犬の言い訳よ?」
「すみません……」
「フッ、嫌いじゃないわ。大丈夫よ、ちょっと意地悪しただけ」
胸の谷間に顔を埋めながら、じっと私を見てきたファルクスは、まるで耳が垂れ下がってしゅんとしている子犬のようだった。がっついたら、嫌われると、彼の中で一応の意識はあるようで、彼は、私に許しを乞うていた。
別に怒っているわけではないし、ファルクスなりの愛の伝え方だと分かっているからこそ、こんなことを言うのだ。私は、彼の柔らかい髪を撫でながら、優しく言葉をかける。
「そんな可愛い顔しないで」
「か、可愛いですか……? そんなスティーリア様の方が」
「スティーリア、でしょ? ファル。優しくしてくれるのも嬉しいけど、貴方の好きなようにしなさい。私は、その……さっき、は、あんなこといったけれど、求められる嬉しいから。貴方に……」
「……っ」
「んんっ!」
私がそう言い終える前に、谷間に顔を埋めていた彼は、ピンと主張した突起を抓み、もう片方は口に含んで、舌で転がし始めた。いきなりのことで、身体がビクンと跳ね上がり、また下腹部がきゅんとしてくる。
「ふあっ……あ、んんっ」
「好きですよ。スティーリア様。気持ちいいですか?」
「う、んっ、きもちい、いっあ! ふぁっ!?」
身体をよじらせながら快感から逃げようとする私を逃がさないとばかりに押さえつけてくるファルクスに胸の飾りを執拗に嬲られていく。思わず下唇を噛んでいると、咎めるように突起を噛まれてしまい甘い声が漏れてしまった。一瞬痛みが走ったのにもかかわらずすぐにジンジンとした快感に変換されていって、下が濡れていくのが分かった。
ふとももの辺りがくすぐったいというか、なんだかむず痒い感じがすると思ったらファルクスの手が私の脚の付け根を撫で回していた。それだけなのに私の中からトロトロと愛液が流れていき、はしたないとは思うが彼の身体を挟むように内腿に力が入る。
けれど、そんなことを気にもしない彼はその手をスルリと下へ這わせていってしまった。自分でも分かるくらいにぐしょっと濡れた恥部を慰めるようにファルクスは何度か割れ目をなぞった後、ゆっくりとその指を中に入れた。
「いいんですね? 俺の好きにしても」
「え、ええ。それが、私の……っ、あぁっ!」
「すごい、もうトロトロだ……」
中を掻き乱した指をスッと抜くと、彼の指は私の愛液で濡れており糸を引いていた。その指をべろりとなめると、ファルクスは妖美に「甘い」なんていいながら私をまた刺激してくる。
「あ、はっぁ……ンっ! あ、はぁ」
「……スティーリア様。声、抑えないで」
「で、でも……」
「いいから……お願いです」
中の指が増えていき、バラバラと私の中を刺激していく。気持ち良さに腰が浮いてしまうが彼は逃がさないとばかりに、片腕でガッチリとホールドしてきたため私は喘ぐことしかできない。しばらくその快感に耐えていると徐々に恥ずかしさよりも気持ちよさの方が勝り、いつも以上に声が漏れる。もう、恥ずかしいことなんてなにも何もないんだから、聞かせてあげようと思った。きっと、彼はそれでも受け入れてくれるから。
「はぁ、あ……っ、んんっ、ファル! ファルぅううっ!」
「可愛い、可愛いです。スティーリア。スティーリアに求められて、俺、もう……」
「いい、から……求めてあげる、求めてるから、欲しいの、早く」
「はっ、ほんと、どっちが『待て』できないんだか」
ファルクスはそう口にすると、自身のベルトに手をかけズボンを下ろしていく。ぶるんっと勢いよく飛び出した彼自身は腹にくっついてしまうくらいに反り返り、てらてらと光っていた。何度見ても慣れないし、興奮してしまうほどグロテスクなそれはビクビクとしていて私の中に入りたがっているのがすぐ分かるほどだった。その先端からはとろとろとした蜜が漏れていてとても卑猥な見た目をしているのだが、それと同時に逞しくもあり美しくもあった。
「スティーリア、そんな目で見ないでください」
「っ!」
「可愛すぎて、腹を突き破ってしまいそう。抱き潰します」
「……ツ!?」
腰を捕まれたかと思えば、そそり立った自身を私の割れ目に擦り付けてきたので、またとろりと蜜が溢れ出す。何度かその感覚を楽しんだ後、ぐぐっと押し入ってきた質量のある熱い彼自身が私の中を圧迫した。何度も受け入れているはずなのに、一際大きく感じたそれは、中に入っても尚、膨張を続けているようだった。
「あぁあっ! は、はっぁ……んんぅ……」
「……っ!」
お互いに息が荒くなるのを感じるほどファルクスは気持ち良さそうにしており、汗ばんできた彼の身体を鬱陶しそうに舐め取る姿は野性的で美しかった。本能のまま私を求めている。それが何よりも嬉しく、互いに獣になって貪り会っているみたいだった。そんな、品性の欠片も感じない、欲望のまま求め合う獣の交わり。でも、そこには確かに愛があって、それが何よりも私達を刺激して、快感を与える。
そうしてる間にも奥まで入った自身を出し入れしていき、入口の浅いところで出し入れし始めたファルクスに私はもどかしくなってしまって思わず腰を揺らした。
「はっ……スティーリア、腰が揺れてますよ」
「あ、ぁんッ! だって……そんなんじゃっぁ!」
「なんですか? ああ、もっと奥まで欲しい?」
「いって……ああっ!?」
「欲しがってる。スティーリア、分かりますよね? 俺の事求めて、奥へ奥へと手招きしてる。ははっ、ほんと、どこまでも俺を堕とす気だ」
ずるりと引き抜かれたと思ったそれはいきなり最奥まで一気に突き入れられて子宮の入口を突かれてしまう。ゴリゴリと音が鳴ってしまうのではというくらいに私の一番弱いところを何度も責め上げられ、同時に胸の突起を食まれてしまう。
「ひゃあああっ!」
「はっ……スティーリア、好きっです」
「ああっ! んあっ、わた、しもお!」
パンパンと肌がぶつかり合う音とぐちゅりと体液が混ざり合う音が寝室に響く。その音さえも私の快感を刺激して頭がクラクラとした。普段感情を表に出さない彼がこんなにも私を必死に求めてくれていて嬉しく思う反面、これほどに彼を求めさせるのは私だけであって、私が求めるのも彼だけだと、それだけで達してしまいそうになる。
私だけの格好良くて、可愛い、そんな駄犬――私の夫の、ファルクス。
私だけに乱れて、発情して、求めて、貪って。一緒私をあげるから、離れていかないで。
「愛してる、愛してるっ、ファル!」
「素直……っ、俺もです。俺にはスティーリアだけ、スティーリアだけいれば、俺はっ……クッ」
「はぁあああっ! 奥、ああっ!」
「う……スティーリアっ」
最奥に叩きつけるような飛沫を感じて身体が痙攣した。彼の子種をしっかりと自分の奥へと浸透させるように何度か出し入れした後ゆっくりと自身を抜くとドロッとそこから白い液が溢れ出した。快感の余韻に浸るように胸を上下させて呼吸を整えていると不意に私の顔を両手で掴んできたファルクスは触れるだけのキスをした後にまだ収まらないのか熱を持った瞳で私を見てきた。私もそうだが彼は精力が強すぎる気がする。まだまだいけるよな? そんな、獣の瞳で私を見る。
「ふふっ……そんなめをしなくても、あげるから……ね? 今夜は初夜でしょ?」
「……っ、スティーリア……俺」
「いいのよ。もっと求めて」
「……抱き潰します。宣言通りに……寝かせませんから」
そういって、ファルクスは私に優しく口づけをしたかと思えば、打って変わって激しく私の身体を再度揺さぶり始めた。
目が覚めたのは、頭の上に太陽が昇った頃で、その日はベッドから動けず、甲斐甲斐しく介抱してくれるファルクスに甘えながら一日を過ごした。
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