上 下
97 / 128
第3部1章

09 こんな顔して◇

しおりを挟む


 荒い息、ぶつかり合う熱い視線。私たちの間にできる銀色の糸はプツンと切れては、またつながって。何度も何度も角度を変えて、キスをする。口の端からよだれが垂れ、それすらももったいないと、彼はその分厚く長い舌で舐めとって、再び私の唇を割って中に侵入する。熱い彼の舌は私の構内を蹂躙し、歯列をなぞり、上あごをくすぐって、私を快楽に叩き落していく。


「ふっ、ぅ……んんっ」
「ロルベーア……」


 彼はキスの合間に私の名を呼び、私がそれに答えようと口を開けばさらに深く口づけられてしまう。一度離れた手は次はネグリジェの中に入り込んできて、胸を触り始めた。最近、殿下に触られるようになってからは、彼の大きな手でも掴むのがやっとなほど育ってしまったようで、殿下はくすりと笑う。自分が育てたのだと満足げに笑う彼が憎たらしい。持っていたドレスがきつくなったのは殿下のせいだと言えば、彼は私に何着ものドレスを送ってくれた。
 押し上げては上下に揉みしだき、時折その頂点を掠めてはピリッとした刺激が身体の中を駆け巡る。それが気持ちよくて、もっと触ってほしくて、でもキスもやめてほしくなくて。好き、好き、と彼を求める獣になっていた。何度もした行為なのに、毎回新しい発見があるようで、飽きないし、毎回違う快楽を体に叩き込まれる。殿下の言う、殿下なしでは生きていけない身体になってしまったのだ。


(相性……よかったって、はじめに、言われたものね)


 もう一年半前の事――まだ出会ってばかりの時に、彼は体の相性が大事だと言って無理やりとも取れる形で私を抱いた。初めてだったのに、気持ちよくて、頭が真っ白になったのを覚えている。身体の相性も最高で、愛し合っていて、こんなに幸せなことはないだろう。


「アインっ……」
「はあ、本当に、ロルベーアの身体はいつ見てもきれいだ」
「んあっ、ま、見えるところには、つけないでくださいっ」
「いいだろ? 牽制の意味も込めて」
「いっ……」


 ちゅぅっ、と吸われれば、白い肌に赤い花が咲く。殿下の印は、いくつあるだろうか。もう数えることをやめてしまったが、その数は日に日に増えている気がする。消えないうちに何度も上書きされて。この間なんて、噛まれて歯形まで出来てしまった。うなじにキスをし始めたと思ったら舐めて、そのまま流されるように噛まれた。


「ロルベーア……少し離れている間も忘れないくらいに、抱いていいか?」
「ん……」
「い、嫌か?」
「……いやじゃ、ないっ、からぁ!」


 そんな変なところで不安にならなくていい。抱かなくたって、貴方を感じられる。でも、それは恥ずかしくて言えなかった。わかっているだろう、伝わっているだろうと、早くとせかすように私は腰を揺らした。すると彼は私の足を開きその間に身体を入れ込むと下着の上から割れ目をなぞり始めた。そしてそのまま下着の中に手を忍ばせると、直接そこに触れてくる。


「あっ、やああっ!」
「熱いな……それに、ぐちゃぐちゃだ。期待してたな?」 


 割れ目からはすでに蜜が流れており、そこに指を差し込みなぞれば水音がぐちゅりと響く。何度聞いても慣れないその音は、自分が殿下を求めて溢れたもので、言わなくても伝わってしまう、それは伝わってほしくない、恥ずかしいからと足を閉じようとする。
 ぐちゅ、くちゅ、とその音に顔を真っ赤にした私に殿下は意地悪く笑い、その指を私の前で舐めとると、甘いな、とつぶやいた。


「もっと、濡れてきたな」
「んあっ!」


 また割れ目をなぞり始めると、今度はその上にある小さな突起に触れ始める。そこを触られるたびに私は背を反らせて、どうにか快楽から逃れようとするが殿下はそれが気に食わないのか少し不機嫌そうな顔をして私の太ももをつかむと足を開かせ動けなくしてくる。するとさっきよりも感覚が研ぎ澄まされてしまい、ますます彼に与えられる快楽にドロドロに溶かされてしまった。


(ばかになりそう)


 すでに頭など溶けてしまっているのに、少し残った羞恥心が声を抑えようとする。


「なあ、ロルベーア」
「な、なんですか、アイン……」
「お前は、俺に抱かれているときの顔、見たことあるか?」
「あ、あるわけないじゃないですか!? そんな、顔、自分で、見えるわけ……」
「だな、じゃあ、今日は特別に見せてやる。俺だけが見ている絶景を」


と、殿下は指を引き抜いて、自身のを取り出すと、はあ……と熱っぽいと息を吐き、私の秘部にあて、数度その先端で割れ目から垂れる蜜をもてあそび、からめとると、私の腰を少し持ち上げた。そして自分の欲望を割れ目にあてると、グイっと私の中に入ってくる。


「ああっ! き、きたぁっ!」
「ああ……いい締め付けだ」


 ぐっ、と腰を推し進め、奥まで到達した肉棒は中でびくっびくっと痙攣しているのがわかる。それがまた刺激となり私はさらに蜜を垂らしてしまうが、殿下はそれを気にせずに腰を動かし始めた。
 ぐちゅ、ずちゅっと水音と肌がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。その音すらも快楽へと変わっていき、口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れる。そして、もう少しで達してしまう、と言ったときに、殿下は私の身体を持ち上げた。


「へ、え、っ」
「見せてやると言っただろ? ロルベーアの蕩け切った顔を。俺に抱かれているときの顔を」
「い、いいです、っ、そんなあっ、えんりょして、おきまぅっ」
「遠慮するな。誰にも見せたくない、そんな顔をしてる」
「じゃあ、私もいい、のでえぇえっ」


 殿下は、私の中に入ったまま立ち上がり窓の方へと歩いていく。ゆさゆさと揺さぶられ、その微弱な刺激すらも快楽と化してしまう。


「しっかり掴まっていろ。落ちるぞ?」
「お、落とさないでください……あぁっ、あっ、でも、こんなっ」
「ほんと、ロルベーアは快楽に素直だな」


 チュッと、私の額にキスを落としながら、窓の目の前まで来ると、月明かりで照らされ、冷たいガラス窓がまるで鏡のように私たちの姿を映し出す。筋肉質な殿下の身体に目を奪われたが、次に、自分に突き刺さっている殿下のアレに目が行ってしまい、思わず顔をそらしてしまう。


「やあっ」
「ハハッ、恥ずかしがり屋だな。ロルベーアは」
「ひ、卑猥です」
「いつも、お前の中に入っているだろ? 今だって、お前は食いちぎらんとばかりに俺のを食って離さない」
「そ、そんなわけっ、あああっ」


 ズンッ、と深く突き刺されて、思わず大きな声が出てしまう。そして彼はそのまま窓ガラスに身体を密着させると、私の足を広げてさらに深くまで入り込んでくる。


「ほら、よく見ろ。ロルベーア」
「や、いやっ! あ、ああっ!」 


 見たくないのに、私は見てしまった。殿下が私の中に入ってくるたびにその形をくっきりと浮かび上がらせていく自分の秘部と、そこからあふれ出る蜜の量。そしてそれをおいしそうに頬張る自分のはしたない姿。


(こんな、顔で……いつも、殿下に……)


 ぐっちゃぐちゃで、馬鹿っぽい顔。紅潮した顔に、流れる涙、口から垂れる涎。こんなの見えた物じゃない、みっともない、と思うのに、殿下はその顔が素敵だ、可愛い、とキスの雨を降らせ、嬉しそうにはにかむのだ。
 恥ずかしい、恥ずかしくて穴があったら入りたい。
 でも、同時に見えた、殿下のどうしようもなく私を求める雄の顔に、私しかいらないって、私を頂戴っていうそんな顔に魅せられて、目を離すことが出来なかった。その顔はいつも見ているのに、なんだか新鮮に思えてきてしまうのだ。
 いつも、そんな必死で、私がどうしようもなくみっともない顔になっているのと一緒で、殿下も私だけを求めてみっともなく腰を振って。


「アインっ、すき、すきっ」
「どうした、ロルベーア。いきなり」
「貴方の、顔、凄く、素敵っ、だって、おもったからっ」
「今更か? 惚れ直したと」
「いつも、惚れてる。何度だって、惚れ直すっ」


 キュウゥ、と知らぬ間に中を締めてしまい、殿下の苦しそうなくっ、とした声が上から洩れる。


「ロルベーア」
「んんっ、はっ、はい」
「俺も好きだ。いつも惚れている。ロルベーアは最高だ」


 そういうと彼はガラス窓に私の身体を押し付けると激しく腰を打ち付けた。水音がさらに激しさを増し、肌同士がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。その恥ずかしい音も、お互いの声も、聞きたくなくても聞こえてくるのだから耳に毒でしかないがそれすらも興奮材料になっているのだ。もうイキたいのに、まだこの快楽に溺れていたい、そんな気持ち。


「ああぁっ! だめっ! イクッ」
「ああ……ロルベーアっ!」


 ラストスパートと言わんばかりに一層激しくなる動きに私の限界も近くなり、彼の手は私の胸を揉みしだき先端をキュッとつまんだりこねくりまわしたりとやりたい放題である。その間も絶え間なく打ち付けられる腰にはもう頭の中は真っ白で何も考えられない。ただこの快楽に身を任せるしかできなかった。そして、それが最高潮に達した時、私は彼のものをキュウッと締め付けて達した。その刺激で彼も中で果ててしまい熱い液体が奥のほうにまで入ってくるのがわかる。


「っ……まだ出てる……」


 ドクッドクッと脈打ちながら流し込まれるそれはかなり量が多く、そして一向に止まる気配がない。だんだんと息が苦しくなり意識が朦朧としてくる中、それでも殿下は出し切るようにゆるゆると腰を動かし最後の一滴までも私の中に注ぎ込んだ。


「あぅ……」


 もう限界だと訴えるように彼にしがみつき、そしてそのまま意識を失ってしまった。
 ただ、意識を失う前に「まだ足りない」といった殿下の声を聞き逃すことはできず、その数分後が、数時間後かに殿下に快楽を叩きこまれて起きるのはまた別の話。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

処理中です...