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第3部1章
09 こんな顔して◇
しおりを挟む荒い息、ぶつかり合う熱い視線。私たちの間にできる銀色の糸はプツンと切れては、またつながって。何度も何度も角度を変えて、キスをする。口の端からよだれが垂れ、それすらももったいないと、彼はその分厚く長い舌で舐めとって、再び私の唇を割って中に侵入する。熱い彼の舌は私の構内を蹂躙し、歯列をなぞり、上あごをくすぐって、私を快楽に叩き落していく。
「ふっ、ぅ……んんっ」
「ロルベーア……」
彼はキスの合間に私の名を呼び、私がそれに答えようと口を開けばさらに深く口づけられてしまう。一度離れた手は次はネグリジェの中に入り込んできて、胸を触り始めた。最近、殿下に触られるようになってからは、彼の大きな手でも掴むのがやっとなほど育ってしまったようで、殿下はくすりと笑う。自分が育てたのだと満足げに笑う彼が憎たらしい。持っていたドレスがきつくなったのは殿下のせいだと言えば、彼は私に何着ものドレスを送ってくれた。
押し上げては上下に揉みしだき、時折その頂点を掠めてはピリッとした刺激が身体の中を駆け巡る。それが気持ちよくて、もっと触ってほしくて、でもキスもやめてほしくなくて。好き、好き、と彼を求める獣になっていた。何度もした行為なのに、毎回新しい発見があるようで、飽きないし、毎回違う快楽を体に叩き込まれる。殿下の言う、殿下なしでは生きていけない身体になってしまったのだ。
(相性……よかったって、はじめに、言われたものね)
もう一年半前の事――まだ出会ってばかりの時に、彼は体の相性が大事だと言って無理やりとも取れる形で私を抱いた。初めてだったのに、気持ちよくて、頭が真っ白になったのを覚えている。身体の相性も最高で、愛し合っていて、こんなに幸せなことはないだろう。
「アインっ……」
「はあ、本当に、ロルベーアの身体はいつ見てもきれいだ」
「んあっ、ま、見えるところには、つけないでくださいっ」
「いいだろ? 牽制の意味も込めて」
「いっ……」
ちゅぅっ、と吸われれば、白い肌に赤い花が咲く。殿下の印は、いくつあるだろうか。もう数えることをやめてしまったが、その数は日に日に増えている気がする。消えないうちに何度も上書きされて。この間なんて、噛まれて歯形まで出来てしまった。うなじにキスをし始めたと思ったら舐めて、そのまま流されるように噛まれた。
「ロルベーア……少し離れている間も忘れないくらいに、抱いていいか?」
「ん……」
「い、嫌か?」
「……いやじゃ、ないっ、からぁ!」
そんな変なところで不安にならなくていい。抱かなくたって、貴方を感じられる。でも、それは恥ずかしくて言えなかった。わかっているだろう、伝わっているだろうと、早くとせかすように私は腰を揺らした。すると彼は私の足を開きその間に身体を入れ込むと下着の上から割れ目をなぞり始めた。そしてそのまま下着の中に手を忍ばせると、直接そこに触れてくる。
「あっ、やああっ!」
「熱いな……それに、ぐちゃぐちゃだ。期待してたな?」
割れ目からはすでに蜜が流れており、そこに指を差し込みなぞれば水音がぐちゅりと響く。何度聞いても慣れないその音は、自分が殿下を求めて溢れたもので、言わなくても伝わってしまう、それは伝わってほしくない、恥ずかしいからと足を閉じようとする。
ぐちゅ、くちゅ、とその音に顔を真っ赤にした私に殿下は意地悪く笑い、その指を私の前で舐めとると、甘いな、とつぶやいた。
「もっと、濡れてきたな」
「んあっ!」
また割れ目をなぞり始めると、今度はその上にある小さな突起に触れ始める。そこを触られるたびに私は背を反らせて、どうにか快楽から逃れようとするが殿下はそれが気に食わないのか少し不機嫌そうな顔をして私の太ももをつかむと足を開かせ動けなくしてくる。するとさっきよりも感覚が研ぎ澄まされてしまい、ますます彼に与えられる快楽にドロドロに溶かされてしまった。
(ばかになりそう)
すでに頭など溶けてしまっているのに、少し残った羞恥心が声を抑えようとする。
「なあ、ロルベーア」
「な、なんですか、アイン……」
「お前は、俺に抱かれているときの顔、見たことあるか?」
「あ、あるわけないじゃないですか!? そんな、顔、自分で、見えるわけ……」
「だな、じゃあ、今日は特別に見せてやる。俺だけが見ている絶景を」
と、殿下は指を引き抜いて、自身のを取り出すと、はあ……と熱っぽいと息を吐き、私の秘部にあて、数度その先端で割れ目から垂れる蜜をもてあそび、からめとると、私の腰を少し持ち上げた。そして自分の欲望を割れ目にあてると、グイっと私の中に入ってくる。
「ああっ! き、きたぁっ!」
「ああ……いい締め付けだ」
ぐっ、と腰を推し進め、奥まで到達した肉棒は中でびくっびくっと痙攣しているのがわかる。それがまた刺激となり私はさらに蜜を垂らしてしまうが、殿下はそれを気にせずに腰を動かし始めた。
ぐちゅ、ずちゅっと水音と肌がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。その音すらも快楽へと変わっていき、口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れる。そして、もう少しで達してしまう、と言ったときに、殿下は私の身体を持ち上げた。
「へ、え、っ」
「見せてやると言っただろ? ロルベーアの蕩け切った顔を。俺に抱かれているときの顔を」
「い、いいです、っ、そんなあっ、えんりょして、おきまぅっ」
「遠慮するな。誰にも見せたくない、そんな顔をしてる」
「じゃあ、私もいい、のでえぇえっ」
殿下は、私の中に入ったまま立ち上がり窓の方へと歩いていく。ゆさゆさと揺さぶられ、その微弱な刺激すらも快楽と化してしまう。
「しっかり掴まっていろ。落ちるぞ?」
「お、落とさないでください……あぁっ、あっ、でも、こんなっ」
「ほんと、ロルベーアは快楽に素直だな」
チュッと、私の額にキスを落としながら、窓の目の前まで来ると、月明かりで照らされ、冷たいガラス窓がまるで鏡のように私たちの姿を映し出す。筋肉質な殿下の身体に目を奪われたが、次に、自分に突き刺さっている殿下のアレに目が行ってしまい、思わず顔をそらしてしまう。
「やあっ」
「ハハッ、恥ずかしがり屋だな。ロルベーアは」
「ひ、卑猥です」
「いつも、お前の中に入っているだろ? 今だって、お前は食いちぎらんとばかりに俺のを食って離さない」
「そ、そんなわけっ、あああっ」
ズンッ、と深く突き刺されて、思わず大きな声が出てしまう。そして彼はそのまま窓ガラスに身体を密着させると、私の足を広げてさらに深くまで入り込んでくる。
「ほら、よく見ろ。ロルベーア」
「や、いやっ! あ、ああっ!」
見たくないのに、私は見てしまった。殿下が私の中に入ってくるたびにその形をくっきりと浮かび上がらせていく自分の秘部と、そこからあふれ出る蜜の量。そしてそれをおいしそうに頬張る自分のはしたない姿。
(こんな、顔で……いつも、殿下に……)
ぐっちゃぐちゃで、馬鹿っぽい顔。紅潮した顔に、流れる涙、口から垂れる涎。こんなの見えた物じゃない、みっともない、と思うのに、殿下はその顔が素敵だ、可愛い、とキスの雨を降らせ、嬉しそうにはにかむのだ。
恥ずかしい、恥ずかしくて穴があったら入りたい。
でも、同時に見えた、殿下のどうしようもなく私を求める雄の顔に、私しかいらないって、私を頂戴っていうそんな顔に魅せられて、目を離すことが出来なかった。その顔はいつも見ているのに、なんだか新鮮に思えてきてしまうのだ。
いつも、そんな必死で、私がどうしようもなくみっともない顔になっているのと一緒で、殿下も私だけを求めてみっともなく腰を振って。
「アインっ、すき、すきっ」
「どうした、ロルベーア。いきなり」
「貴方の、顔、凄く、素敵っ、だって、おもったからっ」
「今更か? 惚れ直したと」
「いつも、惚れてる。何度だって、惚れ直すっ」
キュウゥ、と知らぬ間に中を締めてしまい、殿下の苦しそうなくっ、とした声が上から洩れる。
「ロルベーア」
「んんっ、はっ、はい」
「俺も好きだ。いつも惚れている。ロルベーアは最高だ」
そういうと彼はガラス窓に私の身体を押し付けると激しく腰を打ち付けた。水音がさらに激しさを増し、肌同士がぶつかり合う音が部屋中に響き渡る。その恥ずかしい音も、お互いの声も、聞きたくなくても聞こえてくるのだから耳に毒でしかないがそれすらも興奮材料になっているのだ。もうイキたいのに、まだこの快楽に溺れていたい、そんな気持ち。
「ああぁっ! だめっ! イクッ」
「ああ……ロルベーアっ!」
ラストスパートと言わんばかりに一層激しくなる動きに私の限界も近くなり、彼の手は私の胸を揉みしだき先端をキュッとつまんだりこねくりまわしたりとやりたい放題である。その間も絶え間なく打ち付けられる腰にはもう頭の中は真っ白で何も考えられない。ただこの快楽に身を任せるしかできなかった。そして、それが最高潮に達した時、私は彼のものをキュウッと締め付けて達した。その刺激で彼も中で果ててしまい熱い液体が奥のほうにまで入ってくるのがわかる。
「っ……まだ出てる……」
ドクッドクッと脈打ちながら流し込まれるそれはかなり量が多く、そして一向に止まる気配がない。だんだんと息が苦しくなり意識が朦朧としてくる中、それでも殿下は出し切るようにゆるゆると腰を動かし最後の一滴までも私の中に注ぎ込んだ。
「あぅ……」
もう限界だと訴えるように彼にしがみつき、そしてそのまま意識を失ってしまった。
ただ、意識を失う前に「まだ足りない」といった殿下の声を聞き逃すことはできず、その数分後が、数時間後かに殿下に快楽を叩きこまれて起きるのはまた別の話。
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