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第2部1章
05 覚えていますか?
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「公女から、呼び出すとは珍しいな。公爵邸に来てくれと、何かあったのではないかと思って、飛んできたが、その様子からするに……何もないみたいだな。安心した」
「……執務は」
「愛しい番に呼び出されては、後回しにするほかないだろう。それに、公女から呼び出したんだ。何か理由があったんだろ? 直接話したい理由が」
久しぶりに私に会えたことで、上機嫌になっているのか、いつも以上に口が回っていた気がした。口角も上がっていて、会えてうれしい、といったオーラが隠しきれていない。かつて、戦争の英雄とか、血濡れの皇太子とか、もうさんざんに言われていた暴君の姿はそこにはなく、ただ一人の愛しい人にい全てをささげている青年の姿がそこにあるだけだった。
公爵邸の青薔薇が咲き乱れる、庭園。気持ちがブルーになるほど青い、青い薔薇は、私の心をもブルーにさせた。香りはいいのに、悲しみに満ちたその色が今は少し鬱陶しく思えた。
そんな青に、不釣り合いなほど真紅の彼は、私に触れようとはせず、一歩後ろを歩いていた。律儀に『接触禁止』を守っているところに好感を持てたが、私の心の中では、そんなこと今はどうでもよくて、晴れない気持ちのまま、足を止め、振り返る。
「もしかしなくとも、『接触禁止令』を解く気になったか? 公女」
「――殿下」
「……」
「殿下は、これまで殺した番のことを覚えていますか」
思いがけない質問だったのか、殿下もぴたりと足を止め、首を少し傾けると、夕焼けの瞳が細められる。
「ハッ、何を言い出すかと思えば。殺した番の事? それをしって何になる、公女」
「答えてください」
「……この間、ドロップ伯爵令嬢のもとに行ったと耳にしたが、そこで何かあったのか?」
どこでその情報を手に入れているのか聞きたいし、歴としたストーカー行為をサラッと暴露した、番であり婚約者に私は眉を顰める。ただ、殿下がすべて忘れているわけではない、ちょっとした動揺が見えたところを見ると、これまでの番について何か思うところはあるらしい。
私も、図星をつかれてしまい、言い返すことが出来なかった。
「二人目の番、だったか……ドロップ伯爵令嬢は。俺を初めて殺そうとした番だったな」
「……殿下は、覚えているんですか」
「だから、公女。そんなことを聞いて何になる。まさか、俺が公女を殺すとでも言いたいのか?」
「…………いえ、そういうわけではなくて」
鋭い眼光で睨まれてしまえば何も言えなくなった。けれど、ここであきらめるわけにもいかず、はっきりしたいことがあった。
私が殿下に殺される、殺されないという問題ではなく、殿下が人として――これまでの番のことをどう思っているか知りたかったのだ。私だけが、特別である、ということは嬉しい。それでも、罪がないわけではないとはいえ、か弱い令嬢を四人も殺してきたのは紛れもない事実であったから。
「じゃあ、何だ? 何のために俺をここに呼んだ? ドロップ伯爵令嬢に何か言われ、そそのかされ、疑心暗鬼の心でも植え付けられたか?」
「……殿下、怒ってるんですか?」
「こんなことで、怒るわけないだろう」
「それが、怒っているように見えるんですが」
私がそういうと、チッ、と殿下は舌打ちを鳴らし、いらだったように真紅の髪を搔きむしった。
殿下にとって掘り返されたくない過去なのか、それとも、また別の理由からか。何にしろ、彼にとって、思い出したくないものであることには間違いなかった。
「それで、何が聞きたいんだ。公女」
「殿下が……『番殺し』と呼ばれているのは知っていますか?」
「ああ、巷で、令嬢たちが言っているようだな。次は、自分が生贄になると。まるで俺は、化け物扱いだ。公女と出会うまでは――の話だがな。それで、そんな『番殺し』の俺の、過去の番について知ってどうする」
「……殿下が、その番についてどう思っていたのか知りたいです」
「知って、どうする?」
「どうもしません。けれど、殺した相手のことを覚えているのか、愛されようと努力した人間のことを過去の人間だと忘れていないか、それが気になったんです」
怖くて顔があげられなくなった。視線を下に落とし、手を前で組む。今、殿下がどんな顔をして、何を考えているか、さっぱりわからなかった。こんなにも近くに番がいて、心が通じ合っているはずなのに、私は、殿下の心が全く分からなかった。
殿下が、『番殺し』と呼ばれていることを知っていて、自覚していて。それでも、平然としていられるのは、これまでに多く人間を戦場で殺してきたからだろう。たった四人――それを覚えているかすら怪しい。私も、その一人になるところだった運命を回避しただけにすぎず、物語通りに進んでいれば、きっと忘れられていただろう。悪女だった誰か、として記憶のどこかで漂う程度に。
「――はじめは、侯爵令嬢、伯爵令嬢、子爵令嬢、男爵令嬢――どんどん、その階級は下がっていったな。そりゃ、そうだろうな。一族の繁栄に欠かせない令嬢を、呪われた皇太子のもとによこすことは、その家にとって大きなデメリットとなる。呪いを解ければ、万々歳。解けなければ死が待っているんだからな」
「覚えているんですか」
「一応な。顔は覚えていない。その令嬢の家の階級と、家門くらいか」
「……」
「それで? 公女は、俺がその番をどう殺したか知りたいのか?」
「……私は」
覚えていないわけではない――殿下の口から、それが聞けて、私はもやもやとした気持ちが少し晴れた気がした。けれど、シュニーや、他の家からしてみれば、それだけしか覚えていないということになるし、人間を数で見ている殿下のことを心底嫌悪するだろう。
殿下もまた被害者であり、接触もなかった令嬢と番契約をさせられた哀れな男なのだ。それは、させられた令嬢側の家も忘れてはいけないと思う。
「こんな話、公女には聞かせたくないな。また、怖がられるがおちだ」
「殿下は、その……」
「何だ、公女。公女らしくないな。聞きたいことがあれば聞けばいい。俺たちは、そういう関係だろ?」
と、殿下は、私が少しでも話しやすいようにいつもは無理にでも作らない笑顔を取り繕って、安心させようとしてきた。その気遣いに、私はずきんと心が痛んだ。
(殿下は……私を大事に思ってくれている。なのに、こうやって疑うことも、『番殺し』だということも……私は、殿下のことを信用できていないの?)
初めて会った令嬢の言葉に揺れ動かされ、これまで殺した番のことを何とも思っていないような冷たい人だと、一瞬でも思ってしまった私は、彼を信用しきれていないのではないかと。私が一番に、彼を信用して、愛してあげなければならない存在なのに、私が疑ってどうするのかと。
自分が情けなくて、やっぱり顔を上げることが出来なかった。
そして、情けないと思う反面、もう一つ我儘すぎる思いがふつふつと湧き上がってきて、恥ずかしいことこの上ない。
「公女?」
「殿下は、これまでだ、抱いた女性のことを覚えていますか。番のこと、抱いた女性の事……」
「公女、それはつまり――嫉妬しているということか?」
夕焼けの瞳が見開かれ、吹き付けた風によって青い花弁が舞う。
喜びと、困惑に満ちたその表情を、ふと顔を上げた瞬間に見てしまい、顔が赤くなってしまった。見られたくないと、顔をそらそうとすれば、顎を掴まれ、目がそらせなくなる。
「で、殿下。まだ『接触禁止』といてませんっ」
「珍しく、公女が嫉妬してくれたからな。つい、感極まってな」
「……嫉妬じゃありません」
「一番目の女になれなくて、いやだったか?」
「だから、そういう話では!」
「確かに、番とは寝た。身体の相性も必要だからな。だが、公女以上に興奮し、気持ちがよかった女はいない」
「……っ」
「これでいいか?」
「よ、よくないです。私が聞きたいのはそうではなくて……」
一番目の女とか、他の番と寝たとか。聞きたくない話も彼の口から飛び出した。
その時、一番目じゃなくて、他の女性と寝たとか、その話を聞いて胸の奥がツキンと傷んだ自分を浅ましく思う。自分が一番じゃないと、ってそう思っている自分がいることに、少し腹立たしさも覚える。殿下とあった時、最初に確認したのが、身体の相性だったから、他の番を抱いたことがあるのは容易に想像がついたわけで、それに傷つく理由など、資格などないのに。
(私が聞きたいのはそうじゃないの。何、一人で舞い上がって傷ついているのよ)
問題は、その番のことをどれだけ覚えているかなのだ。殿下も被害者、でも加害者でもあるから……彼に罪の意識――それがどこまであるのか。あることによって、許されるわけではないが、シュニーたちの心が救われるのではないか。
どちらの肩を持っているのか分からない。でも、死んでいった四人の番たちの上に立っている現番の私が出来ることと言えばそれだけで。
責任を感じているのだろう――
「過去のことはいいだろう。今更、帰ってくるわけでもない……それは、俺が一番よくわかっている」
「殿下……」
「今は、ロルベーアを愛させてくれ。お前だけを、見つめていたい」
「……」
抱きしめられてしまえば何も言えない。
真紅の髪が頬をくすぐり、慌ててきたのか、少し汗のにおいもした。彼の匂いに包まれていくうちに、不安も、嫉妬も消え失せて、愛されているんだと満たされているんだと、安心感でいっぱいになる。
(私の事、どれだけ好きなのよ……)
愛されている怠惰。思考を放棄してしまいそうになる、その愛に、私は溺れていたかった。私だって、やっとそれを手に入れたばかりなのだから。
だから、「今後のために、互いのために、番契約を切りましょう」とは到底言い出せなかった。
「……執務は」
「愛しい番に呼び出されては、後回しにするほかないだろう。それに、公女から呼び出したんだ。何か理由があったんだろ? 直接話したい理由が」
久しぶりに私に会えたことで、上機嫌になっているのか、いつも以上に口が回っていた気がした。口角も上がっていて、会えてうれしい、といったオーラが隠しきれていない。かつて、戦争の英雄とか、血濡れの皇太子とか、もうさんざんに言われていた暴君の姿はそこにはなく、ただ一人の愛しい人にい全てをささげている青年の姿がそこにあるだけだった。
公爵邸の青薔薇が咲き乱れる、庭園。気持ちがブルーになるほど青い、青い薔薇は、私の心をもブルーにさせた。香りはいいのに、悲しみに満ちたその色が今は少し鬱陶しく思えた。
そんな青に、不釣り合いなほど真紅の彼は、私に触れようとはせず、一歩後ろを歩いていた。律儀に『接触禁止』を守っているところに好感を持てたが、私の心の中では、そんなこと今はどうでもよくて、晴れない気持ちのまま、足を止め、振り返る。
「もしかしなくとも、『接触禁止令』を解く気になったか? 公女」
「――殿下」
「……」
「殿下は、これまで殺した番のことを覚えていますか」
思いがけない質問だったのか、殿下もぴたりと足を止め、首を少し傾けると、夕焼けの瞳が細められる。
「ハッ、何を言い出すかと思えば。殺した番の事? それをしって何になる、公女」
「答えてください」
「……この間、ドロップ伯爵令嬢のもとに行ったと耳にしたが、そこで何かあったのか?」
どこでその情報を手に入れているのか聞きたいし、歴としたストーカー行為をサラッと暴露した、番であり婚約者に私は眉を顰める。ただ、殿下がすべて忘れているわけではない、ちょっとした動揺が見えたところを見ると、これまでの番について何か思うところはあるらしい。
私も、図星をつかれてしまい、言い返すことが出来なかった。
「二人目の番、だったか……ドロップ伯爵令嬢は。俺を初めて殺そうとした番だったな」
「……殿下は、覚えているんですか」
「だから、公女。そんなことを聞いて何になる。まさか、俺が公女を殺すとでも言いたいのか?」
「…………いえ、そういうわけではなくて」
鋭い眼光で睨まれてしまえば何も言えなくなった。けれど、ここであきらめるわけにもいかず、はっきりしたいことがあった。
私が殿下に殺される、殺されないという問題ではなく、殿下が人として――これまでの番のことをどう思っているか知りたかったのだ。私だけが、特別である、ということは嬉しい。それでも、罪がないわけではないとはいえ、か弱い令嬢を四人も殺してきたのは紛れもない事実であったから。
「じゃあ、何だ? 何のために俺をここに呼んだ? ドロップ伯爵令嬢に何か言われ、そそのかされ、疑心暗鬼の心でも植え付けられたか?」
「……殿下、怒ってるんですか?」
「こんなことで、怒るわけないだろう」
「それが、怒っているように見えるんですが」
私がそういうと、チッ、と殿下は舌打ちを鳴らし、いらだったように真紅の髪を搔きむしった。
殿下にとって掘り返されたくない過去なのか、それとも、また別の理由からか。何にしろ、彼にとって、思い出したくないものであることには間違いなかった。
「それで、何が聞きたいんだ。公女」
「殿下が……『番殺し』と呼ばれているのは知っていますか?」
「ああ、巷で、令嬢たちが言っているようだな。次は、自分が生贄になると。まるで俺は、化け物扱いだ。公女と出会うまでは――の話だがな。それで、そんな『番殺し』の俺の、過去の番について知ってどうする」
「……殿下が、その番についてどう思っていたのか知りたいです」
「知って、どうする?」
「どうもしません。けれど、殺した相手のことを覚えているのか、愛されようと努力した人間のことを過去の人間だと忘れていないか、それが気になったんです」
怖くて顔があげられなくなった。視線を下に落とし、手を前で組む。今、殿下がどんな顔をして、何を考えているか、さっぱりわからなかった。こんなにも近くに番がいて、心が通じ合っているはずなのに、私は、殿下の心が全く分からなかった。
殿下が、『番殺し』と呼ばれていることを知っていて、自覚していて。それでも、平然としていられるのは、これまでに多く人間を戦場で殺してきたからだろう。たった四人――それを覚えているかすら怪しい。私も、その一人になるところだった運命を回避しただけにすぎず、物語通りに進んでいれば、きっと忘れられていただろう。悪女だった誰か、として記憶のどこかで漂う程度に。
「――はじめは、侯爵令嬢、伯爵令嬢、子爵令嬢、男爵令嬢――どんどん、その階級は下がっていったな。そりゃ、そうだろうな。一族の繁栄に欠かせない令嬢を、呪われた皇太子のもとによこすことは、その家にとって大きなデメリットとなる。呪いを解ければ、万々歳。解けなければ死が待っているんだからな」
「覚えているんですか」
「一応な。顔は覚えていない。その令嬢の家の階級と、家門くらいか」
「……」
「それで? 公女は、俺がその番をどう殺したか知りたいのか?」
「……私は」
覚えていないわけではない――殿下の口から、それが聞けて、私はもやもやとした気持ちが少し晴れた気がした。けれど、シュニーや、他の家からしてみれば、それだけしか覚えていないということになるし、人間を数で見ている殿下のことを心底嫌悪するだろう。
殿下もまた被害者であり、接触もなかった令嬢と番契約をさせられた哀れな男なのだ。それは、させられた令嬢側の家も忘れてはいけないと思う。
「こんな話、公女には聞かせたくないな。また、怖がられるがおちだ」
「殿下は、その……」
「何だ、公女。公女らしくないな。聞きたいことがあれば聞けばいい。俺たちは、そういう関係だろ?」
と、殿下は、私が少しでも話しやすいようにいつもは無理にでも作らない笑顔を取り繕って、安心させようとしてきた。その気遣いに、私はずきんと心が痛んだ。
(殿下は……私を大事に思ってくれている。なのに、こうやって疑うことも、『番殺し』だということも……私は、殿下のことを信用できていないの?)
初めて会った令嬢の言葉に揺れ動かされ、これまで殺した番のことを何とも思っていないような冷たい人だと、一瞬でも思ってしまった私は、彼を信用しきれていないのではないかと。私が一番に、彼を信用して、愛してあげなければならない存在なのに、私が疑ってどうするのかと。
自分が情けなくて、やっぱり顔を上げることが出来なかった。
そして、情けないと思う反面、もう一つ我儘すぎる思いがふつふつと湧き上がってきて、恥ずかしいことこの上ない。
「公女?」
「殿下は、これまでだ、抱いた女性のことを覚えていますか。番のこと、抱いた女性の事……」
「公女、それはつまり――嫉妬しているということか?」
夕焼けの瞳が見開かれ、吹き付けた風によって青い花弁が舞う。
喜びと、困惑に満ちたその表情を、ふと顔を上げた瞬間に見てしまい、顔が赤くなってしまった。見られたくないと、顔をそらそうとすれば、顎を掴まれ、目がそらせなくなる。
「で、殿下。まだ『接触禁止』といてませんっ」
「珍しく、公女が嫉妬してくれたからな。つい、感極まってな」
「……嫉妬じゃありません」
「一番目の女になれなくて、いやだったか?」
「だから、そういう話では!」
「確かに、番とは寝た。身体の相性も必要だからな。だが、公女以上に興奮し、気持ちがよかった女はいない」
「……っ」
「これでいいか?」
「よ、よくないです。私が聞きたいのはそうではなくて……」
一番目の女とか、他の番と寝たとか。聞きたくない話も彼の口から飛び出した。
その時、一番目じゃなくて、他の女性と寝たとか、その話を聞いて胸の奥がツキンと傷んだ自分を浅ましく思う。自分が一番じゃないと、ってそう思っている自分がいることに、少し腹立たしさも覚える。殿下とあった時、最初に確認したのが、身体の相性だったから、他の番を抱いたことがあるのは容易に想像がついたわけで、それに傷つく理由など、資格などないのに。
(私が聞きたいのはそうじゃないの。何、一人で舞い上がって傷ついているのよ)
問題は、その番のことをどれだけ覚えているかなのだ。殿下も被害者、でも加害者でもあるから……彼に罪の意識――それがどこまであるのか。あることによって、許されるわけではないが、シュニーたちの心が救われるのではないか。
どちらの肩を持っているのか分からない。でも、死んでいった四人の番たちの上に立っている現番の私が出来ることと言えばそれだけで。
責任を感じているのだろう――
「過去のことはいいだろう。今更、帰ってくるわけでもない……それは、俺が一番よくわかっている」
「殿下……」
「今は、ロルベーアを愛させてくれ。お前だけを、見つめていたい」
「……」
抱きしめられてしまえば何も言えない。
真紅の髪が頬をくすぐり、慌ててきたのか、少し汗のにおいもした。彼の匂いに包まれていくうちに、不安も、嫉妬も消え失せて、愛されているんだと満たされているんだと、安心感でいっぱいになる。
(私の事、どれだけ好きなのよ……)
愛されている怠惰。思考を放棄してしまいそうになる、その愛に、私は溺れていたかった。私だって、やっとそれを手に入れたばかりなのだから。
だから、「今後のために、互いのために、番契約を切りましょう」とは到底言い出せなかった。
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