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第5章  剣の魔導士とそこにあるもの

058  剣の魔導士とそこにあるものⅡ

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 寝苦しそうに呼吸が乱れている二葉を一花は心配そうに見つめる。


 三久は急いでアイテムボックスから錬金術に必要な材料を選び、机の上に並べる。


 無水エタノールと精製水を用意し、7:3の割合で70%のアルコール消毒が出来上がる。


 エタノールは濃度が高ければ高いほど蒸発しやすいと言われている。


 ピンセットとろうそくにマッチを用意する。


 ろうそくに火を点け、ピンセットで炙りながら滅菌消毒をする。


 人の体内を消毒する時には、道具をしっかりと滅菌しておかなければならない。


 どんな細菌が付いているのか目には見えないからである。


 アルコール消毒を消毒用の綿に染みつけ、ピンセットで摘まんで慎重に二葉の怪我しているところを消毒する。


「痛っ!」


 二葉から声が漏れる。


「痛いのは生きている証拠です。生きている限り、人は痛みを感じるからなんですから我慢してください」


 三久は消毒したところを新品の布で止血し、その上に包帯を巻く。


 足や腕、頭の手当てを終えた後、落ち着きを取り戻した二葉はゆっくりと重たい体を起こして、深呼吸をする。


 自分の手当てしてもらったところを何度も視返して、ぼーっと部屋中を見渡す。


「二葉、何があったのか教えて貰えますか?」


「うん……」


 二葉は今日の出来事を一部始終話した。


 地下水道から教会に乗り込み、そして、マーロスとの激闘。裕也がどうなったのかも分からない事も――――


 裕也が渡した紙にはこう書かれてあった。





 0から一のものが生まれ、一から0のものは生まれることはない――――

 だが、0から三のものが生まれ、三から一のものが生まれる――――





 謎の暗号文と言えば話は簡単だが、彼はこの短い時間で三つ子に何を言いたいのか簡単に述べたに過ぎないのかもしれない。


 魔導士や錬金術師は同じ探究者でありながら違うものを求める探究者である。


 裕也が考えているこの言葉の意味が三つ子にとってはこの後の戦いに大きく影響するヒントになっているのかもしれない。


 三人は裕也からのメッセージを考えていた。
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