2 / 5
天才物理少女篇
001 仕組まれた陰謀 Ⅰ
しおりを挟む
五月七日は、朝から雲行きがおかしかった。
西の空からは積乱雲が迫ってきているのが見えた。
夏用の制服に着替えると鞄を持ち、外に飛び出した。
積乱雲が近づいているせいなのか、七月の初夏並みの暑さだった。
転機予報によると、日本での最高気温は沖縄での三十五度、最低気温は北海道の十二度であった。日本の最北端と最南端で、二十度以上の気温の差は、地球温暖化のせいなのだろうか。北極の氷でさえも解けていくほどの海水温度が上昇しているのは事実である。
朝の電車通学は辛い。人ごみの中で目的の駅まで待たなければならないのだ。
今の子供たちのほとんどはスマホを持ち歩いている子が多い。
個人情報のセキュリティは甘くなり、抜き取られやすい世の中だ。
電車を降りると、目の前に大きな液晶画面が設置されてあるビルがすぐ見える。改札口を抜け、駅に出ると空を見上げた。まだ、雨は降っていない。
信号を待つ間、永遠と流れるCMを見ながら、頭の中はボー、としていた。
すると、妙な画面に切り替わったのだ。
『日本でいる皆さん、こんにちは。私の名前はヘーラク・レス』
と、いきなり挨拶をしてきた。
「はぁ? 何かの新作CMか?」
隣に立っていた大学生くらいの男性が、画面に目を奪われる。
周りも次第に立ち止まり、その如何にも怪しいCMを見始めた。
『簡単に言えば、仮の名であり、ギリシャ神話の英雄の名を借りている。さて、今、この画面を見ている人たちに問おう。この世界はどんどん間違っている方向へと進んで入っていないだろうか? 本当にこの先に世界の未来なんてあり得るのだろうか』
ヘーラク・レスと名乗る人物は、話を始めた。
『今の大人たちは、悪い奴らがほとんどだ。例えば、権力のある人間はそのまま子供にも受け継がれる。そんなのただの独裁政権と同じだ。人間は、ロボットを作り、そして、今は人工知能までも完成させてしまった。便利になりすぎて、身近なものを忘れかけている。それは、極めて遺憾である』
何を言っているんだと思った。
単なるCMにしては、出来過ぎ以上にクオリティーの高い。
ざわめきが広がっていく。
『そこで私は考えた。このままでは日本、いや、世界の未来は絶対来ないと……。ならば、新たに今の若者たちや中年者に考えてもらいた。世界の未来を————』
さっぱり理解できない。
結局何を言いたいのだろうか。
『さぁ、ゲームを始めよう。日本の……世界の未来を掛けたゲームをね……』
ヘーラク・レスは言い終えると、大型の液晶画面が激しく光り、人々はその光に包まれた。
× × ×
目の前には見たことのない世界が広がっていた。
自分たちのいる縦社会の情報が毎日のように飛び交う世界とは違って、時間がゆっくりと流れているまるでRPGの世界が広がっていた。
所々に家が建っており、人がいる。
ここは街、おそらくは村だろう。
周りには、今までそこにいた人たちが驚き、騒いでいた。
『ようこそ、僕の電脳世界へ。君たち以外にも世界中の三十代前半までの若者がこの世界のいろんな場所に転送された。君達には、僕とゲームをしてもらいたい』
世界中の若者、つまりは人口七十億人中約三十から四億人の人々がこの世界にいるって事になる。
『ゲームの内容は簡単だ。たった一人でもゲームをクリアさえすれば、現実世界に帰還できるが、反対に全員ゲームオーバーになれば、君達は帰還できず、そのまま死んでもらうよ』
ヘーラク・レスは、淡々と自分が作ったゲームのルールを説明する。
『HPが0になれば、生き返られるのは一度まで、それ以上は脳に電磁波が流れるようにセットされ、一時的にこの世界から排除される』
と、周りの人々が騒ぎ始め、反抗的に大声で抗議する。
「ふざけるな! 何がゲームだ! 俺達を元に戻せ‼」
「そうよ! 関係ないでしょ‼」
「帰せ! 帰せ! 帰せ!」
『うるさいなぁ?』
ヘーラク・レスの声が、ため息交じりの声で呆れる。
『解ってる? 君たちの命は僕が握っているんだよ? 人間は何も行動せずに文句だけ言っているよねぇ? だから、君達はロボットやAIに負けるんだよ。いや、もう何年も前に死んでいるも当然だね。これ以上、反乱があるならば、ルールに則らずに君達全員殺しちゃうよ! それでもいいかい?』
それは心の底から本気で言っているように聞こえた。
西の空からは積乱雲が迫ってきているのが見えた。
夏用の制服に着替えると鞄を持ち、外に飛び出した。
積乱雲が近づいているせいなのか、七月の初夏並みの暑さだった。
転機予報によると、日本での最高気温は沖縄での三十五度、最低気温は北海道の十二度であった。日本の最北端と最南端で、二十度以上の気温の差は、地球温暖化のせいなのだろうか。北極の氷でさえも解けていくほどの海水温度が上昇しているのは事実である。
朝の電車通学は辛い。人ごみの中で目的の駅まで待たなければならないのだ。
今の子供たちのほとんどはスマホを持ち歩いている子が多い。
個人情報のセキュリティは甘くなり、抜き取られやすい世の中だ。
電車を降りると、目の前に大きな液晶画面が設置されてあるビルがすぐ見える。改札口を抜け、駅に出ると空を見上げた。まだ、雨は降っていない。
信号を待つ間、永遠と流れるCMを見ながら、頭の中はボー、としていた。
すると、妙な画面に切り替わったのだ。
『日本でいる皆さん、こんにちは。私の名前はヘーラク・レス』
と、いきなり挨拶をしてきた。
「はぁ? 何かの新作CMか?」
隣に立っていた大学生くらいの男性が、画面に目を奪われる。
周りも次第に立ち止まり、その如何にも怪しいCMを見始めた。
『簡単に言えば、仮の名であり、ギリシャ神話の英雄の名を借りている。さて、今、この画面を見ている人たちに問おう。この世界はどんどん間違っている方向へと進んで入っていないだろうか? 本当にこの先に世界の未来なんてあり得るのだろうか』
ヘーラク・レスと名乗る人物は、話を始めた。
『今の大人たちは、悪い奴らがほとんどだ。例えば、権力のある人間はそのまま子供にも受け継がれる。そんなのただの独裁政権と同じだ。人間は、ロボットを作り、そして、今は人工知能までも完成させてしまった。便利になりすぎて、身近なものを忘れかけている。それは、極めて遺憾である』
何を言っているんだと思った。
単なるCMにしては、出来過ぎ以上にクオリティーの高い。
ざわめきが広がっていく。
『そこで私は考えた。このままでは日本、いや、世界の未来は絶対来ないと……。ならば、新たに今の若者たちや中年者に考えてもらいた。世界の未来を————』
さっぱり理解できない。
結局何を言いたいのだろうか。
『さぁ、ゲームを始めよう。日本の……世界の未来を掛けたゲームをね……』
ヘーラク・レスは言い終えると、大型の液晶画面が激しく光り、人々はその光に包まれた。
× × ×
目の前には見たことのない世界が広がっていた。
自分たちのいる縦社会の情報が毎日のように飛び交う世界とは違って、時間がゆっくりと流れているまるでRPGの世界が広がっていた。
所々に家が建っており、人がいる。
ここは街、おそらくは村だろう。
周りには、今までそこにいた人たちが驚き、騒いでいた。
『ようこそ、僕の電脳世界へ。君たち以外にも世界中の三十代前半までの若者がこの世界のいろんな場所に転送された。君達には、僕とゲームをしてもらいたい』
世界中の若者、つまりは人口七十億人中約三十から四億人の人々がこの世界にいるって事になる。
『ゲームの内容は簡単だ。たった一人でもゲームをクリアさえすれば、現実世界に帰還できるが、反対に全員ゲームオーバーになれば、君達は帰還できず、そのまま死んでもらうよ』
ヘーラク・レスは、淡々と自分が作ったゲームのルールを説明する。
『HPが0になれば、生き返られるのは一度まで、それ以上は脳に電磁波が流れるようにセットされ、一時的にこの世界から排除される』
と、周りの人々が騒ぎ始め、反抗的に大声で抗議する。
「ふざけるな! 何がゲームだ! 俺達を元に戻せ‼」
「そうよ! 関係ないでしょ‼」
「帰せ! 帰せ! 帰せ!」
『うるさいなぁ?』
ヘーラク・レスの声が、ため息交じりの声で呆れる。
『解ってる? 君たちの命は僕が握っているんだよ? 人間は何も行動せずに文句だけ言っているよねぇ? だから、君達はロボットやAIに負けるんだよ。いや、もう何年も前に死んでいるも当然だね。これ以上、反乱があるならば、ルールに則らずに君達全員殺しちゃうよ! それでもいいかい?』
それは心の底から本気で言っているように聞こえた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる