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小学生篇
幼き幼なじみ Ⅱ
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「ありがとうございます」
「ありがとうございます……」
二人は礼を言って、冷房の効いた部屋の中でキンキンに冷えたオレンジジュースを飲み始めた。
「それにしてもこんな暑い日に虫取りなんか行かなくてもいいのにね」
「そうでしょ。俺なんか家の中でゆっくりとテレビを見ていたのにですよ」
「私はふーちゃんと元々約束していたからいいのよ。本当は二人で行く予定だったのにね」
「それは、それは……」
不満を言う夏海に秋一を適当に返事を返す。
それから待つこと十五分後————
「なっちゃん。待たせてごめんね!」
店の奥から出てきたのは秋一たちと同じくらいの少女だった。
秋一の幼なじみ・真島冬乃(小四)
「おーい、呼び出された俺は無視かよ……」
「はいはい、ごめん、ごめん。春も向こうで待っているから早く行くよ」
「あいつもこっちに呼べよ……」
秋一はそう言うと、三人は外へと出かけに言った。
飲み干したコップには、中途半端に溶けている氷だけだった。
「面倒くせぇ……」
三人は自転車に乗り、ペダルを漕ぎながら自然公園へと向かっている途中だった。
「————ってか、なんで春馬は家に呼ばなかったんだよ」
秋一が冬乃に問いかける。
「向こうの方で先に場所取りしてもらっているのよ。先にね————」
「ひでぇ……」
「あら、そう? 秋よりかは面倒じゃなくて頼みやすいんだけどなー」
「どうせ、俺は面倒な男だよ」
「あんたはそういうところがあるから誰も期待しないのよ」
「されるよりマシだってーの」
三人は近くの高校の前を通りかかる頃————
「おーい! 秋‼」
と、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「両手に花なんか咲かせて、一体どこに行くんだぁ?」
声をかけてきたのは、一人の高校球児だった。
秋一の兄・野上祐貴(高二)
三人は自転車を止め、話しかけてくる祐貴を見た。
「うるさいなぁ。誘われたんだよ! それに春馬も一緒にいるから両手に花じゃねぇ‼」
「そうかい。女にモテるのは今のうちだぞ!」
「それは兄ちゃんがモテないからだろ?」
「なっ!」
弟にからかわれて、チームメイトにも笑われる祐貴は秋一に向かって言い返す。
「モテないは無いだろうが! 俺だってな、これでも西高の二番手ピッチャーなんだぞ。なめんなよ!」
「それってエースじゃないじゃん。モテるっていうのはエースになってから言って欲しいねぇ」
秋一は再びペダルを漕ぎだし、その場を過ぎ去っていく。
「うるせぇ! 帰ったら覚えてろよ! 明日、絶対に試合身に来るんだぞ‼」
「へい、へーい」
秋一の後を夏海達が漕いでくる。
「祐兄、頑張ってね‼」
「おう、明日、絶対に勝つからな‼」
冬乃に応援されて、それに答えるかのように大声で返事を返す祐貴。
高校を過ぎると、あと少しで春馬が待つ自然公園へとたどり着く。
風が吹いているのに、夏の太陽のせいで気温が上がり、皮膚から汗がダラダラと流れてくる。
「そう言えば、春馬はなんで場所取りをさせられているんだ?」
ペダルを漕ぎながら、秋一は冬乃に訊いた。
「あそこ、意外と人気があるのよ」
「へー」
「あの公園、市内の子供たちがカブトムシやクワガタムシ取りに来るって有名なのは知っているでしょ?」
「そうだぞ。私なんか、この前上級生と喧嘩したばかりなんだからな」
「お前ら、少しは女の子らしくしてろよ……」
秋一は、二人の行動が明らかに女子に程遠いと感じた。
七月の太陽はこれから八月にかけて熱さを増していく。
市内にある自然公園————
「お前ら、来るのが遅いぞ」
木の下でずっと待っていた少年は秋一たちが来たのに気付き、手を振った。
秋一の幼なじみ・黒木春馬(小四)
「冬乃が部屋から出てこなかったんだよ」
「あ、そう……」
秋一が説明すると、春馬は理解して何も言わなかった。
「おーい、何もないのかよ……」
「はぁ? 何が?」
早速、虫取りを始める女子二人を見ながら二人は、その様子をじっと見ていた。
サンサンと照りつく太陽の下で子供たちは色々と遊んでいた。
冬乃達のように虫取りを楽しむ子。
サッカーや野球、鬼ごっこなど体を動かす運動を楽しむ子など、小学生や中学生が多くいた。
「なぁ?」
「なんだ?」
「野球でもしないか?」
「二人で……か?」
「いや、あそこで試合しているの、俺達のクラスメイトだろ?」
「そう言えばそうだな……」
春馬が向こうで野球をしている少年たちを指差す。
「俺、チームに入れてもらえるか頼んでくるよ」
「で? 一体どこを守るんだって言うんだ?」
「どこだっていいだろ? 俺は楽しければそれでいいんだからな」
「頼んだぞ」
秋一は春馬に任せて、一人で答えが出るのを舞った。
季節は夏本番。
中体連、インターハイ、インカレなどの全国大会が始まる中。
高校野球も夏の甲子園へと盛り上がっていく。
夏というのは汗と涙がつきものだ————
「ありがとうございます……」
二人は礼を言って、冷房の効いた部屋の中でキンキンに冷えたオレンジジュースを飲み始めた。
「それにしてもこんな暑い日に虫取りなんか行かなくてもいいのにね」
「そうでしょ。俺なんか家の中でゆっくりとテレビを見ていたのにですよ」
「私はふーちゃんと元々約束していたからいいのよ。本当は二人で行く予定だったのにね」
「それは、それは……」
不満を言う夏海に秋一を適当に返事を返す。
それから待つこと十五分後————
「なっちゃん。待たせてごめんね!」
店の奥から出てきたのは秋一たちと同じくらいの少女だった。
秋一の幼なじみ・真島冬乃(小四)
「おーい、呼び出された俺は無視かよ……」
「はいはい、ごめん、ごめん。春も向こうで待っているから早く行くよ」
「あいつもこっちに呼べよ……」
秋一はそう言うと、三人は外へと出かけに言った。
飲み干したコップには、中途半端に溶けている氷だけだった。
「面倒くせぇ……」
三人は自転車に乗り、ペダルを漕ぎながら自然公園へと向かっている途中だった。
「————ってか、なんで春馬は家に呼ばなかったんだよ」
秋一が冬乃に問いかける。
「向こうの方で先に場所取りしてもらっているのよ。先にね————」
「ひでぇ……」
「あら、そう? 秋よりかは面倒じゃなくて頼みやすいんだけどなー」
「どうせ、俺は面倒な男だよ」
「あんたはそういうところがあるから誰も期待しないのよ」
「されるよりマシだってーの」
三人は近くの高校の前を通りかかる頃————
「おーい! 秋‼」
と、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「両手に花なんか咲かせて、一体どこに行くんだぁ?」
声をかけてきたのは、一人の高校球児だった。
秋一の兄・野上祐貴(高二)
三人は自転車を止め、話しかけてくる祐貴を見た。
「うるさいなぁ。誘われたんだよ! それに春馬も一緒にいるから両手に花じゃねぇ‼」
「そうかい。女にモテるのは今のうちだぞ!」
「それは兄ちゃんがモテないからだろ?」
「なっ!」
弟にからかわれて、チームメイトにも笑われる祐貴は秋一に向かって言い返す。
「モテないは無いだろうが! 俺だってな、これでも西高の二番手ピッチャーなんだぞ。なめんなよ!」
「それってエースじゃないじゃん。モテるっていうのはエースになってから言って欲しいねぇ」
秋一は再びペダルを漕ぎだし、その場を過ぎ去っていく。
「うるせぇ! 帰ったら覚えてろよ! 明日、絶対に試合身に来るんだぞ‼」
「へい、へーい」
秋一の後を夏海達が漕いでくる。
「祐兄、頑張ってね‼」
「おう、明日、絶対に勝つからな‼」
冬乃に応援されて、それに答えるかのように大声で返事を返す祐貴。
高校を過ぎると、あと少しで春馬が待つ自然公園へとたどり着く。
風が吹いているのに、夏の太陽のせいで気温が上がり、皮膚から汗がダラダラと流れてくる。
「そう言えば、春馬はなんで場所取りをさせられているんだ?」
ペダルを漕ぎながら、秋一は冬乃に訊いた。
「あそこ、意外と人気があるのよ」
「へー」
「あの公園、市内の子供たちがカブトムシやクワガタムシ取りに来るって有名なのは知っているでしょ?」
「そうだぞ。私なんか、この前上級生と喧嘩したばかりなんだからな」
「お前ら、少しは女の子らしくしてろよ……」
秋一は、二人の行動が明らかに女子に程遠いと感じた。
七月の太陽はこれから八月にかけて熱さを増していく。
市内にある自然公園————
「お前ら、来るのが遅いぞ」
木の下でずっと待っていた少年は秋一たちが来たのに気付き、手を振った。
秋一の幼なじみ・黒木春馬(小四)
「冬乃が部屋から出てこなかったんだよ」
「あ、そう……」
秋一が説明すると、春馬は理解して何も言わなかった。
「おーい、何もないのかよ……」
「はぁ? 何が?」
早速、虫取りを始める女子二人を見ながら二人は、その様子をじっと見ていた。
サンサンと照りつく太陽の下で子供たちは色々と遊んでいた。
冬乃達のように虫取りを楽しむ子。
サッカーや野球、鬼ごっこなど体を動かす運動を楽しむ子など、小学生や中学生が多くいた。
「なぁ?」
「なんだ?」
「野球でもしないか?」
「二人で……か?」
「いや、あそこで試合しているの、俺達のクラスメイトだろ?」
「そう言えばそうだな……」
春馬が向こうで野球をしている少年たちを指差す。
「俺、チームに入れてもらえるか頼んでくるよ」
「で? 一体どこを守るんだって言うんだ?」
「どこだっていいだろ? 俺は楽しければそれでいいんだからな」
「頼んだぞ」
秋一は春馬に任せて、一人で答えが出るのを舞った。
季節は夏本番。
中体連、インターハイ、インカレなどの全国大会が始まる中。
高校野球も夏の甲子園へと盛り上がっていく。
夏というのは汗と涙がつきものだ————
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