上 下
52 / 62

51

しおりを挟む
 
 その後、披露宴は何事もなく、無事に終わりを迎えることが出来た。
 ふぅ、やれやれ。色々な人とたくさん喋ったから流石に疲れたな。
 でも、たくさんの人達から祝福されて、とても素敵な時間だったわ。

 ……さて、今日はまだ、やらなければならないことがある。

 そう、いよいよ現世の悪縁を切り離す「断罪の時間」の始まりだ。

 クロード様、王太子殿下、私の三人で披露宴会場の上の階にある角部屋までやってきた。

 クロード様が魔法で鍵を開けると、見覚えのある顔ぶれがこちらに注目する。
 その中には……はぁ、マーガレットまでいるのね。
 あの時のクロード様の忠告は耳に入っていなかったのかしら。

 内心呆れつつも家族の様子に目をやると、クロード様を見た家族、とくにマーガレットはひどく怯えた様子で部屋の隅に固まってしまった。

「ひいいいい! な、なんと恐ろしい!」

 披露宴に来たんだからクロード様がいるのだって分かるでしょうに、のこのこやって来た挙句にクロード様の登場に怯えるなんて……この人達は一体何をしにきたのだろうか。
 あまりに頭の悪い家族の行動にめまいがするわ。

 そんなことを思っていると私の姿を見た家族が早速金切り声で騒ぎ出した。

「エステル! 家族と縁を切るですって!? どういうことか説明しなさい!」
「能無しの分際で偉そうに! 早くランブルグ卿の誤解を解いて、援助を継続するよう伝えろ!!」
「全てお姉様が悪いのですわ! 散々お茶会を台無しにしておいてそんな仕打ちまで!」

 ああ、マーガレット。貴女全く反省していないわね。
 それどころかマーガレットを擁護し、自分たちの非を認めようとしない両親。

 ……ここまで来ると、逆に清々しいとさえ思えるわ。

「想像以上に酷い家族だな」

 隣にいた殿下は呆れた様子だ。
 そうだよね、誰がどうみてもこの家族はおかしいと思う。

「殿下、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「いや、気にしないでくれ。それより、こんな環境で育てられてエステル嬢もさぞかし苦労したことだろう」

 家族の発言を無視して王太子殿下に謝罪をしていると、私の発言を聞いていた両親が反応を示す。
 
「隣にいるのは王太子殿下!? これはこれは、お目に掛かれて光栄でございます」
「まぁそうなのね! 殿下、この度は能無しの娘が大変な粗相をしております。前回の騒動は娘達の些細な喧嘩のようですから、どうか絶縁宣言を撤回していただけませんでしょうか」

 手のひらを返したような猫撫で声で王太子殿下に訴える両親。
 そんな取り繕った言葉を今更言ったところで、意味はないのだけど。

「エステル嬢、御家族に向けて発言してもいいか?」
「はい。スターク家とは絶縁済みですし、私に遠慮いただかなくて結構ですわ」

 王太子殿下はこくりと頷くと家族に向けて話し掛けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】「お前を愛することはない!」と初夜にドヤ顔で宣言され、ムカついて言いたい放題罵ったら掌を返して溺愛されました。

無憂
恋愛
タイトルまんまです。眼鏡文官✖️口の悪い女。デブとか馬鹿とか罵倒語が飛び交いますので苦手な人は注意。他サイトにも掲載しています。

ダサいモブ令嬢に転生して猫を救ったら鉄仮面公爵様に溺愛されました

あさひな
恋愛
猫好き喪女の私はある日車に轢かれそうになっていた野良猫を助けて異世界転生を果たす。 転生先は買ったばかりの乙女ゲームの世界で、悪役令嬢の取り巻きのモブ令嬢。 しかもピンク色ばかり好むセンスの悪さから『ピンク令嬢』だなんて不名誉なあだ名で囁かれる人物に転生してしまった。 ヒロインに転生できなかったのは残念だけど、お気楽ポジションに転生出来たんなら異世界ライフを満喫しよう! と、持ち前のポジティブ思考と行動力で、センスの悪いフリフリピンクなドレス達を早々に断捨離。 ドレスを売ったお金で前世の夢だった保護猫カフェを異世界で設立しちゃいました! そんな中、怪我をした迷い猫を発見し助けてあげたところ、飼い主らしき青年と従者が現れたが……その飼い主は攻略対象者の一人である鉄仮面公爵様だった! その日の出来事をキッカケになんだか鉄仮面公爵様に気に入られ、プロポーズされてしまいました。 「少しずつで良い、僕を見て。そして僕の事を知って欲しい」 え? 私、モブ令嬢なんですけどヒロインと勘違いしていませんか!?

召喚失敗、成れの果て【完結】

米派
BL
勇者召喚に失敗され敵地に飛ばされた少年が、多腕の人外に保護される話。 ※異種間での交友なので、会話は一切不可能です。

Relation with・・・

エウラ
BL
それは偶然か必然か。 ストーカーに刺されて死んだ羽柴桜雅(はしばおうが)はその日の夜、ノスフェラトゥ(吸血鬼)として様々な種族の住む魔法のある異世界に転生した。 容姿はハーフだった元の世界のままの黒髪蒼曈。 神様になんて会わなかったし、急に人外になっても生まれたての赤子状態で何も分からない。 とりあえず誰かに話を聞こうと夜の街を徘徊中に空腹で倒れ、目が覚めたらカーテンで真っ暗にされた部屋のベッドに寝ていた。 ・・・・・・隣にイケメン付きで。 倒れてすぐ、街を巡回中だった騎士の一人に保護という名の捕獲をされたらしい。 桜雅は記憶の無い吸血鬼ということで騎士達に御世話になる事になって・・・。 R18には*つきます。 不定期です。短編予定ですが何時もの唐突な行き当たりばったりなので変更あるかもです。 ※吸血鬼とか人狼とかのルビは聞き馴染みの無い外国語をあてましたが、普通に日本語読みで大丈夫です。 たまにルビ振りますけど。

さくらんぼの恋

碧 貴子
恋愛
侯爵令嬢のリディアーヌは、幼馴染で婚約者のエーベルトが大嫌いだ。婚約者である公爵令息のエーベルトもリディアーヌを嫌っている。リディアーヌが成人となる18歳の誕生日に結婚することになっている二人は、なんとか婚約を破棄したくてお互い恋人をつくることにしたのだが……。 素直じゃない二人が、素直になるまでのお話。ツンデレ×ツンデレがただのデレになってイチャイチャする話です。

婚約も二度目なら

cyaru
恋愛
ジェッタ伯爵家のコルネリアには婚約者がいた。 相手はハーベ伯爵家のカスパル。 このカスパル。婚約が借金の申し入れによるものでコルネリアは婿養子を迎えねばならないからと思っているのか、兎に角女にだらしが無く、惚れやすい上に不貞行為も平気でやってしまう。 筆頭公爵家の夜会に参加したのだが入場するなりカスパルは「最愛の女性と出会ってしまった」と言った。 最愛の女性とは平民のエリーゼ。 いつもの事だと軽くあしらうコルネリアだったがカスパルはコルネリアを置いて入場したばかりなのに会場を出て行ってしまった。 コルネリアは帰宅後、父親に「またか」と流されると思いながらあった事を告げると「婚約は解消いや破棄だ」と言う。理由はハーベ伯爵家を長兄が継ぐ事になり残りも僅かとなった借金を前倒しで完済したという。 これまでの不貞もあり上乗せになった慰謝料が支払われ、無事に婚約も無くなったコルネリアだが、婿養子を迎えねばならない事は変わらず新しい婚約者が選ばれた。 シャウテン子爵家の次男ヴェッセル。 カスパルに負けず劣らずで女性との浮名を流す男だった。 「私って、本当に男運がないんだわ」 ガッカリするコルネリアだったが、実際のヴェッセルは噂とは違っているような、噂のまんまのような‥。 新しい婚約者が出来たコルネリアだったが、カスパルとエリーゼは…。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★7月20日投稿開始、完結は7月22日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

この朝に辿り着く

豆狸
恋愛
「あはははは」 「どうしたんだい?」 いきなり笑い出した私に、殿下は戸惑っているようです。 だけど笑うしかありません。 だって私はわかったのです。わかってしまったのです。 「……これは夢なのですね」 「な、なにを言ってるんだい、カロリーヌ」 「殿下が私を愛しているなどとおっしゃるはずがありません」 なろう様でも公開中です。 ※1/11タイトルから『。』を外しました。

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

処理中です...