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 無事に結婚式が終わり、披露宴へ会場が移される。

 はぁ、一つ終わったと思ったらまだ披露宴があるのか。
 先ほどの結婚式でHPがだいぶ減っておりげんなりするけど、クロード様が側に付いていてくれるし、困ったことがあれば助けてくれるだろう。
 よし、気合を入れ直していざ参らん!

 これまた煌びやかな披露宴会場に圧倒されつつも会場入りを済ませると、要人達に挨拶周りをしていく。
 ちなみにこちらの世界の披露宴は「新郎新婦のお披露目と社交」が目的のため、前世のように着席型ではなく、立食式の社交パーティーに近いものである。
 
「妻のエステルと申します」
「いやぁ、こちらが噂の奥様ですな」
「奥様は初めてお目に掛かりますな」
「奥様、以後お見お知りおきを」
 
 ん? 先程からどの方々もクロード様と目線を合わせずに私の方に目を向ける。
 ああ、そうか。クロード様の瞳には強い魔力が宿っているから見ることが出来ないんだ。

 クロード様は、ずっとこの違和感を感じて生きて来たのか……きっと、かなりの孤独感を抱えて来たんだろうな。

 思わず腕に寄り添うと、クロード様は「どうした?」と心配そうな表情のクロード様と目が合う。

「いいえ、なんでもありませんわ」
 
 クロード様、私だけは貴方から目を背けたりはしないわ。
 だって、私は貴女の妻なんですから。

 そんな事を思っていると、入り口付近が急に騒がしくなる。

「早くアイツと会わせろ!」
「……ル! エステルを出しなさい!!」

 この威圧的な態度とヒステリックな声に聞き覚えがあるわ。

 そう、この声は紛れもない……毒親の声だ。 
 
 マーガレットの件で通達書を送ったはずなのに。
 それに、披露宴会場も日時も知らせていないのに、なぜ知っているの!?
 取り合えず考えている暇はないわ、すぐに両親に退場してもらわなきゃ大変なことになるわ!

「クロード様、申し訳ありません。少々席を外します」

 手を解いて入口付近に向かおうとするが、クロード様に強く引き寄せられる。

「ダメだ、危険過ぎる」
「ですが、あの声は恐らくスターク家の……その、私の両親だと思うのです」

 クロード様は溜息を吐きながら私に話し掛ける。

「エステル、一先ず御家族を個室に転移してもいいだろうか」
「は、はい」

 急に入口付近が眩しく光り、先ほどの騒がしい声もしなくなった。

「取り合えず空いている鍵付きの個室へ移動させた。披露宴が終わり次第向かおう」

 良かった。このままでは披露宴続行が危ういと思ったけど、ひとまずはこのまま再開出来そう。
 この披露宴を開催するのだって、セバスさんを始めたくさんの人が関わってここまで形になったのだから、毒親の都合で台無しになんてさせたくなかったし。

「クロード様、ありがとうございます」
「気にすることはない。さ、あともう少しの辛抱だ。今は気持ちを切り替えて披露宴を乗り切ろう」
「はい!」

 両親のことは気になる。
 でも、今はクロード様とこの場を乗り切ることだけを考えよう。
 
 
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