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「ああ、エステル。無事で良かった」
「ク、クロード様。あの」
「エステル、なぜ無茶をした!? 貴女は攻撃から身を守る術がないのに!」
「ご、ごめんなさい。まさか魔法を使ったり物理的な攻撃に出てくるなんて思わなくて」
「やはりセバスを同行させておいて良かった。それに、万が一のために私の魔力を込めた髪飾りを渡しておいて正解だったよ」
「え?」
髪飾り? そういえば出かける前にクロード様が小さい宝石付きの髪飾りを付けてくれたけど。
「この髪飾りは防御と追跡の魔法が掛けられている。防御の効果は限定的ではあるが、ある程度の衝撃は緩和してくれるし、追跡魔法は魔法攻撃を受けたり連れ去りがあった場合に術者に通知が来るようになっている」
ああ、なるほど。
私が魔法攻撃を受けたから、それを察知してクロード様が来てくれたのか。
そして、魔法攻撃を受けてもこの髪飾りが衝撃を緩和してくれていたから、尻もちだけで済んだのね。
ってことは、生身であの攻撃を受けていたら……。
想像すると、ゾッと背筋が凍る。
そんな私をクロード様はさらに強く私を抱き締める。
「通知が来た時、心臓が止まりそうだった。エステルの身が心配で生きた心地がしなかった」
ああ、クロード様は私の身を案じていて色々と手を回してくれていたのね。
こんなに心配してくれていたのに、私ったら何一つ気付かず、生身で敵地へ飛び込んでしまった。
「ごめんなさい、クロード様。もう無茶はしません」
私の謝罪を聞いたクロード様は、腕の力を緩めると、優しく私を見つめる。
先ほどの殺気立った冷酷な眼差しは、今やその影もない。
「今後は、私にも相談してほしい。私と貴女は夫婦なのだから」
前世では、結婚してすぐに夫と死別してしまったから、女手一つで何でもこなしてきた。
現世でも頼れる人物などいなかったし、それが当たり前になっていた。
でも……今は頼ってもいい人がいる。
そう思った途端、ふっと心が軽くなった気がした。
無意識に心に着けていた鎧が剥がれていくような、そんな感じ。
「ありがとうございます。クロード様……大好き」
軽くなった心から、湧き上がる想い。
私は気付けばその言葉を口にしていた。
「エステルの口から私への気持ちが聞けて嬉しいよ。私も、貴女を愛している」
徐々に近づく紫の瞳と、そこに映る私の姿。
自分の姿を見るのが恥ずかしくて目を瞑ると、薄くて熱を帯びたものがそっと唇に触れる。
ああ、お互いの熱で、溶けてしまいそう。
縋るように逞しい腕を握ると、クロード様は唇を離し再び私を抱き締めた。
熱が離れ少し冷静になってくると、先ほどマーガレットとクロード様が何かを話している光景が脳裏を過る。
あの時、クロード様はマーガレットに何を話したのだろう。
「クロード様、聞きたいことがあるのですが」
「ん、何だ?」
「さっき、妹に何かを話していたようですが、一体何を話していたのですか?」
「ああ、あれか。何、大したことはない。今後エステルの前に現れた際は転移魔法で魔の森へ飛ばす。魔獣の餌になりたくなれば二度と近寄るな、と言っただけだ」
「そ、そうだったのですね」
甘やかされて育ったマーガレットにその発言は相当な衝撃だっただろうな。
とはいえ、マーガレットからされてきた仕打ちを考えると、このくらいでは生ぬるいんだろうけど。
でも、これで「スターク家との絶縁」という私の望みは叶うのなら、それ以上のことは望まない。
「マーガレットに釘を刺してくれてありがとうございます。これで、スターク家は二度と関わってこないでしょう」
「ああ、そうだな」
大きな手が髪を優しく撫でる。
その感触と服越しに伝わる熱が気持ちよくて、私は屋敷に着くまでの間クロード様に身を委ねることにした。
ーーしかし、その判断こそが後の騒動に発展するとは、この時は知る由もなかった。
「ク、クロード様。あの」
「エステル、なぜ無茶をした!? 貴女は攻撃から身を守る術がないのに!」
「ご、ごめんなさい。まさか魔法を使ったり物理的な攻撃に出てくるなんて思わなくて」
「やはりセバスを同行させておいて良かった。それに、万が一のために私の魔力を込めた髪飾りを渡しておいて正解だったよ」
「え?」
髪飾り? そういえば出かける前にクロード様が小さい宝石付きの髪飾りを付けてくれたけど。
「この髪飾りは防御と追跡の魔法が掛けられている。防御の効果は限定的ではあるが、ある程度の衝撃は緩和してくれるし、追跡魔法は魔法攻撃を受けたり連れ去りがあった場合に術者に通知が来るようになっている」
ああ、なるほど。
私が魔法攻撃を受けたから、それを察知してクロード様が来てくれたのか。
そして、魔法攻撃を受けてもこの髪飾りが衝撃を緩和してくれていたから、尻もちだけで済んだのね。
ってことは、生身であの攻撃を受けていたら……。
想像すると、ゾッと背筋が凍る。
そんな私をクロード様はさらに強く私を抱き締める。
「通知が来た時、心臓が止まりそうだった。エステルの身が心配で生きた心地がしなかった」
ああ、クロード様は私の身を案じていて色々と手を回してくれていたのね。
こんなに心配してくれていたのに、私ったら何一つ気付かず、生身で敵地へ飛び込んでしまった。
「ごめんなさい、クロード様。もう無茶はしません」
私の謝罪を聞いたクロード様は、腕の力を緩めると、優しく私を見つめる。
先ほどの殺気立った冷酷な眼差しは、今やその影もない。
「今後は、私にも相談してほしい。私と貴女は夫婦なのだから」
前世では、結婚してすぐに夫と死別してしまったから、女手一つで何でもこなしてきた。
現世でも頼れる人物などいなかったし、それが当たり前になっていた。
でも……今は頼ってもいい人がいる。
そう思った途端、ふっと心が軽くなった気がした。
無意識に心に着けていた鎧が剥がれていくような、そんな感じ。
「ありがとうございます。クロード様……大好き」
軽くなった心から、湧き上がる想い。
私は気付けばその言葉を口にしていた。
「エステルの口から私への気持ちが聞けて嬉しいよ。私も、貴女を愛している」
徐々に近づく紫の瞳と、そこに映る私の姿。
自分の姿を見るのが恥ずかしくて目を瞑ると、薄くて熱を帯びたものがそっと唇に触れる。
ああ、お互いの熱で、溶けてしまいそう。
縋るように逞しい腕を握ると、クロード様は唇を離し再び私を抱き締めた。
熱が離れ少し冷静になってくると、先ほどマーガレットとクロード様が何かを話している光景が脳裏を過る。
あの時、クロード様はマーガレットに何を話したのだろう。
「クロード様、聞きたいことがあるのですが」
「ん、何だ?」
「さっき、妹に何かを話していたようですが、一体何を話していたのですか?」
「ああ、あれか。何、大したことはない。今後エステルの前に現れた際は転移魔法で魔の森へ飛ばす。魔獣の餌になりたくなれば二度と近寄るな、と言っただけだ」
「そ、そうだったのですね」
甘やかされて育ったマーガレットにその発言は相当な衝撃だっただろうな。
とはいえ、マーガレットからされてきた仕打ちを考えると、このくらいでは生ぬるいんだろうけど。
でも、これで「スターク家との絶縁」という私の望みは叶うのなら、それ以上のことは望まない。
「マーガレットに釘を刺してくれてありがとうございます。これで、スターク家は二度と関わってこないでしょう」
「ああ、そうだな」
大きな手が髪を優しく撫でる。
その感触と服越しに伝わる熱が気持ちよくて、私は屋敷に着くまでの間クロード様に身を委ねることにした。
ーーしかし、その判断こそが後の騒動に発展するとは、この時は知る由もなかった。
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