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「エステル、すまない。実は以前私宛にもエステルの両親から手紙が来ていたのだが、魔獣討伐の前で多忙だったことと、手紙の内容にエステルについての不適切な言葉が含まれていたので私から早々に返事を出しておいたのだ」
クロード様は言葉を選んで発言してくれているが、あの両親が言いそうな事は大体想像出来る。
きっと、この手紙のように胸糞悪い内容だったのだろう。
「そうだったのですね。クロード様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「エステルが謝る必要はない。それより、本来ならエステルに内容を伝えるのが筋だろうが、私の一存で黙っていてすまなかった」
ああ、クロード様は家族からの心無い言葉が書かれた手紙を読んで傷付かないよう、私に配慮してくれたのか。
その優しさが、身に染みる。
「クロード様が謝る必要など、どこにもございません。それより家族が大変な失礼を働いたようで」
「私のことは気にしなくていい。それより手紙の内容は? もしかして、また不適切な表現が含まれていたのではないのか」
「ええっと、その」
困ったな、なんて伝えようかな。
きっとこの状況で嘘を付いてもすぐにバレてしまうだろうし、オブラートに包んで伝えるのが良さそうね。
「家族は『能無し』の私のことを良く思っていませんでしたから。あとは、妹も婚約者と結婚が決まったようで、お茶会へのお誘いについて記載がございました」
文中でも書かれていた結婚式のことだが、魔獣討伐の影響で延期になっていた。
討伐後の処理も無事に終わったので、実は結婚式の準備に向け動き出していたところだった。
私自身は花嫁衣裳に憧れもなければ結婚式を挙げる必要性も感じていないのだけど、貴族というのは「社交界」という、これまた面倒な貴族同士の付き合いがある。
また、パートナーのお披露目という意味でも結婚式と披露宴は執り行われるのが慣例だ。
式場や大まかな進行についてはセバスさんが取り仕切ってくれていたが、私側の招待客についてセバスさんに報告する必要があった。
ただ、エステルは家族から蔑ろにされてきたし、親しい友人もいない。
招待客リストをどうすべきか悩んでいるうちに時間だけが経過していたのだけど、それをランブルグ様が貧乏だから結婚式が開けない? 勘違いも良いところだし、手紙とはいえクロード様の事を悪く書くなんて許せない。
しかも、血の繋がった兄弟とはいえ、男爵家と辺境伯では格式だって違うはずなのに、わざわざこんな嫌味の籠った手紙で呼び付けて来るなんて。
エステルは今までずっと耐えてきたけれど、今はもうスターク家の人間ではない。
クロード様の妻となった今、ランブルグ家に泥を塗るような存在を見過ごすことは出来ない。
こんな家族などランブルグ家には不要だわ。
今後のためにも、絶縁しよう。
「クロード様、私、お茶会に参加してきます」
スターク家との関係を切るためにお茶会へ参加することを決心したが、私の言葉を聞いたクロード様の表情が曇る。
「エステルの意思は尊重したいが、参加した場合エステルが傷付くのではないかと心配だ。今回のお茶会は見送ってはどうだろうか」
「クロード様、心配して下さってありがとうございます。ですが、妹からのお誘いですので参加したいと思っています」
「そうか。では私も参加してもいいだろうか? それなら何かあってもすぐに対応出来る」
心配してくれるクロード様の気持ちも分かる。
だけど、これは、私が断ち切らなければならない因縁だし、これ以上クロード様に迷惑はかけられない。
「お気遣いありがとうございます。ですが、クロード様はお仕事で多忙ですし、こんな事のためにお時間をいただくわけにはいきません。それに、これは私の家族の問題ですし、これ以上のご迷惑をお掛けするわけには参りませんわ」
「そうか……分かった。だが、一つだけ条件がある」
「条件?」
「ああ。当日はルネではなくセバスを同行させる」
私は結婚したから今まで屋敷から出たことがないのでルネさん以外を同行者として行動をしたことがなかった。
今回のお茶会はそもそもルネさんが同行するものだと思っていたけど、条件として提示されてしまっては飲む他ないだろう。
「分かりました」
クロード様の表情は依然として曇りがちだが、これ以上お茶会についての話に触れて来なかった。
クロード様は言葉を選んで発言してくれているが、あの両親が言いそうな事は大体想像出来る。
きっと、この手紙のように胸糞悪い内容だったのだろう。
「そうだったのですね。クロード様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「エステルが謝る必要はない。それより、本来ならエステルに内容を伝えるのが筋だろうが、私の一存で黙っていてすまなかった」
ああ、クロード様は家族からの心無い言葉が書かれた手紙を読んで傷付かないよう、私に配慮してくれたのか。
その優しさが、身に染みる。
「クロード様が謝る必要など、どこにもございません。それより家族が大変な失礼を働いたようで」
「私のことは気にしなくていい。それより手紙の内容は? もしかして、また不適切な表現が含まれていたのではないのか」
「ええっと、その」
困ったな、なんて伝えようかな。
きっとこの状況で嘘を付いてもすぐにバレてしまうだろうし、オブラートに包んで伝えるのが良さそうね。
「家族は『能無し』の私のことを良く思っていませんでしたから。あとは、妹も婚約者と結婚が決まったようで、お茶会へのお誘いについて記載がございました」
文中でも書かれていた結婚式のことだが、魔獣討伐の影響で延期になっていた。
討伐後の処理も無事に終わったので、実は結婚式の準備に向け動き出していたところだった。
私自身は花嫁衣裳に憧れもなければ結婚式を挙げる必要性も感じていないのだけど、貴族というのは「社交界」という、これまた面倒な貴族同士の付き合いがある。
また、パートナーのお披露目という意味でも結婚式と披露宴は執り行われるのが慣例だ。
式場や大まかな進行についてはセバスさんが取り仕切ってくれていたが、私側の招待客についてセバスさんに報告する必要があった。
ただ、エステルは家族から蔑ろにされてきたし、親しい友人もいない。
招待客リストをどうすべきか悩んでいるうちに時間だけが経過していたのだけど、それをランブルグ様が貧乏だから結婚式が開けない? 勘違いも良いところだし、手紙とはいえクロード様の事を悪く書くなんて許せない。
しかも、血の繋がった兄弟とはいえ、男爵家と辺境伯では格式だって違うはずなのに、わざわざこんな嫌味の籠った手紙で呼び付けて来るなんて。
エステルは今までずっと耐えてきたけれど、今はもうスターク家の人間ではない。
クロード様の妻となった今、ランブルグ家に泥を塗るような存在を見過ごすことは出来ない。
こんな家族などランブルグ家には不要だわ。
今後のためにも、絶縁しよう。
「クロード様、私、お茶会に参加してきます」
スターク家との関係を切るためにお茶会へ参加することを決心したが、私の言葉を聞いたクロード様の表情が曇る。
「エステルの意思は尊重したいが、参加した場合エステルが傷付くのではないかと心配だ。今回のお茶会は見送ってはどうだろうか」
「クロード様、心配して下さってありがとうございます。ですが、妹からのお誘いですので参加したいと思っています」
「そうか。では私も参加してもいいだろうか? それなら何かあってもすぐに対応出来る」
心配してくれるクロード様の気持ちも分かる。
だけど、これは、私が断ち切らなければならない因縁だし、これ以上クロード様に迷惑はかけられない。
「お気遣いありがとうございます。ですが、クロード様はお仕事で多忙ですし、こんな事のためにお時間をいただくわけにはいきません。それに、これは私の家族の問題ですし、これ以上のご迷惑をお掛けするわけには参りませんわ」
「そうか……分かった。だが、一つだけ条件がある」
「条件?」
「ああ。当日はルネではなくセバスを同行させる」
私は結婚したから今まで屋敷から出たことがないのでルネさん以外を同行者として行動をしたことがなかった。
今回のお茶会はそもそもルネさんが同行するものだと思っていたけど、条件として提示されてしまっては飲む他ないだろう。
「分かりました」
クロード様の表情は依然として曇りがちだが、これ以上お茶会についての話に触れて来なかった。
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