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第三部 終わりの伝説
一〇章 真打ち登場
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新しき亡道の司が現れた。
それも、一体ではなかった。二体、三体、十体、二十体、百、千、いや、それ以上……。新たな亡道の司が次々と現れ、大広間を埋め尽くした。しかも――。
その亡道の司は一人ひとり姿がちがった。
金属の鎧をまとった亡道の司がいる。
天を突く巨人のような亡道の司がいる。
幾枚もの巨大な翼を生やした亡道の司がいる。
その他、竜のような姿をしたもの、獣のような姿をしたもの、機械の体をもっているかのようなもの……。
一人ひとりの亡道の司全員がそれぞれにちがう姿をもっており、しかも、その種類は無数と言ってもよかった。
――こ、これは……。ゼッヴォーカーの導師、これは一体どういうことなのです、亡道の司が一人ひとりちがう姿をとるなどとは……。
――説明しよう、マークスⅡ。私にもわからぬ。亡道の世界に区別はない。一は全であり、全は一。それが、亡道の世界。その亡道の世界の化身たる亡道の司がそれぞれにちがう姿を取るなど……そんなことはあるはずがない。少なくとも、我らの歴史のなかでそのような例はなかった。
なんと言うことだろう。あの機械的なまでに冷静で、深き英知に富んだゼッヴォーカーの導師。そのゼッヴォーカーの導師が理解不能な出来事を前にうろたえることがあろうとは。
しかし、事実、ゼッヴォーカーの導師の声、いや、思念にははっきりとうろたえた様子があった。これが人間なら後ずさり、目を見開き、脂汗を流しているところだ。それぐらい、目の前に展開された光景は衝撃的なものだった。
はじまりの種族ゼッヴォーカー。
そのゼッヴォーカーが見つめてきたこの世界の歴史。それは、数万年ではとうてい足りない。その永いながい歴史のなかで一度も起きたことのない出来事。それが、いま、起きているのだ。
通常であればその出来事に知的好奇心をそそられ、この上ない研究対象が出来たと喜び勇んでいたことだろう。しかし――。
しかし、いまはそんな余裕なぞない。もし、この新しき亡道の司に対抗できなければこの世界はまたも滅びてしまうのだ。そして、人類も……いや、人類だけではない。先行するあらゆる種族たちも。
滅亡から逃れるために狭間の世界に避難していたすべての先行種族。そのすべてがこの最後の戦いに参加するべく『鏡』に入り、この世界にやってきている。もし、いま、世界が亡道によって呑み込まれれば誰も助からない。せっかく生き延び、滅びの定めを覆すために活動をつづけてきたすべての先行種族。その種族たちまでが絶滅してしまう。
我々、人類のもくろみが外れたことで!
わしは大きな責任と、それ以上の懸念を感じずにはいられなかった。そして、その懸念は現実のものとなりつつあった。
「駄目です、マークスⅢ! 新しい亡道の司には力場が効きません!」
決戦兵たちの悲鳴が響く。この戦いのためにすべてを懸ける。そう誓ったはずの決戦兵たちが思わぬ事態に怯む姿を見せていた。
力場を発生させる機械の槍の穂先を相手に向けながらも、怯えた表情を浮かべてジリジリと後ずさる。それはまさに、巨大な虎を前にした無力な子猫の姿そのものじゃった。
「くっ……」
マークスⅢが歯ぎしりした。その手にもつ鬼骨をもってしても新しき亡道の司を斬ることが出来るだろうか。
――斬れる。
そう断言することはわしには出来なかった。
「どういうことだ、なぜ、新しき亡道の司などが現れる⁉」
――だから、『勝ったつもりか』と言ったのだ。愚かな人間よ。
「な、なに……?」
――人類の凄さはかわれる凄さ、か。二千年前、騎士マークスとの戦いのときから聞かされてきた言葉だ。お前たちはたいそう、自分たちがかわれることを誇っているらしいな。だが、お前たちは大きな過ちを起こした。それは……。
すべての亡道の司の声がひとつとなり、我々の過ちを告げた。
――亡道のものは決してかわれぬ。そう決めつけたことだ。
「ふざけるな! 亡道はすべてが混じり合った状態、生もなく、死もなく、過去も未来もない! 永遠に立ちどまった世界だ。その世界がかわれるわけがない!」
――それが、過ちだというのだ、人間よ。
「なに……?」
――亡道はすべてを呑み込む。あらゆるものを我が身に溶かし込み、ひとつとなる。すなわち……。
――お前たちの変化を取り込み、そうすることで、我らもかわる。
「………!」
――そう。お前たち人間は我ら亡道の司を倒すために変化した。強くなった。だが、我らはその変化を取り込むことでより強くなる。お前たちは強くなることで我々を倒せると思った。だが、実際には強くなることで我々をより強くし、滅びを招き寄せたのだ。
「くっ……。決戦兵、力場を集中させろ! いくら、かわったと言っても亡道は亡道! 力場の中和作用がまったく効かないはずはない! 集中すれば……」
――無駄だ。
「うわああっ!」
決戦兵たちの悲鳴が響いた。
極限まで鍛えあげ、肉体においても、精神においても、人間の限界を超えるまでに高め、決して動ずることのない金剛の精神を身につけた、そのはずの決戦兵たちが恐怖に駆られ、無様に悲鳴をあげたのじゃ。
決戦兵たちはマークスⅢに言われたとおり、密集隊形を取ることで機械の槍の穂先をそろえ、凝縮された力場をぶつけて新しき亡道の司に対抗しようとした。じゃが、無駄だった。無駄だったのだ。新しき亡道の司の放った力は力場を容易に打ち破り、決戦兵たちをなぎ倒したのじゃ!
――言ったであろう。我々はお前たちの変化を取り入れ、より強くなったと。お前たちの振るう力そのものを我が一部にかえたのだ。もはや、お前たちの力なぞ通じん。
「くっ……」
マークスⅢが歯がみしおった。そこへ、騎士マークスの悲鳴――騎士マークスともあろうものが悲鳴をあげたりすることがあるとするなら、このときがまさにそうじゃった――が届いた。
――マークスⅢ! 新しき亡道のものにはこちらの力は一切、通じない! このまま立ち向かおうとすれば全滅する! ここはいったん退く! すぐに戻れ!
「騎士マークス……。わかりました」
マークスⅢは苦渋の表情でそううなずいた。
そのときのマークスⅢの悔しさ、無念さは、わしには身が切れるほどによくわかった。
「決戦兵、一時、撤退だ! すぐに船団まで戻れ!」
マークスⅢのその指示に――。
決戦兵たちは我先にと大広間の出口に向かった。
あまりにもあわてたものだから、お互いにぶつかり、激突し、倒れ込む。倒れたその上に次の波が殺到し、背を踏みつける。足を取られ、転倒する。さらにその上に次の波が押し寄せ……。
互いにぶつかり、転倒し、なんとか起きあがろうとしたところを後続に踏みつけられ……そこにいたのはもはや、心技体すべてにおいて極限まで鍛えられた精鋭中の精鋭などではなかった。恐怖に駆られ、我先にと逃げ出す小動物の群れに過ぎなかった。
それほどの醜態をさらしながらも決戦兵たちはこの場から逃れようとした。
じゃが――。
――無駄だ。
無慈悲なる亡道の司の声が響いた。
本来、亡道の世界の化身として、人間的な意味での感情など決してもつはずのない亡道の司。しかし、この天命の世界にある限り、天命の理による影響を受けて感情をもつ知性として振る舞う。
それ故の嘲りと冷徹さとを含んだ声。
このときばかりは『感情がある』ということの残酷さが骨身に染みた。
亡道の世界から染み込んでくる霧が大広間に広がり、出口の前を包み込んだ。霧が凝縮し、新しき亡道の司へとかわる。まるで決戦兵をその身に取り込んだかのような、機械の鎧をまとい、機械の武器をもった姿へと。
――逃がしはせぬ。
冷徹なる亡道の司の声が響く。
決戦兵は、そして、マークスⅢと我々は、もはや、完全に亡道の司に囲まれていた。
マークスⅢの苦し紛れの指示が飛んだ。
「円陣を組め! 密集隊形を作って力場を重ねあわせろ! 少しでも、一分一秒でも時間を稼ぐのだ!」
この期に及んでも決戦兵たちはマークスⅢの指示に忠実だった。言われるままに円陣を組み、身と身を寄せ合い、外に向けて機械の槍の穂先を向けた。穂先と穂先とを寄せ合い、力場を重ねあわせる。そうすることで少しでも亡道の力を中和しようとした。じゃが――。
――無駄だと言った。
またも、亡道の司の無慈悲な声が響きおった。
――お前たちの力はすべて解析した。もはや、我らには一切、通じぬ。
その言葉を証明するかのように――。
亡道の力が決戦兵たちを侵食しはじめた。
「うわあああっ!」
決戦兵の悲鳴があがる。
決戦兵の手が、足が、顔が、その全身が、亡道の世界の力を受けて変異していく。かわっていく。すべてがひとつとなった亡道のものへと。
――見よ。かわる、かわって行く。お前たちは永遠にかわる! 嬉しかろう、誇らしかろう、かわることこそお前たちの自慢なのだからな。 望み通り、我らがお前たちをかえてやるぞ。亡道のものへとな。喜ぶがいい!
亡道の司のあざ笑う声が鳴り響く。大聖堂のなかに響き渡るピアノ音楽のように。
亡道の力を受けて変わり果てていく決戦兵たち。その姿を前にマークスⅢはなにもできずにおった。そして、わしも、ゼッヴォーカーの導師さえも。
同胞たちが苦しみ、変異させらて行くのをただ黙って指をくわえて見ていることしか出来なかったのじゃ。
――もはや、これまでか。
そう思われたそのときじゃ。
「それで勝ったつもりか?」
声がした。
女性の声じゃ。若く、美しい声じゃ。そしてそれは――。
この二千年、誰も聞いたことのない声じゃった。
「亡道の司。あなたはそう言った。でも――。ふふ。それは、敗北するものの言葉」
清らかなるハープの音色と共にその声の主はやってくる。
ハープを奏でる若く、美しい女性。
天命の巫女さま。
それも、一体ではなかった。二体、三体、十体、二十体、百、千、いや、それ以上……。新たな亡道の司が次々と現れ、大広間を埋め尽くした。しかも――。
その亡道の司は一人ひとり姿がちがった。
金属の鎧をまとった亡道の司がいる。
天を突く巨人のような亡道の司がいる。
幾枚もの巨大な翼を生やした亡道の司がいる。
その他、竜のような姿をしたもの、獣のような姿をしたもの、機械の体をもっているかのようなもの……。
一人ひとりの亡道の司全員がそれぞれにちがう姿をもっており、しかも、その種類は無数と言ってもよかった。
――こ、これは……。ゼッヴォーカーの導師、これは一体どういうことなのです、亡道の司が一人ひとりちがう姿をとるなどとは……。
――説明しよう、マークスⅡ。私にもわからぬ。亡道の世界に区別はない。一は全であり、全は一。それが、亡道の世界。その亡道の世界の化身たる亡道の司がそれぞれにちがう姿を取るなど……そんなことはあるはずがない。少なくとも、我らの歴史のなかでそのような例はなかった。
なんと言うことだろう。あの機械的なまでに冷静で、深き英知に富んだゼッヴォーカーの導師。そのゼッヴォーカーの導師が理解不能な出来事を前にうろたえることがあろうとは。
しかし、事実、ゼッヴォーカーの導師の声、いや、思念にははっきりとうろたえた様子があった。これが人間なら後ずさり、目を見開き、脂汗を流しているところだ。それぐらい、目の前に展開された光景は衝撃的なものだった。
はじまりの種族ゼッヴォーカー。
そのゼッヴォーカーが見つめてきたこの世界の歴史。それは、数万年ではとうてい足りない。その永いながい歴史のなかで一度も起きたことのない出来事。それが、いま、起きているのだ。
通常であればその出来事に知的好奇心をそそられ、この上ない研究対象が出来たと喜び勇んでいたことだろう。しかし――。
しかし、いまはそんな余裕なぞない。もし、この新しき亡道の司に対抗できなければこの世界はまたも滅びてしまうのだ。そして、人類も……いや、人類だけではない。先行するあらゆる種族たちも。
滅亡から逃れるために狭間の世界に避難していたすべての先行種族。そのすべてがこの最後の戦いに参加するべく『鏡』に入り、この世界にやってきている。もし、いま、世界が亡道によって呑み込まれれば誰も助からない。せっかく生き延び、滅びの定めを覆すために活動をつづけてきたすべての先行種族。その種族たちまでが絶滅してしまう。
我々、人類のもくろみが外れたことで!
わしは大きな責任と、それ以上の懸念を感じずにはいられなかった。そして、その懸念は現実のものとなりつつあった。
「駄目です、マークスⅢ! 新しい亡道の司には力場が効きません!」
決戦兵たちの悲鳴が響く。この戦いのためにすべてを懸ける。そう誓ったはずの決戦兵たちが思わぬ事態に怯む姿を見せていた。
力場を発生させる機械の槍の穂先を相手に向けながらも、怯えた表情を浮かべてジリジリと後ずさる。それはまさに、巨大な虎を前にした無力な子猫の姿そのものじゃった。
「くっ……」
マークスⅢが歯ぎしりした。その手にもつ鬼骨をもってしても新しき亡道の司を斬ることが出来るだろうか。
――斬れる。
そう断言することはわしには出来なかった。
「どういうことだ、なぜ、新しき亡道の司などが現れる⁉」
――だから、『勝ったつもりか』と言ったのだ。愚かな人間よ。
「な、なに……?」
――人類の凄さはかわれる凄さ、か。二千年前、騎士マークスとの戦いのときから聞かされてきた言葉だ。お前たちはたいそう、自分たちがかわれることを誇っているらしいな。だが、お前たちは大きな過ちを起こした。それは……。
すべての亡道の司の声がひとつとなり、我々の過ちを告げた。
――亡道のものは決してかわれぬ。そう決めつけたことだ。
「ふざけるな! 亡道はすべてが混じり合った状態、生もなく、死もなく、過去も未来もない! 永遠に立ちどまった世界だ。その世界がかわれるわけがない!」
――それが、過ちだというのだ、人間よ。
「なに……?」
――亡道はすべてを呑み込む。あらゆるものを我が身に溶かし込み、ひとつとなる。すなわち……。
――お前たちの変化を取り込み、そうすることで、我らもかわる。
「………!」
――そう。お前たち人間は我ら亡道の司を倒すために変化した。強くなった。だが、我らはその変化を取り込むことでより強くなる。お前たちは強くなることで我々を倒せると思った。だが、実際には強くなることで我々をより強くし、滅びを招き寄せたのだ。
「くっ……。決戦兵、力場を集中させろ! いくら、かわったと言っても亡道は亡道! 力場の中和作用がまったく効かないはずはない! 集中すれば……」
――無駄だ。
「うわああっ!」
決戦兵たちの悲鳴が響いた。
極限まで鍛えあげ、肉体においても、精神においても、人間の限界を超えるまでに高め、決して動ずることのない金剛の精神を身につけた、そのはずの決戦兵たちが恐怖に駆られ、無様に悲鳴をあげたのじゃ。
決戦兵たちはマークスⅢに言われたとおり、密集隊形を取ることで機械の槍の穂先をそろえ、凝縮された力場をぶつけて新しき亡道の司に対抗しようとした。じゃが、無駄だった。無駄だったのだ。新しき亡道の司の放った力は力場を容易に打ち破り、決戦兵たちをなぎ倒したのじゃ!
――言ったであろう。我々はお前たちの変化を取り入れ、より強くなったと。お前たちの振るう力そのものを我が一部にかえたのだ。もはや、お前たちの力なぞ通じん。
「くっ……」
マークスⅢが歯がみしおった。そこへ、騎士マークスの悲鳴――騎士マークスともあろうものが悲鳴をあげたりすることがあるとするなら、このときがまさにそうじゃった――が届いた。
――マークスⅢ! 新しき亡道のものにはこちらの力は一切、通じない! このまま立ち向かおうとすれば全滅する! ここはいったん退く! すぐに戻れ!
「騎士マークス……。わかりました」
マークスⅢは苦渋の表情でそううなずいた。
そのときのマークスⅢの悔しさ、無念さは、わしには身が切れるほどによくわかった。
「決戦兵、一時、撤退だ! すぐに船団まで戻れ!」
マークスⅢのその指示に――。
決戦兵たちは我先にと大広間の出口に向かった。
あまりにもあわてたものだから、お互いにぶつかり、激突し、倒れ込む。倒れたその上に次の波が殺到し、背を踏みつける。足を取られ、転倒する。さらにその上に次の波が押し寄せ……。
互いにぶつかり、転倒し、なんとか起きあがろうとしたところを後続に踏みつけられ……そこにいたのはもはや、心技体すべてにおいて極限まで鍛えられた精鋭中の精鋭などではなかった。恐怖に駆られ、我先にと逃げ出す小動物の群れに過ぎなかった。
それほどの醜態をさらしながらも決戦兵たちはこの場から逃れようとした。
じゃが――。
――無駄だ。
無慈悲なる亡道の司の声が響いた。
本来、亡道の世界の化身として、人間的な意味での感情など決してもつはずのない亡道の司。しかし、この天命の世界にある限り、天命の理による影響を受けて感情をもつ知性として振る舞う。
それ故の嘲りと冷徹さとを含んだ声。
このときばかりは『感情がある』ということの残酷さが骨身に染みた。
亡道の世界から染み込んでくる霧が大広間に広がり、出口の前を包み込んだ。霧が凝縮し、新しき亡道の司へとかわる。まるで決戦兵をその身に取り込んだかのような、機械の鎧をまとい、機械の武器をもった姿へと。
――逃がしはせぬ。
冷徹なる亡道の司の声が響く。
決戦兵は、そして、マークスⅢと我々は、もはや、完全に亡道の司に囲まれていた。
マークスⅢの苦し紛れの指示が飛んだ。
「円陣を組め! 密集隊形を作って力場を重ねあわせろ! 少しでも、一分一秒でも時間を稼ぐのだ!」
この期に及んでも決戦兵たちはマークスⅢの指示に忠実だった。言われるままに円陣を組み、身と身を寄せ合い、外に向けて機械の槍の穂先を向けた。穂先と穂先とを寄せ合い、力場を重ねあわせる。そうすることで少しでも亡道の力を中和しようとした。じゃが――。
――無駄だと言った。
またも、亡道の司の無慈悲な声が響きおった。
――お前たちの力はすべて解析した。もはや、我らには一切、通じぬ。
その言葉を証明するかのように――。
亡道の力が決戦兵たちを侵食しはじめた。
「うわあああっ!」
決戦兵の悲鳴があがる。
決戦兵の手が、足が、顔が、その全身が、亡道の世界の力を受けて変異していく。かわっていく。すべてがひとつとなった亡道のものへと。
――見よ。かわる、かわって行く。お前たちは永遠にかわる! 嬉しかろう、誇らしかろう、かわることこそお前たちの自慢なのだからな。 望み通り、我らがお前たちをかえてやるぞ。亡道のものへとな。喜ぶがいい!
亡道の司のあざ笑う声が鳴り響く。大聖堂のなかに響き渡るピアノ音楽のように。
亡道の力を受けて変わり果てていく決戦兵たち。その姿を前にマークスⅢはなにもできずにおった。そして、わしも、ゼッヴォーカーの導師さえも。
同胞たちが苦しみ、変異させらて行くのをただ黙って指をくわえて見ていることしか出来なかったのじゃ。
――もはや、これまでか。
そう思われたそのときじゃ。
「それで勝ったつもりか?」
声がした。
女性の声じゃ。若く、美しい声じゃ。そしてそれは――。
この二千年、誰も聞いたことのない声じゃった。
「亡道の司。あなたはそう言った。でも――。ふふ。それは、敗北するものの言葉」
清らかなるハープの音色と共にその声の主はやってくる。
ハープを奏でる若く、美しい女性。
天命の巫女さま。
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