ただいま

越知 学

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3章

20話(前半)

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 19度目の9月11日。いつも少女から話を振ってもらうのは申し訳ないため、今回は僕が話題を作ることにした。
「少し聞きづらいことなんだけど、聞いてもいいかな?」
「何でも聞いてください。私に答えられないものなんてありませんから」
 ……本当に何でも答えられそうで少し怖い。
「ご両親はどんな仕事をしているの?」
 それを聞くと、少女は高笑いをした。
「何ですかーそんな恐る恐る聞かなくても、私達の仲じゃないですか。もっと気軽に聞いていいんですよ」
 会社の上肢のような風格で少女は言った。もういっそのこと部長と呼ばせてほしい。
「父は弁護士、母は教育者です」
「へー。僕の知り合いに弁護士はいないからなんだか新鮮だよ」
「そうなんですか?まあ確かに誰でもなれる職業ではないことは心得ています。そんな父を尊敬しています。ただ、帰りが遅いうえに、部屋に籠っていることが多いので、あまり話せないんですよね」
「そうなんだ……。お母さんは?何の教科を教えてるの?」
「母は高校で数学を教えているようです」
 高校教師。教育者であれば道徳や倫理には人一倍厳しそうだが、少女にあんなことを言うということは、それは僕の偏った考えなのかもしれない。
 少女は母の性格について話してくれた。
「母はかなり頑固で、融通がきかないんですよ。これと決めたらなかなか考えを曲げません。芯があると言えば聞こえはいいですが、教育者としてはあまり感心しませんね」
 少女はしっかりと分析している。自分で賢いと言っているのが否定できないくらい頭がいい。
 僕もかなり頑固なところがあるため、少女の母の性格をどうこう言うことはできない。しかし、それでもやっぱりあの発言はいかがなものかと思う。
 僕が難しい顔をしていると、少女がパチンと手を叩いて「そうだ!」と言った。
「今から私の家に行きませんか?」
 少女は名案だと言わんばかりに、ブランコから降りて僕の手を引く。
 ……少女の方から提案するってありなのか?いや、僕が誘うのもそりゃ大問題だけど。
 僕は遠慮しながら言った。
「その……大丈夫なの?君のこともそうだけど、あまり通常と異なることをしていると過去改変が起きちゃうよ?」
「大丈夫ですよ。今の時間父と母がいることはありませんし、ただ家を外から見るだけですから」
 押しにめっぽう弱い僕は「ほら、行きますよ」という少女に引っ張られながら、公園を後にする。
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