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6話
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トンボの群れがせわしなく動き回っているのを窓の内から見てると、天矢がおーいと声を掛けてきた。
「次、君の番だよ」
俺はゆっくりとスマホの画面に目を戻す。今、俺の家で彼とパズルゲームの協力プレイをしている最中である。
「あー俺の分もやっといて」
「それじゃあ協力プレイの意味ないじゃん。君の方が上手いんだからやってよ」
「大丈夫!てっちゃんでもいける!」
「失敗しても怒んないでね」
彼は予防線を張ると、仕方ないと言った様子で、俺のスマホを手に取る。鮮やかな手捌きで指を動かしている。
「てっちゃんも上手くなったもんだねー」
「ドハマりしちゃってね。だからやりたくなかったんだよ」
彼はスマホに目を落としたまま、わざとらしく抑揚をつけて言う。
彼の言う通り、そのゲームは人気があって俺が何度誘っても彼は頑なに断り続けた。「ハマるゲームはしたくない」「世の中の波に吞まれたくない」と言って、一向にしようとしなかった。
痺れをきらした俺は、電話したいからスマホ貸してという嘘をついて、勝手にダウンロードし、チュートリアルを済ませてやった。彼は少し怒ったが、
「一日して慣れなかったら即止めるから」
そう言って、画面を凝視しながら、ぎこちなく手を動かし始めた。
何回か俺が勝手に指導したおかげで、彼は1時間足らずで慣れてしまって、見事ゲームの仲間入りを果たしたのである。
彼は一度始めると突き詰める癖があるので、それからは俺が聞かずとも、どんどん質問してきて腕を磨いていった。
「この形式ムズイんだよなー」「どうしよう」
そんなことをブツブツ言っている彼を横目に、再び窓に視線を向けようとすると、一瞬見ている風景に雲のようなものが出てきて、視界を遮った。すぐにその雲は晴れたが、今まで味わったことのある感覚に俺はひとまず時計を見る。
時刻は19時04分。
次に周りを見渡す。特に変わった様子はない。
すると着信音が流れてきた。その音は俺のスマホから鳴っていた。
「彼女からだよ」
彼が俺のスマホの画面を見せながら言った。
俺は返事もせずにそのスマホを受け取り応答する。
「もしもし」
「………」
返答がない。
「どうしたん?何かあった?」
「……殺した」
その声はやけに低かった。男の声だ。
「誰だよあんた」
「へ……へへ……お前の彼女を殺した……。気分はどうだ?」
殺した?彩を?何言ってんだこいつ。
「彩そこにいるんだろ?誰か知らねえけど早く替われよ」
「だから殺したって言ってんだろ!!もっと取り乱せよ!!」
意味が分からない。
先に発狂した電話越しの男は大きな舌打ちをしたかと思うと、大声で笑いだした。
「次はお前の番だ。明日俺がメールした所に来い。逃げるなよ?」
「は?言ってる意――」
途中で通話が切れた。ほどなくしてメールが届く。
それと同時に再び視界に雲がかかる。それが晴れると、元の風景が見える。
時刻を見ると、17時03分。そしてたった今04分になる。
俺が天矢の手にしているスマホに目をやると、着信音が流れ始めた。
「彼女からだよ」
彼が俺のスマホ画面を見せながら言った。
俺は返事もせずに恐る恐るスマホを受け取り応答する。
「……もしもし」
「………」
「誰だよ」
「……殺した」
「だから誰だって言ってんだよ」
「へ……へへ……お前の彼女を殺した……気分はどうだ?」
「彩をか?意味わかんないんだけど?」
「だからそうだって言ってんだろ!!もっと取り乱せよ!!」
「だから何なんだよお前は!」
「チッ……ハハッ……ハハハハハ!!次はお前の番だ。明日俺がメールした所に来い。逃げるなよ?」
プチッ。ツーツー。
電話が切れる。そしてすぐにメールが届いた。
その内容を確認する。
『19時、○○ビルの地下にてお前を待つ』
味気のない文字が羅列しているのみだ。
しばらく俺が硬直していると、彼が声を小さくして尋ねてきた。
「大丈夫か?」
俺は変に気を遣わせないように、いや、巻き込まないように必死にごまかす。
「何だろうな?彩のやつ、俺という彼氏がいながら浮気か?」
彼は何も答えなかった。少し考えて、
「もうこんな時間だし、僕そろそろ帰るね」
逆に気を遣うようにして、それじゃあと手をふっと挙げながら、部屋を出ていった。
取り残された俺は、一人で思考を巡らせる。
「次、君の番だよ」
俺はゆっくりとスマホの画面に目を戻す。今、俺の家で彼とパズルゲームの協力プレイをしている最中である。
「あー俺の分もやっといて」
「それじゃあ協力プレイの意味ないじゃん。君の方が上手いんだからやってよ」
「大丈夫!てっちゃんでもいける!」
「失敗しても怒んないでね」
彼は予防線を張ると、仕方ないと言った様子で、俺のスマホを手に取る。鮮やかな手捌きで指を動かしている。
「てっちゃんも上手くなったもんだねー」
「ドハマりしちゃってね。だからやりたくなかったんだよ」
彼はスマホに目を落としたまま、わざとらしく抑揚をつけて言う。
彼の言う通り、そのゲームは人気があって俺が何度誘っても彼は頑なに断り続けた。「ハマるゲームはしたくない」「世の中の波に吞まれたくない」と言って、一向にしようとしなかった。
痺れをきらした俺は、電話したいからスマホ貸してという嘘をついて、勝手にダウンロードし、チュートリアルを済ませてやった。彼は少し怒ったが、
「一日して慣れなかったら即止めるから」
そう言って、画面を凝視しながら、ぎこちなく手を動かし始めた。
何回か俺が勝手に指導したおかげで、彼は1時間足らずで慣れてしまって、見事ゲームの仲間入りを果たしたのである。
彼は一度始めると突き詰める癖があるので、それからは俺が聞かずとも、どんどん質問してきて腕を磨いていった。
「この形式ムズイんだよなー」「どうしよう」
そんなことをブツブツ言っている彼を横目に、再び窓に視線を向けようとすると、一瞬見ている風景に雲のようなものが出てきて、視界を遮った。すぐにその雲は晴れたが、今まで味わったことのある感覚に俺はひとまず時計を見る。
時刻は19時04分。
次に周りを見渡す。特に変わった様子はない。
すると着信音が流れてきた。その音は俺のスマホから鳴っていた。
「彼女からだよ」
彼が俺のスマホの画面を見せながら言った。
俺は返事もせずにそのスマホを受け取り応答する。
「もしもし」
「………」
返答がない。
「どうしたん?何かあった?」
「……殺した」
その声はやけに低かった。男の声だ。
「誰だよあんた」
「へ……へへ……お前の彼女を殺した……。気分はどうだ?」
殺した?彩を?何言ってんだこいつ。
「彩そこにいるんだろ?誰か知らねえけど早く替われよ」
「だから殺したって言ってんだろ!!もっと取り乱せよ!!」
意味が分からない。
先に発狂した電話越しの男は大きな舌打ちをしたかと思うと、大声で笑いだした。
「次はお前の番だ。明日俺がメールした所に来い。逃げるなよ?」
「は?言ってる意――」
途中で通話が切れた。ほどなくしてメールが届く。
それと同時に再び視界に雲がかかる。それが晴れると、元の風景が見える。
時刻を見ると、17時03分。そしてたった今04分になる。
俺が天矢の手にしているスマホに目をやると、着信音が流れ始めた。
「彼女からだよ」
彼が俺のスマホ画面を見せながら言った。
俺は返事もせずに恐る恐るスマホを受け取り応答する。
「……もしもし」
「………」
「誰だよ」
「……殺した」
「だから誰だって言ってんだよ」
「へ……へへ……お前の彼女を殺した……気分はどうだ?」
「彩をか?意味わかんないんだけど?」
「だからそうだって言ってんだろ!!もっと取り乱せよ!!」
「だから何なんだよお前は!」
「チッ……ハハッ……ハハハハハ!!次はお前の番だ。明日俺がメールした所に来い。逃げるなよ?」
プチッ。ツーツー。
電話が切れる。そしてすぐにメールが届いた。
その内容を確認する。
『19時、○○ビルの地下にてお前を待つ』
味気のない文字が羅列しているのみだ。
しばらく俺が硬直していると、彼が声を小さくして尋ねてきた。
「大丈夫か?」
俺は変に気を遣わせないように、いや、巻き込まないように必死にごまかす。
「何だろうな?彩のやつ、俺という彼氏がいながら浮気か?」
彼は何も答えなかった。少し考えて、
「もうこんな時間だし、僕そろそろ帰るね」
逆に気を遣うようにして、それじゃあと手をふっと挙げながら、部屋を出ていった。
取り残された俺は、一人で思考を巡らせる。
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