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終章
手紙
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活気の溢れる港街、国随一といわれるハンターギルドの受付に程近いテーブルに三人組の姿があった。二人は太陽光でも反射しそうな程つるりとした頭の筋骨隆々の男で、もう一人はヒョロっとした男というあまりバランスが取れていないと思えるようなメンバーだ。
けれど仲は良いのか始終にこやかに会話している。
「オメエよ、出てくるの早すぎねえか?」
「そうよ、二年はかかるっていってたじゃない」
「そんな人を服役中の囚人みたいな感じで言わないでくださいよ。これでもめちゃくちゃ頑張ってんすからね⁉︎」
アルフレッド救出作戦から早数ヶ月、一時期流れていた王女の噂は今ではすっかり消え失せてありふれた日常が繰り返される今日この頃。何故か王城にて二年は出て来ることはできないと語っていたタリヤが今オヅラとマヅラの前にいた。
「で、なんでだ?」
グラスに注がれた酒に口を付けながら先を促すオヅラに恨めしげな目線を送ったタリヤだが短く息を吐くと説明を始めた。
曰く、逃げる前と後でタリヤの魔力量が爆発的に上がっていることが発覚しありとあらゆる角度から研究を進めたところどうやら魔物との実践経験がものをいっているということが判明。またタリヤは以前S級の魔物との戦いで一度限界を突破しているから余計に、という結論が出た。
即ち、引きこもっていても魔力量も魔術の精度も上がらないということが魔術協会の中で広まり今空前の「可愛い子にも旅をさせよブーム」らしい。
「でもそれならタリヤちゃんもう外出る意味ないんじゃないの?今んとこ歴代最強なんでしょ、魔力量」
「そこはうまいことジジイ達を言いくるめました」
無邪気にピースサインを作って笑うタリヤに二人は笑い、数ヶ月ぶりの再会にグラスを鳴らした。
「あ、いたいた!届きましたよー!」
ギルドの奥の部屋から現れたマルルゥがキョロキョロと辺りを見渡し、テーブルで酒盛りをしている三人を見つけて声を掛ける。手には一通の手紙が持たれており、その言葉にタリヤ以外の二人がいち早く反応した・
「お、来たか」
「早くお渡しマルルゥ!アルフレッド様から熱い愛のメッセージがあるかもしれないでしょ!」
「あはは、それだけはないですねー」
背の低いマルルゥが椅子に飛び乗るように座ってテーブルに手紙を置く。それにタリヤは不思議そうに首を傾げた。
「…アルフレッドさんから手紙っすか?」
「いや、ラファエルからだな。アルフレッドが手紙なんか出すかよ」
「ですよねー」
マルルゥが丁寧に手紙の封を切っている姿を見ながらふとタリヤが随分前に城で聞いた噂を思い出してなんの気なしに問いかける。
「そういえばアルフレッドさんの妙な噂聞いたんすよ。なんか本当は王女に囲われてたんじゃなくてお姫様ばりに綺麗な女性を囲ってた、みたいな噂」
ダァン!マヅラが強くグラスをテーブルに叩き付けた。
「そりゃラファエルだ」
「え」
「タリヤ、お前引き離されてた好きなやつと再会できたらどうする?」
「え」
困惑しているタリヤを他所にマヅラは悔しそうにどこからともなく取り出した白いハンカチを咥えているし、マルルゥは我関せずと先に手紙を読んでいた。
「まあ燃え上がるよなぁ。しかもそん時ラファエルはすっぴんでお前のアイディアで女装してたっていうじゃねえか。よくもまあタイミングが合ったもんだよ。逃げ出した二人は噂好きの店主がいる宿屋に泊まってそのまま大盛り上がりだ。アルフレッドは新聞で顔が割れてるからな、噂の広がり方はそりゃあすげえもんだったぜ。おかげで王女の男好きの噂は綺麗さっぱりなくなって、今じゃ平和そのものだ」
ラファエルとアルフレッドが屋敷に戻るよりも前にオヅラとマヅラはローデン家に戻ってきていた。中々帰ってこない二人を案じて街に情報を集めにいったオヅラが全てを悟ったような顔で帰って来て街に流れている噂を洗いざらい吐くとマヅラは発狂しガランドは爆笑しミゲルとマリアは筆舌に尽くし難いほど複雑な顔をしていた。
まあだがそんな騒動もあって進展したこともある。
「あ、今回ラファエルさん達北の方に行ってるみたいですよ!」
まず一つ目、ラファエルとアルフレッドは再び冒険を始めた。ラファエル曰く、今度はちゃんと満喫するそうだが、その真意はオヅラにはわからない。
「…アルフレッド様のことも書いてあるんでしょうね?」
「まあこれ報告書みたいなもんですからね、Sクラスハンターさんの仕事ぶりもちゃんと書いてますよ」
二つ目、アルフレッドは今回のことをきっかけにギルド直轄のハンターになった。こう聞くと今までと変わらないように思うが今やハンターギルドは王家に次ぐと言われる権力を保持している。そこに正式に所属することによって稼ぎ頭であるアルフレッドを独占されないようにとのギルドの意向だった。
とはいってもアルフレッドが強すぎる為ほとんど変わっていない。ただ所在をはっきりとさせるために報告書という名の手紙を毎度ギルドに送るようになっている。
「…何よこれほとんど惚気みたいなもんじゃないのよムッキィイイイイイイ!」
そして三つ目、これが一番大きいかもしれない。
ラファエルとアルフレッドは正式に交際を始めた。これも今までと変わらないだろうと思うかもしれないがそうではない。二人は正式にローデン家の当主であるミゲルに認められて恋人関係にある。何やら将来についても決めているらしいが、そこまで首を突っ込むほどオヅラという男は野暮ではない。
「…まあ万事丸く収まったってことじゃねえか。お姫様もお前の占い通りになってんだろ?」
悔し涙を流しながら酒を煽っていたマヅラがふん、と鼻を鳴らして豪快に背もたれに体を預けた。
「当たり前でしょ。アタシを誰だと思ってんのよ」
そして勢いのままマヅラはその場で立ち上がりまるで彫刻のモデルのようなポーズを取った。ちょうど灯りが頭部に当たって反射して神々しい。
「アタシは今や王家御用達のスーパー占い師、瓦割り占いのゴッドマロンよ‼」
「なんか強そうっすね」
「まあやってること瓦割りだしな、見た目は強えだろ」
「お黙りアンタ達ぃ!」
賑やかな三人を周りは怪訝な顔をして様子を窺っているがマルルゥは楽しそうに口角を上げて手紙を読む。
どんな場所にいてどんな魔物を倒してどんな素材が取れるのか、そんなことが記されている手紙の中でチラホラと見えるラファエルのアルフレッドに対する滲み出る好意にくふふ、と声が漏れた。
「想いが実ってよかったですね、アルフレッドさん」
マルルゥは丁寧に手紙を閉じてまた封に入れる。そして息を吸ってギルド職員の顔になると声を張り上げた。
「さあさあハンターの皆さんお仕事ですよ!じゃんじゃん働いてくださーい!」
けれど仲は良いのか始終にこやかに会話している。
「オメエよ、出てくるの早すぎねえか?」
「そうよ、二年はかかるっていってたじゃない」
「そんな人を服役中の囚人みたいな感じで言わないでくださいよ。これでもめちゃくちゃ頑張ってんすからね⁉︎」
アルフレッド救出作戦から早数ヶ月、一時期流れていた王女の噂は今ではすっかり消え失せてありふれた日常が繰り返される今日この頃。何故か王城にて二年は出て来ることはできないと語っていたタリヤが今オヅラとマヅラの前にいた。
「で、なんでだ?」
グラスに注がれた酒に口を付けながら先を促すオヅラに恨めしげな目線を送ったタリヤだが短く息を吐くと説明を始めた。
曰く、逃げる前と後でタリヤの魔力量が爆発的に上がっていることが発覚しありとあらゆる角度から研究を進めたところどうやら魔物との実践経験がものをいっているということが判明。またタリヤは以前S級の魔物との戦いで一度限界を突破しているから余計に、という結論が出た。
即ち、引きこもっていても魔力量も魔術の精度も上がらないということが魔術協会の中で広まり今空前の「可愛い子にも旅をさせよブーム」らしい。
「でもそれならタリヤちゃんもう外出る意味ないんじゃないの?今んとこ歴代最強なんでしょ、魔力量」
「そこはうまいことジジイ達を言いくるめました」
無邪気にピースサインを作って笑うタリヤに二人は笑い、数ヶ月ぶりの再会にグラスを鳴らした。
「あ、いたいた!届きましたよー!」
ギルドの奥の部屋から現れたマルルゥがキョロキョロと辺りを見渡し、テーブルで酒盛りをしている三人を見つけて声を掛ける。手には一通の手紙が持たれており、その言葉にタリヤ以外の二人がいち早く反応した・
「お、来たか」
「早くお渡しマルルゥ!アルフレッド様から熱い愛のメッセージがあるかもしれないでしょ!」
「あはは、それだけはないですねー」
背の低いマルルゥが椅子に飛び乗るように座ってテーブルに手紙を置く。それにタリヤは不思議そうに首を傾げた。
「…アルフレッドさんから手紙っすか?」
「いや、ラファエルからだな。アルフレッドが手紙なんか出すかよ」
「ですよねー」
マルルゥが丁寧に手紙の封を切っている姿を見ながらふとタリヤが随分前に城で聞いた噂を思い出してなんの気なしに問いかける。
「そういえばアルフレッドさんの妙な噂聞いたんすよ。なんか本当は王女に囲われてたんじゃなくてお姫様ばりに綺麗な女性を囲ってた、みたいな噂」
ダァン!マヅラが強くグラスをテーブルに叩き付けた。
「そりゃラファエルだ」
「え」
「タリヤ、お前引き離されてた好きなやつと再会できたらどうする?」
「え」
困惑しているタリヤを他所にマヅラは悔しそうにどこからともなく取り出した白いハンカチを咥えているし、マルルゥは我関せずと先に手紙を読んでいた。
「まあ燃え上がるよなぁ。しかもそん時ラファエルはすっぴんでお前のアイディアで女装してたっていうじゃねえか。よくもまあタイミングが合ったもんだよ。逃げ出した二人は噂好きの店主がいる宿屋に泊まってそのまま大盛り上がりだ。アルフレッドは新聞で顔が割れてるからな、噂の広がり方はそりゃあすげえもんだったぜ。おかげで王女の男好きの噂は綺麗さっぱりなくなって、今じゃ平和そのものだ」
ラファエルとアルフレッドが屋敷に戻るよりも前にオヅラとマヅラはローデン家に戻ってきていた。中々帰ってこない二人を案じて街に情報を集めにいったオヅラが全てを悟ったような顔で帰って来て街に流れている噂を洗いざらい吐くとマヅラは発狂しガランドは爆笑しミゲルとマリアは筆舌に尽くし難いほど複雑な顔をしていた。
まあだがそんな騒動もあって進展したこともある。
「あ、今回ラファエルさん達北の方に行ってるみたいですよ!」
まず一つ目、ラファエルとアルフレッドは再び冒険を始めた。ラファエル曰く、今度はちゃんと満喫するそうだが、その真意はオヅラにはわからない。
「…アルフレッド様のことも書いてあるんでしょうね?」
「まあこれ報告書みたいなもんですからね、Sクラスハンターさんの仕事ぶりもちゃんと書いてますよ」
二つ目、アルフレッドは今回のことをきっかけにギルド直轄のハンターになった。こう聞くと今までと変わらないように思うが今やハンターギルドは王家に次ぐと言われる権力を保持している。そこに正式に所属することによって稼ぎ頭であるアルフレッドを独占されないようにとのギルドの意向だった。
とはいってもアルフレッドが強すぎる為ほとんど変わっていない。ただ所在をはっきりとさせるために報告書という名の手紙を毎度ギルドに送るようになっている。
「…何よこれほとんど惚気みたいなもんじゃないのよムッキィイイイイイイ!」
そして三つ目、これが一番大きいかもしれない。
ラファエルとアルフレッドは正式に交際を始めた。これも今までと変わらないだろうと思うかもしれないがそうではない。二人は正式にローデン家の当主であるミゲルに認められて恋人関係にある。何やら将来についても決めているらしいが、そこまで首を突っ込むほどオヅラという男は野暮ではない。
「…まあ万事丸く収まったってことじゃねえか。お姫様もお前の占い通りになってんだろ?」
悔し涙を流しながら酒を煽っていたマヅラがふん、と鼻を鳴らして豪快に背もたれに体を預けた。
「当たり前でしょ。アタシを誰だと思ってんのよ」
そして勢いのままマヅラはその場で立ち上がりまるで彫刻のモデルのようなポーズを取った。ちょうど灯りが頭部に当たって反射して神々しい。
「アタシは今や王家御用達のスーパー占い師、瓦割り占いのゴッドマロンよ‼」
「なんか強そうっすね」
「まあやってること瓦割りだしな、見た目は強えだろ」
「お黙りアンタ達ぃ!」
賑やかな三人を周りは怪訝な顔をして様子を窺っているがマルルゥは楽しそうに口角を上げて手紙を読む。
どんな場所にいてどんな魔物を倒してどんな素材が取れるのか、そんなことが記されている手紙の中でチラホラと見えるラファエルのアルフレッドに対する滲み出る好意にくふふ、と声が漏れた。
「想いが実ってよかったですね、アルフレッドさん」
マルルゥは丁寧に手紙を閉じてまた封に入れる。そして息を吸ってギルド職員の顔になると声を張り上げた。
「さあさあハンターの皆さんお仕事ですよ!じゃんじゃん働いてくださーい!」
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