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第一章 二人の旅路

馬鹿と言う方が馬鹿※

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 外は明るいが後二時間もしないうちに日が落ちて辺りは夕暮れ時になるような時間、まだ風呂に入るには早すぎる時間とも取れなくもないが二人は旅での汚れを丁寧に洗い流し男二人が入ってもまだ少し余裕のある浴槽に体を沈める。

「はー…最高だあ…」

 アルフレッドの足の間に陣取って背中を胸板に預けて気の抜け切った声で呟くラファエルに口角が上がるのがわかった。湯船に浸かり切れていない白い肩に湯を掬って掛けていれば青い目がこちらを向いて笑みを浮かべると少しだけ細くなった。

「アルフレッドって本当面倒見がいいよね」
「どっかの誰かさんが常に目を光らせとかねえと何しでかすかわかったもんじゃないんでね」
「しでかす度にきちんとファローしてくれるところがすごいと思うよ」
「そう言うなら少しは落ち着け」
「それは無理かな」

 悪びれもせず舌すら出して戯けて見せる様子にアルフレッドは片眉を跳ねさせて湯でしっかりと暖まった左手で柔い頬の肉を軽く抓る。痛みが伴うほど強くしているつもりはないがラファエルは大袈裟に痛がるフリをする。

「こんなの撫でてるのと一緒だろうが」
「ひあう」

 違うと言いたいのだろう。けれどアルフレッドが頬を抓っているものだから言葉になっておらずそれがおかしくて笑うと拗ねたように眉を寄せたラファエルが頬に触れる手を掴んで離させる。それから仕返しのつもりか体ごとアルフレッドの方を向いた。

 視線が絡み合って、どちらともなく顔を寄せ合って唇が重なるのとアルフレッドの太い腕がラファエルの細腰を引き寄せるのは同じタイミングだった。
 旅を始めた頃と比べるとすっかり男の体になったとは思うが手のひらに感じる細さは初めて組み敷いた日から変わらない気もするし、互いの肌が馴染むのはあの日よりもずっと早い。ただ触れ合う口付けが顔の角度を変えて啄むものになり、それから舌を絡め合うまで時間は掛からない。

 ラファエルの脚がアルフレッドの腰に跨るようにするからほんの少しだけラファエルの方が視線が上になって、いつもは見下ろす顔が少し上にあるのが新鮮だった。
 そうはいってもこの景色ももう何度も見ているのだが。

「…ん…は、今日は…シない」
「…ん?」
「シない、って…んぅ…ッ、ぅ、あ」

 口付けの合間に吐息のような声で訴えるラファエルを薄目を開けて見つめながら聞こえない振りをして舌を更に奥へと捩じ込む。異物の侵入に震えた小さな舌を逃げる前に絡め取って吸い上げてやれば腕の中に収まる体は素直に跳ねて刺激を拾う。
 本当に嫌ならばいつでも逃げられる力加減なのにラファエルは逃げず、寧ろ体から力を抜いてアルフレッドに寄り掛かるものだから男はすぐに調子に乗ってしまう。ラファエルがすぐに蕩けてしまう上顎を擽り、肩を跳ねさせて逃げようとする体を片腕で抱き込んで押さえ込み、不埒な右腕が白く滑らかな肌を撫でて昨日も散々愛でた胸の突起へと触れる。

 普段軽口を言い合う唇から甘美な吐息が漏れて唇が離れた頃には互いの中心は昂っていて、これを鎮めずに風呂を上るなんて有り得ないと、視線でそう訴えると腰に跨った天使のようだとよく比喩される美貌を色欲に濡れさせたラファエルが悔しそうに表情を歪めた。

「アルフのばか」

 真っ赤な顔で睨んでくるラファエルに口角が意地悪く上がったのが自分でもわかった。

「馬鹿って言う方が馬鹿なんだと」

 気が変わらないうちにとラファエルの体を抱えてバスタブの縁に座らせるように降ろすとアルフレッドはその白い脚の間に体を捻じ込んで無理矢理大きく開かせる。ラファエルはこの後されることが予想できたのか唇を震わせながら「それ嫌だと」と訴えるがアルフレッドがそれを聞き入れる筈もなく、程なくしてラファエルは快楽の坩堝へと叩き落とされる。清潔な水場で、すぐ側にはベッドも有り、これから三日間泊まるとなれば遠慮はいらない。嫌々と泣きもうやめてと懇願するラファエルをその度に宥めすかしてその度に貫き、そうして意識を飛ばしてベッドに沈み込んだラファエルを見てアルフレッドは明らかに「まずい」という顔をして汗で濡れた髪をかき上げた。

「……やりすぎた」

 宿屋に来たのが昼過ぎで、今はもう窓の外から酔っ払いの声も聞こえなくなった程の深夜だ。未だに余韻で身体を震わせるラファエルの体には夥しい程の執着の痕跡があって、腰を上に抱えればすっかり赤く腫れた蕾からとろりと白が流れ出すのだろう。
 同じように自分の背中や肩にも引っ掻き傷や噛み跡があり、お互いに求め合った結果なのだがそれはそれとしてやり過ぎたと再度呟き、ぐったりとしたラファエルを抱き上げて浴室へと連れて行く。

 互いの身体を清めてベッドも清潔にしてそうして横になり、朝になるまで細い身体を抱き込んで寝るのが日課なのだが明日起きた時のラファエルの反応を想像し、アルフレッドは眉を寄せるが罰は甘んじて受けようと目を閉じて眠りに落ちた。
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