炎 - En -

奏 -sou-

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出来損ないなりの見栄 03

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「次に、風神様どうぞ、前へ」 
「ティさん、ちょっといい?」

挙手した風神様のことをみんな、みたんだ。

「いかがなさいましたか?」
「私あとでいいわ。」 
「それは、どう言う意味でしょうか。」
「森の主に先に選ぶ権限あげるって言ってるの」

足を組み腕まで組んで一歩も動かない姿勢の風神様をみて司会の人は、

「…サラ様、お聞きになりましたね。風神様からのご好意は如何なさいますか?」
「あぁ、せっかくだから風神様のご好意に甘えようか」

そういう声は大層楽しそうだが顔を見ると何の表情も見えない森の主とも言われるあのお方に平池(ひらち)神社の神は

「森の主よ、守護神などいらないと言わなかったか。」

そうすかさず突っ込みをいれた。

その言葉に

「あぁ…そうだな。そのつもりだったが気が変わった。」

そう言って僕達のことをみてた。

横をちらりとみれば鴉も狛犬もソワソワしていたけどその目は絶対自分が選ばれるっていう目をしてて自信と輝きに満ちていた。

ふと優しい香りが濃くなった気がして目線を前に戻したら、いつの間にか森のあるじ様が目の前に立っていたんだ。

尻尾の毛の先から見える森のあるじ様

鴉や狛犬の方にも歩いていって二人は森のあるじ様に軽くぺこりって挨拶をしてた。

僕はその時丸まってるだけではなくて、ちゃんと挨拶するべきなんだって気づいた。

「サラ様、お決まりになりましたか?」
「あぁ、」
「では、その守護神の前にお立ちください」

司会の人のその声に、森のあるじ様に選ばれるなんていいなぁ。って落ち込み顔を下にしていた僕の前に濃く香る森のあるじ様の匂いがした。

「…おい、森の主よ、それでいいのか?」

問いかける男の声が聞こえる。
そしてざわざわした音が聞こえてくる。

ゆっくり顔を上げれば僕を見つめてる葵く澄んだ瞳と目が合った。

「やっと目が合ったな、私の名はサラという。…貴方の名が知りたい。教えてはくれませんか?」

さっきまでざわざわしていたはずなのに時が止まったかのように音が聞こえなくなった

尻尾で顔を隠すことすら忘れて森のあるじ様を見つめていたら

「…名前は、ないのですか?」

と、森のあるじ様に問いかけられてしまい
慌てて、首を縦にふる。

静かな沈黙に、僕はもしかしたら森のあるじ様が幻滅してしまったんじゃないかと泣きそうになりながら見つめていたら、

「なら、炎、貴方の名を炎と付けましょう。」

ポンポンと頭を撫でなら、どうだ?と聞いてきた。

はじめて、僕がもらった名前は、えん

親から名を呼ばれた記憶なんてないし、いつも学園で自分の物っていう印は匂いか種族名が基本だったけどちゃんと名前を貰ってる皆を羨ましいって感じてたし、いつも結果が良くなかった僕に名前のようにドベや出来損ないって言ってくる奴らが多かった。

いつかは、ちゃんと自分の名前が欲しいって思ってた。まさかのまさか森のあるじ様がつけてくれるなんて幸せ過ぎて夢なんじゃないかって思う。

自分の頬をペチンって叩いてみる

「…夢じゃない」
「ふっ、はは!面白い、益々気に入った。炎、私についてきませんか?」
「は、はいっ!!」

初めて見せてくれた笑顔に僕も涙が出るほど嬉しくなって差し出してくれた手を越えて胸にそのまま飛び込んだん、だ。

「なっ、ナンバー5!場をわきまえなさい!」

司会の人に言われて、やっちゃった。って思ったけど森のあるじ様はくすくす笑いながら僕を腕に抱えて「気にしなくていい。」と背中を撫でてくれた。

周りなんてどうでもいい。
このお方に一生ついていくんだ。って

ギュッと森のあるじ様の服を掴んで心の中で誓った

「風の神よ、異議はありますか?」
僕を抱き、立ち上がった森のあるじ様は風神様と言われる女性を見ながら問いかけてたんだ。

「いいえ、ないわ。」
「そうか、なら、次は風がm「お待ちください!!」

森のあるじ様の言葉を遮ったのは今にも泣きだしそうな表情で、森のあるじ様を見つめている、鴉だった。
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