炎 - En -

奏 -sou-

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出来損ないなりの見栄 02

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その一瞬の風はとてもいい匂いがして落ち着きすら感じたんだ。

顔を上げると同時に今まで空いてあった席に細身でフードを被ったまま全身を覆う布は真っ黒で少しだけ見える顔のパーツが整ってるように見える、そんな誰かがこっちに向いて座っていた。

周りがざわめきかけている中、司会の人が

「サラ様、到着が遅すぎます。」

冷たく苛立ってるような声でフードの人に声をかける。

「そのようだな、」
「そのようだな。じゃ、ございません。殆ど今日の進行が終わり残すは今後一生人生を共にする守護神を選ぶ大事な時間だけとなりました。また如何に大切な日かということを私めはあれほどサラ様に申し上げましたが、「ティ、後で小言はきく。前も行ったが私は守護神など必要ないと言ったはずだ。それより、遅くないか、なぜまだ終わっていないんだ」

「…それは、彼らの能力をしっかりと見てもらった上で、と…あとは、目の前のナンバー5が元の姿に戻れば以上で終了するところです。」
「そうか。」

「失礼ですがサラ様、貴女の格好は不審者その者のようです。その上に被られてますお召し物を脱いではいただけませんか。」

小さくため息をついた司会の人にそう言われ渋々といったように身体全体をおおっていた服を脱ぐ前にパーカーを脱いだんだ、そこから露になる顔をみて僕はその人のあまりの美しさに心を一瞬で奪われたん、だ。

「それではお待たせいたしました。サラ様が揃ったところで、ナンバー5、最後にどうぞ。」

瞬きを忘れてその人をずっと見とれていた僕に、どうぞって司会の人に言われてハッとなったけど狐の姿なんて見せたくなくて僕は中々元の姿に戻らないでいたんだ。

「ナンバー5、聞いていますか?」
そんな僕に再度呼びかけてくる司会者

周りの冷ややかな目が見なくても僕に突き刺さってるように感じて、サラ様と言われているあるじ様にこんな姿みせたくないけどずっとこのままでいるわけにもいかず変化を解いた。

そんな僕の姿をみて、

「なぜ、このようなモノが…」
「だと思った。」

心の声が溢れるようにボソリって言われた声が聞こえたんだ。

きっと目の前に座ってるあの人も僕のこの姿をみて幻滅してるん、だ。そう思うと尚更消えたくなったしその場を動くことすら出来ず尻尾で体をできるだけ隠して縮こまっていると

「さて、以上となります。守護神の皆様お疲れ様でした。では、次に早速ですが主となる皆様はどの守護神になさいますか?今のうちに決めておいてください。また、他の継承者様と守護神被りが発生した場合は、継承者様のパーソナル情報を基に守護神と合う方に決めさせていただきます。」

尻尾の隙間からあのお方が誰を選ぶんだ、ろうって思いながら見ていたら、ふと、目と目が合ったような気がして慌てて尻尾に顔をおしつけたんだ。

「では水神様、お決めになった守護神の前に」
「はい」
「次に、あわた川の主様、お決めになられた守護神の前に」
「……」
「御二方ありがとうございます。どうぞ水神様とあわたの主様は席へお戻りください。」

二人が席に戻ったのを確認後、司会の人が

「どうやら被っておられないので、継承者様に指名された、守護神たちは主になる継承者様の後ろで人型になり待機をしてください。」

 そう指示をだしてきて二人は力ずよく

「「ハッ!」」って言って素早く人型になって
それぞれのあるじ様の後ろに立っていたんだ。

残ったのは、鴉と狛犬と僕
次に指名されるあるじ様って誰なんだろう

尻尾の隙間から、周りをチラチラみてみる。


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