騎士とお嬢様。

奏 -sou-

文字の大きさ
上 下
45 / 58
最終章

02

しおりを挟む
「そう暴れるな」

笑いながら、太もものつけ根を触れていた手をドレスから出し両手を使って器用に私を自分と向き合うようにし、騎士の膝に跨いで座る状態で体を起き上がらさせられる。

「騎士、違うわ」
真顔で訴える。

「…何がだ?」
「私は椅子に座りたいの」
「座っているだろ?」

本当に、何を言ってるの。

「…貴方は椅子なの?」
「ふっ、サフィの椅子か喜んで承ろう」

悦ばないでちょうだい。
眉間のシワが増えそうよ。

「いいえ、結構よ。それより私とてもはしたない格好をさせられていることになるのだけど、これは私を辱めているとは思いませんか?ユーグス王子」

騎士と言わず、王子と言ったのは私の言葉を受け入れて実行してくれない騎士の態度に対するイヤミ

「…サフィから王子と呼んでもらえるとはな、新鮮で嬉しい限りだ。」

嘘でしょ、なんで喜ぶのよ!

「で、何を話したい?」

私の腰をガッチリ両手でホールドし軽く首を傾げて聞いてくる騎士から雄のフェロモンだだ漏れで、怯みそうになるけど流されるわけにはいかないのよ。と1度目を閉じ胸に手を当て深呼吸する。ゆっくり瞼をあけて騎士と目線を合わす。

「これから幾つか質問するから、答えて頂戴」
「あぁ」

「騎士が私を見つけた時には黒ずくめの男達はいなかったの?」
「…あぁ」

一瞬だけど目線を逸らし、間のある返信

「そう、騎士は確かあの日の数日前から姿を急に見せなくなっていたと思うのだけど、何処にいたの?」
「ここに居た」
「何故、私の居場所が分かったの?」
「…聞いていた」
「なにを?」
「お前が、あの日嫁ぐことを」
「それだけで、場所が分かったの?」
「あぁ、アイツの御者が迎えに行くことを聞いていたから」

リヴォルノ王国はエドウィー王子の国よりもいくつも向こうにあり、領地は広いもののこの国からデン王国まで三日三晩はかかると聞いたことがあるわ。
それも馬に乗った状態での話

あの日何者かに背後から殴られて気絶をした時、確かに黒ずくめが二人蚊帳の外の様に見ていたのは知っていた。それが本当に黒ずくめなのかしら、殴られた位置もすぐに気絶するポイントを目掛けていたみたいだし、そんなことがあの流れで的確に出来る連中ではないと思う。

そして気絶した私を発見したというのなら、黒ずくめの男達はどこへ行ったの?私が目的なのに置いて消えるはずがないわ。

となれば、考えられるのは主と言われた男が騎士だったのか、発見したといいながら本当はあの男達と戦ってくれたのか。…後者であって欲しい。

「誰に?」
「…サフィ、俺を疑っているのか?」
「何を疑うの?」
「俺がお前を襲わせた黒幕なんじゃないかと、そう言っているように聞こえる」

急に私の腰に回してる腕に力を入れて、抱きしめられ驚く。

これじゃあ、騎士の表情が見れない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?

ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。 そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。 彼女に追い詰められていく主人公。 果たしてその生活に耐えられるのだろうか。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...