始まりと終わりは君

奏 -sou-

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1869年10月13日

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1869年10月13日

二度目の人生は、面白味も何もなく始まり彼女に助けられたことすら、いらぬことだと思う日々。

病院から帰った次の日から海辺の周りを毎日朝日が昇ったら彼女がいないかと探し出かける。

どんな天気であろうと敷地内である海辺をくまなく探してみるが、彼女は見当たらない。

そのたんびに、悲しくもなりムキにもなって、『もしかしたら今日は偶然彼女と出会えたりするのでは』と小さな期待と一緒に会えない分、募っていく彼女への思いを胸に、今日もまた海辺へと行き、会えなかったことにガッカリしながら夕方家に帰れば、珍しく病院で意識のない時に一度だけ来たと記載されていた日を省けば、余裕で五か月以上にわたり会うことのなかった父が食卓の席に座っていた。

ただ単に、家族で食事などあり得ることのない食卓で機嫌のいい父がいるということは“何か”があるんだろうと心して、またこれも珍しくそろった兄弟と母と数か月、否、数年ぶりの家族全員で囲む食卓になった。

料理が、フルコースで一つずつ運ばれて、はじめは何気ない会話を、そしてメインディッシュになったとき、話も本題になった。

「どうだ、お前ももうよい歳だ、今、提供を結んでいる企業の娘さんでな、とてもお上品でお淑やかで品のある娘さんだ。この前、御一緒に食事をした時にあちらの御嬢さんもそろそろ嫁ぐにはよいお歳だということでな。とはいえど、お前よりいくつか年下だが…よい、話だとは思わんか。」

今時珍しくもない、政略結婚を父はどうやら望んでいる。

息子である僕の名を確かに言えるのか怪しいところをみると、僕の年齢などうろ覚えなことが読み取れる。


相手側は提供を結ぶにあたって、これからの信頼を崩さないための、ようは人質に年上の顔も見たことのない男のもとへ、娘を嫁がせるのだろう。

最後、疑問形で話を振ってこないあたり結婚しろと断言されたも同然だ。

父と母のような政略結婚は嫌だと思っていたがまさか自分に降りかかることになろうとは、まだ24歳と事業を継ぐ人間でもない次男の僕が何故とは思うも僕もその一人になってしまった。

もし彼女にもう一度会えたのならこんなバカげたこと他の兄弟に譲ってしまうものだが、彼女に再び会うことすら叶わない僕には正直政略結婚などどうだっていいのが事実なところだ。

僕も冷えた考えをするようになったんだと思うと自分に冷えた鼻から抜ける笑いがでた。


僕の有無すらも聞かず食事が終わると即座に仕事場へと消えていった父


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