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第156話 神が降臨された日

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「奴等を止めろぉぉぉ!!このままでは城が崩壊するぞ!!」

帝国魔法部隊の隊長フラベルトが号令をかける!!

帝国魔法部隊は300名の魔法力の選りすぐりのエリートを集めた帝国屈指の集団である。

接近すれば豪剣ガインの餌食になる為に遠距離からの魔法攻撃に切り替えたのだった。しかし300人から放たれる各属性の魔法攻撃がカトプレパスの障壁に完全に防がれていた。

「フラベルト隊長ぉぉぉ!!駄目ですぅぅ!!あいつ等に魔法が届きません!!恐らく強力な対魔法結界を展開していると思われます!!」

フラベルトは弱気な部下の胸ぐらを掴み鼻が当たる距離まで詰め寄る!!

「馬鹿野郎ぉぉぉ!!諦めるなぁぁぁ!!どんな結界だろうと限界がある筈だ!!撃ち続けろぉぉぉ!!帝国魔法部隊の意地を見せろぉぉぉぉ!!」

「は、はいぃぃぃぃ!!!」



「カトプレパス君!大丈夫?」

「主様。心配ありがとうございます!全く問題ありません!この程度の魔法なら主様達の魔法に比べたら微風みたいなものです!」

「ふふ。さすが幻獣ね!もう少し頑張ってね!」

「はい!頑張ります!!」

カトプレパスが頬を赤らめてサリアに笑いかける。

そしてアンリルは索敵を展開してドルビナ皇帝の行き先を見ていた。するとドルビナ皇帝は出口に向かう事なく城の地下へと向かっていた・・・

(地下に逃げ込んだ・・・?避難通路があるのかも・・・ん?・・・違う・・・微かに・・弱いけど5つ・・何をするつもりかしら・・・でも・・取り敢えず全員避難したようね。)

アンリルは城に人が居ないのを確認すると徐に指輪を一つ外し魔法攻撃を中断した。

「やっと避難が終わったみたいですね。」

「そうよ!ドルビナ皇帝は地下に逃げ込んだから大丈夫よ!さて!仕上げよ!久しぶりに詠唱しようかしら!」

アンリルは深く息を吸うとどっしりと腰を据え大地を踏み締める。今までの爆音と破壊音が止み静寂が訪れ嵐の前の静けさのように緊張感が高まる・・・

「・・フ、フラベルト隊長・・・突然、こ、攻撃が止みました・・・どうしたんでしょうか・・・?」

「あぁ・・そうだな・・・だが嫌な予感する・・こ、攻撃が止んだのに・・何だこの緊張感は・・・」

フラベルトの肌は寒気を感じる程の魔力の流れを感じ取り小刻みに震えていた・・・そしてその予感は的中する事になる・・・静寂の中で大賢者アンリルの詠唱が響く・・・


「炎に集え大気の力・・・炎に纏わり爆炎と化せ。爆炎に集え大地の力・・・爆炎に纏わり獄炎と化し・・・」

アンリルはカトプレパスの防御の中で魔力を練り込むように詠唱を始めた。すると魔法隊隊長フラベルトの表情が徐々に驚愕の表情へと変わっていく・・・

「おいおいおいっ!!う、嘘だろ・・・あ、あれは、まさか・・三重詠唱〈ボルケーノストーム〉!?勇者パーティーの魔法使いメルバリア様の切り札と言われた魔法だぞ・・?!」

「そ、そんな・・・た、隊長・・・それに・・お、おかしいですよ・・何ですかあの魔力は・・何が違います!!そ、それにまだ攻撃体制に入っていません!!詠唱が続いています!!い、嫌な予感がします・・・」

そして嫌な予感は的中する・・そして更にアンリルの詠唱は続く・・・

「大いなる光は聖なる光・・獄炎を昇華し聖炎へと・・・」

「・・・よ、四重・・詠唱・・・ば、馬鹿な・・・に、人間で四重詠唱?!この世界で四重詠唱を成したのは初代魔王の切り札〈ダークヘルフレア〉だけだぞ・・・」

フラベルトは驚きのあまり脱力しアンリルを見つめていた。

「た、隊長!!何とかしないと!!あんな魔法使ったらこの辺り一体が無くなります!!隊長ぉぉぉぉ!!」

「・・・もういい・・お前も分かっているはずだ。俺達の力じゃあいつ等には敵わん・・それにあいつ等は己の正義のもとにここにいるんだ・・・大きな声では言えないがいつかはこんな日が来ると思っていた・・それに・・見てみたい・・・俺の知らない未知の魔法を・・・」

「た、隊長・・・」

フラベルトの中でなぜかは分からないがアンリル達を信頼している自分がいた。わざわざ皆の避難を待ったアンリル達がこの帝都ごと消す訳が無いと・・・そして魔法に携わる者としての未知の魔法への興味が止まらなかった。

そして更に詠唱は続く・・

「天界の門より来たるは日輪の輝き・・聖炎と共に全てを無に帰せ・・・」

「ご、ご、五重・・・詠唱・・・も、もう俺達の魔法が幼稚に思える・・・く、来るぞ・・」

アンリルは目を見開き正面に手をかざすと目の前に王宮を飲み込める程の巨大な黄金の門がが現れる!

「あ・・あ・・・あれは・・・天界の門・・か・・・お、御伽話で聞いた事がある・・”天界の門から溢るる光は全てを飲み込み浄化する”・・・大賢者アンリル・・・お前は神か・・・」
 
フラベルト達は力無く膝を付きペタンと座り込んだ・・・

アンリルが準備が終わったとサリアにアイコンタクトで伝えるとサリアはカトプレパスの肩に手を置く。

「カトプレパス君!君の出番よ!狙いは王宮のみ!他の建物や人を魔法の余波から守ってね!!」

「はい!アンリル殿の魔法は強烈だから全力で行きます!!」

そう言うとカトプレパスは少年の姿から巨大な水牛のような姿へと変貌する。光を放ち長く美しい銀色の毛並みに幾重にも分かれた大きな角が鼻先まで伸びていた。そして一番の特徴は顔の中央に大きな目が一つありそれが七色に輝き吸い込まれそうな程美しかった。

「・・・うわぁぁ・・凄ぉぉい!!これが幻獣カトプレパス・・・」

サリアは自分身長の倍程ある幻獣カトプレパスを見上げ目を輝かせていた。

「た、隊長ぉぉぉぉ!!!あれは何ですか?!いきなり魔物が現れましたよ!!あいつ等何をするつもりなんですか?!」

部下の男がフラベルトに詰め寄るとフラベルトは口を開けたまま半笑いで首をゆっくり振っていた。

「ははっ・・・ははっ・・・あ、あれは・・で、伝説上の生き物のはず・・ガキの頃に親父に読んでもらった絵本に出て来た・・・たしか・・幻獣カトプレパス・・・あらゆる禍から皆を守る守護者・・・もう・・俺も訳が分からん・・・」

「ブルルッッ!」

幻獣カトプレパスが力を溜めるように大地を踏み締めると七色に輝く大きな目が光を天に放つ!その光が巨大な黄金の門の両脇を真っ直ぐに走り王宮の両脇を通過すると緩やかに空に登って行った。まるで空に続く虹の回廊であった。

「・・・綺麗・・・」

「おう・・・凄えな・・」

「ふっ・・カトプレパス。今日はお前に手柄を譲ろう・・」

皆が虹の回廊を見上げて微笑む・・・そしてアンリルは今にも爆発しそうな魔力を抑えて口角を上げる。

「・・流石ね・・いい演出してくれるじゃない!!さあ!準備は整ったわ!!行くわよ!私の人生初の五重詠唱!!」

アンリルが衝撃に備えて腰を落とした・・・

「シャイニング・グランド・ゲート・サンバーストォォォォォォ!!!」

アンリルが魔力を全開放すると黄金の門が勢いよく開き眩い光を放つ!!その光はドルビナ帝国全土に広がりこの光は世界の国々から目撃される事となる・・・後にこの日を”神が降臨された日”として各国が独自の祭典を開き讃える日となるのであった・・・

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