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第22話 逆転

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(うぐっ・・・だ、駄目だ・・・あんなもの町に落とされたら・・・全部無くなる・・・何とかしなきゃ・・・ス、ステータス!)


ゼノア
Lv 123
称号 スキル神官
力   2046
体力  1970
素早さ 1607
魔力  1408

スキルポイント 1980

【固有スキル】〈神級スキル〉〈育成の種5〉〈寒耐性10〉〈苦痛耐性12〉〈状態異常耐性15〉〈運搬13〉〈料理9〉〈解体8〉〈腕力強化9〉〈体力強化9〉〈脚力強化9〉〈物理防御9〉〈鑑定7〉〈格闘4〉〈剣術4〉〈闘気3〉〈暗黒魔法1〉〈魔法防御2〉〈魔力創造1〉


(んっ?!レ、レベル123!?いつの間に・・・それにスキルが増えてる!?)

〈暗黒魔法 1〉
〈魔法防御 2〉
〈魔力創造 1〉

ゼノアはオークジェネラルとデリブリアを倒した経験値によりレベルが跳ね上がっていた。しかしこのレベルがこの世界の常識から大きくかけ離れている事をゼノアは後に知るのであった・・・

(・・暗黒魔法?!さっきの球は暗黒魔法だったのか・・・それに魔法防御は魔法に強くなったって事か・・・ん?この魔力創造って・・・)

ゼノアは〈魔力創造 1〉に触れて見る。

〈魔力創造 1〉
帝級スキル。〈魔力操作〉を極めし者。極めた魔力操作により想像した事象を現実のものとする。後は術者の魔力量とセンスに比例する。

(こ、これは・・・て、帝級?!さっきの攻撃で覚えたのか・・・あの攻撃は魔力操作で生み出したのか・・も、もしかしたら・・・使える!!)

満身創痍の身体で無理矢理立ち上がる!そして〈魔力創造〉を発動する。

(よ、よし・・〈魔力創造〉!まずは左腕の止血だ・・・)

ゼノアは左肩を包み込みしっかりと押さえ込み止血する想像をする。するとゼノアの左肩から流れ出る血液がピタリと止まった。まるで左肩の切断面が何かにしっかりと包まれている感覚であった。

(うん・・想像通り上手く行った。よし!感覚は掴んだぞ・・これで何とかまだ動ける・・・よし行こう!・・諦めてたまるかぁ!!)

「闘気解放!!!」

ゼノアは重い身体を気合いで奮い立たせると赤い闘気を放ち駆け出す!!そしてゴルド達に放たれた漆黒の魔力の塊の前に滑り込んだ!!

ざざぁ!!

「うりぁぁぁぁぁぁ!!!させるかぁぁぁぁぁ!!!!」

「なっ?!ゼ、ゼノア?!」

ゴルドの驚きの声を聴きながらゼノアは焼け爛れた腕を漆黒の塊に掲げる!!

「魔力創造!!僕の全魔力を闘気に変えろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ゼノアの叫びと共に纏う闘気が爆発的に跳ね上がる!そして赤く立ち昇る闘気が色を変え黄金に輝き出す!!

ずぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

ずどぉぉぉん!!

ゼノアがマグリアルの放った漆黒の塊を黄金の闘気で受け止めるとその圧力で足元の石畳がすり鉢状に陥没する!!そして漆黒の球体を黄金の闘気で包み込み押し返す!!

「な、なにぃぃぃ!!!ぼ、僕の魔力弾を人間如きが受け止めただと?!それもあんなガキが?!そ、それにこの力・・・ぐぐっ・・お、押し戻されている・・だと?!」

魔人マグリアルは驚愕し焦りを覚えた・・・自分の魔力弾を人間が止めるとは微塵も思っていなかったのだ。


「おいおいおいっっ!!な、何だあの闘気はぁぁぁ!!!一体どうなっているんだ?!」

「ふっ・・ふふ・・た、確か約千年前の文献で読んだ事がある・・・”黄金を纏いし救世主。世界を滅ぼす暴竜と相撃つ”・・・ゴルド・・も、もうゼノア君は私達の常識を越えているんだ・・・」

「わ、私は認め無いわよ!!ま、魔力創造?!あ、あのスキルは私の師匠にして世界最高峰の魔力量を誇る英雄サーメリア師匠の帝級スキルよ!!そ、それを・・あんな子供が・・・あんな子供がぁぁ!!」

するとガベルが頭を抱えるユフィリアの側まで行くと軽く抱きしめる。

「ユフィリア・・落ち着け。この世界には君の師匠のように規格外の力を持つ者がいるんだ。・・・実は・・お前には言ってなかったがゼノア君は経験したスキルを自分のスキルにする事が出来るんだ・・・恐らくあの魔人がそのスキルを持っているんだ・・・」

ユフィリアはガベルの言葉に動きを止めた・・理解出来ない言葉・・あり得ない言葉・・そして自分が努力し続けて来た日々・・それらを飛び越えた目の前の存在にユフィリアは自分でも分からない何が身体の底から溢れ出した!

「駄目よぉぉぉぉぉ!!!認めないわぁぁ!!認めない!認めないわよぉぉぉぉ!!そんなの認めないわぁぁぉ!!!そ、そんな簡単に・・・そんな簡単に私の努力を飛び越えないでよ!!!・・・ず、ずるいわよ・・・私はこの歳になっても師匠に追いつこうと努力しているのに・・・あんな子供が・・・あんな子供が・・・」

ユフィリアは拠り所にしていた魔法技術さえもゼノアに追い越されプライドを打ち砕かれ項垂れる。するとイラついた声でゴルドが声をあげた。

「おい!!目を醒せユフィリアぁぁぁ!!あのゼノアの姿を見ろぉぉぉぉぉ!!!お前の認めない力で俺達や町を必死で護ってんだぞ!!!あんなにボロボロになっても自分の護りてぇもん護ってんだぁぁぉ!!それでもお前はゼノアを認めねぇのかぁぁぁ?!おおう?!」

「ううっ・・・くっ・・そ、そんな事・・・わ、分かってるわよ・・・」

ユフィリアはゴルドの檄に奥歯を噛み締める。
そうユフィリアは分かっていた。あの小さな身体で必死に自分達の盾になっているゼノアの姿を見て凄いと思う、感謝もしていた。しかしそれと同じように激しい嫉妬にかられていた。ユフィリアは何かを吐き出さずにはいられなかったのだ。

「ふん・・・そうか・・・それよりあいつは魔人マグリアルとか言ったな・・・ふう。奴はもうゼノアに勝てねぇな・・・」

ゴルドが荒れ狂う闘気と漆黒の魔力弾の激突で起こる力の波を身体に受けながら空を見上げる。ゼノアの放つ黄金の闘気がマグリアルの漆黒の魔力弾を飲み込み吸収しながら押し返していた。

「あぁ・・・そうだな。ゼノア君は相手の魔力すらも自分の闘気にしているんだな・・・」

「・・・そうね・・相手にしたらたまったもんじゃ無いわ・・・スキルをコピーされてそれ以上の力で返されるんだから・・・」

ゴルド達は魔人マグリアルに追い詰められていたが今となっては魔人マグリアルを同情の目で見上げていた・・・

「ぐっ・・・ぬぐぐっ・・あ、あれは・・まさか!魔力を闘気に・・・闘気に変換しているのか?!ば、馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁ!!!何故だ!何故だ!何故だぁぁぁぁぁぁ!!!あんなガキが!!あんなガキが!!〈魔力創造〉のスキルを持っていると言うのかぁぁぁ!!こ、この僕でさえ・・400年かかってようやく辿り着いた帝級スキルだっていうのにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

魔人マグリアルは迫り来る黄金の闘気を必死に魔力で押さえ込もうとするが込めた魔力が全て吸収され更に勢いを増してマグリアルに襲い掛かる!!

「そ、そんな!!こ、この僕がぁぁぁ!!人間のガキなんかにぃぃぃぃぃぃぃ!!!や、やめろ!!やめろぉぉぉぉぉ!!!ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

そして魔人マグリアルは断末魔と共に荒れ狂う黄金の闘気の中へ消えて行った・・・



「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・も、もう空っぽだ・・・も、もう倒れてもいいかな・・・」

全身の力が抜けて肩で息をしていたゼノアはそのまま仰向けに倒れた。

どさぁぁ・・・

「おい!ゼノア!!!」
「ゼノア君!!」
「あんた!大丈夫かい?!」

空を見上げたゼノアの視界にゴルド、ガベル、ユフィリアの心配そうな顔が飛び込んで来た。

(・・・み、皆んな無事で良かった・・・)

ゼノアは安心して全身の疲労に耳を貸すように目を閉じようとした。すると霞んで行く視界の真ん中に空から落ちてくる黒いものが映った・・・)

(ん?・・・あれは何だろう・・・)

段々と大きくなる黒い物体に目を凝らすとボロボロになった大きな黒い翼を生やした人型のようなものであった・・・そしてそのままそれが石畳に激突した。

ずどぉぉぉん・・・

「な、何だ?!今度は何だ?!」

ゴルドは突然の大きな音に肩を跳ね上げ辺りを見回す。すると石畳が粉砕され立ち込める砂埃の向こうに黒い影が映し出される。

「・・・お、おいおい・・まさか・・冗談はよせよ・・・」

「・・・ざ、残念ながら冗談では無いようだ・・・まさかアレを喰らって生きてるとはな・・・」

「・・・ふん。アレが本当の姿ね。攻撃を受ける瞬間に変身を解いて全力で防御したのよ・・・でも無傷じゃないのが唯一の救いね・・・」

砂埃が晴れ身構えるゴルド達の前に現れたのは先程の少年の姿ではなく身長は約1.5倍になり赤黒い肌にはち切れんばかりの肉体の男がふらつきながら立っていた。背中の蝙蝠のような羽根は見るも無惨にボロボロになり鬼の形相でこちらを睨む魔人マグリアルであった・・・
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