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第21話 黒幕

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ゼノアは膝を震わせながら構えるゴルド達を肩越しに見ると赤い闘気を立ち昇らせて拳を固める。デリブリアは目の前に立つ幼い人間の子供の気迫に動けずにいた。

「こんな奴!僕一人で十分だ!!ゴルドさん達は休んでいて!!」

ゼノアから立ち昇る赤い闘気を目の当たりにしてゴルド達が唖然とする。

「お、おい・・それは・・・と、闘気か?!それもレッドオーラだとぉぉぉ!!ゼノア
お前っ!!い、いつの間に?!」

「・・・なんて濃密な闘気だ・・・全盛期のゴルドを凌ぐぞ・・・」

「・・・な、何故この歳で・・・何故5歳で闘気を習得できるのよ・・・それもレッドオーラ?!あの子は一体何者なの?!」


この世界では闘気に階級がある。無色のノーマルオーラから赤色のレッドオーラの五段階あり特にレッドオーラを纏う者はこの世界に三人しか居ないと言われているのだ。

初級 無色
中級 ホワイト
上級 イエロー
特級 ブルー
超級 レッド

そしてゼノアは〈神級スキル〉の効果によりスキルの効果と威力が大幅に上がっているのであった。

(お、おかしい・・・この町で闘気を使えるのはゴルドと私だけだ・・・ゴルドはまだゼノア君に闘気を見せていないと言っていた。ならばどうやって経験したんだ・・・だがもし・・い、いや・・ま、まさかな・・・)

ガベルはある可能性が頭にチラつくがすぐさま否定する。そして赤い闘気が立ち昇るゼノアの背中を見据えるのであった。

「ね、ねぇ・・・あの子の周り・・淡く光っているように見えるのは気のせい?」

ユフィリアがゼノアを包む白い光を目を凝らして見つめる。するとゴルドは見慣れた光景にニヤリと笑う。

「あぁ・・そうか・・・ユフィリアは初めて見るのか。あれはゼノアが成長した証だ。多分奴の魔法を受けて成長したんだ・・・ゼノアは戦いの中で急激に成長するんだ。見ていろ・・もう奴はゼノアに勝てないだろう。」

「えぇっ?!どう言う事よ!あの子があの悪魔族に一人で勝てるって言うの?!」

ユフィリアが目を見開きゴルドに詰め寄る。

「あぁ!そうだ!見ていろ・・・今に分かる・・・」

そう。ゴルドの予想は当たっていた。ゼノアはデリブリアの暗黒魔法〈獄炎〉に触れ〈暗黒魔法1〉〈魔法耐性3〉を習得していた。その上〈闘気1〉→〈闘気3〉へとレベルが上がっていた。

ゼノアはさっきよりも更に濃密な闘気を立ち昇らせデリブリアを睨み焼け焦げた右拳を構える。

「・・・よくもゲイブルの町をめちゃくちゃにしたな!!よくも町の皆んなを傷つけたな!!よくも!・・よくも・・・ゴルドさん達を傷つけたな・・・許さない・・・絶対に許さないぞぉぉぉぉぉ!!!!」

ずおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

ゼノアが怒りを解放すると闘気も同調するように天高く雲を押し除け遥か彼方へと突き抜けて行った。

その瞬間!ゼノアが石畳を蹴り踏切ると石畳が吹き飛び赤い弾丸のように一直線にデリブリアに襲いかかる!!

どぉぉぉん!!

「うりぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ぶもぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

デリブリアは迫り来る赤い殺気の塊に訳も分からず〈獄炎〉を撃ちまくる!!しかしその全てがゼノアの分厚い闘気と〈魔法耐性〉に阻まれ弾かれて行く!!

「ぶ、ふもっ・・・?!」

「この町からぁぁぁ!!!出ていけぇぇぇ!!」

ずどぼぉぉぉぉぉ!!!

デリブリアはなす術も無くゼノアの渾身の拳を胸の真ん中で受け止める!!そしてそのままゼノアの拳が突き刺さりデリブリアの身体に大きな風穴を開けてゼノアが突き抜けて行った。

「ぶ・・・ぶもっ?!・・ぶっ・・も・・・ぐぶっ・・ぶぶぅぅぅ・・・」

ずずぅぅぅん・・・

デリブリアはぽっかり空いた胸の穴を押さえ緑色の体液を口から垂れ流して崩れ落ちた。

そしてもう一人膝から崩れ落ちた者がいた。

ざざっ・・・

「・・・そ、そんな・・悪魔族を・・・一撃で?!そ、それも5歳の子供が・・・私達Sランク冒険者の三人を遥かに凌駕すると言うの・・・あ、あり得ない・・・わ・・」

ユフィリアは膝を付き畏怖とプライドが入り混じる感情の中でどうして良いか分からずに只々ゼノアの背中を見据える。

するとゴルドがユフィリアの肩に手を置く。

「・・・ユフィリア。お前の気持ちは痛い程分かる・・・正直に言うが俺は既にゼノアに勝てないんだ。俺はゼノアに週一で戦い方を教えていたが・・・4回目には・・・この俺を越えていた。だから・・・恥ずかしい話しだが・・ゼノアに〈闘気〉を教えるのが怖かったんだ。完全に俺を越えるのがな・・・はん・・だが・・もうゼノアは俺達の遥か先に行っちまいやがった・・・だからユフィリア・・今は素直に喜ぼう・・・いいな?」

「・・ふん・・・分かっているわ。助けられたのは事実だからね。・・でも魔法なら・・遅れはとらないわよ・・・」

だがユフィリアは気持ちの整理が付かなかった。自分がこれまで培った長い年月を5歳の子供に簡単に追い越されたのだ。素直に両手で喜ぶ事は出来なかった。しかし最後の砦として長年培った魔法技術を頼りとして辛うじてプライドを保つユフィリアであった。


ゼノアは立ち上がり倒れたデリブリアが黒いチリとなって風に吹かれ消えて行くのを見ていた。

「ふう・・終わった・・・皆んな無事で良かった・・・」

ゼノアがゴルド達に振り返るとゴルド達の安心した笑顔が目に飛び込んで来た。

「ゴルドさーーん!!」

ゼノアは手を振りながらゴルド達の元へ駆け出す。ゴルドも手を振り返そうとしたその時!ゴルド達が突然空を見上げて表情が一瞬で険しく変わる!

「ゼノアァァァァ!!!危ねぇぇぇぇぇ!!!!」

「えっ?!」

突然ゴルドが張り上げた声にゼノアがゴルドの目線を追い空を見上げる!しかしその瞬間!三日月型の漆黒の刃がゼノアの左肩を切り裂きゼノアの左腕が宙に舞った・・・

どさっ・・・

「ゼノアァァァァァァァァ!!!」

ゴルドの悲痛な叫び声が鼓膜を震わせる。ゼノアは訳が分からず違和感のある左腕があった場所を見ると忘れていたかのように激痛に襲われ膝を付く!

「あぐぅぅぅぅ・・・う、腕がぁぁぁ!!な、何で・・・何が・・・・」

ゼノアが苦痛の表情で空を見上げると黒いフードが外れて逆立てた紫髪が露わになった赤目の少年が浮いていた。

「くっ・・あ、あれは・・・誰・・?・・・か、鑑定・・」

マグリアル
Lv 358
称号 魔人
力   4267
体力  3678
素早さ 4308
魔力  6759

【固有スキル】〈魔力創造 1〉〈闇魔法3〉〈魔法強化 4〉〈物理防御 1〉

(ま、魔人?!そ、それに・・なんてステータスなんだ・・・)

「・・・人間如きが・・・やってくれたね・・・よくも僕の研究成果を・・・予定通りこの町は潰してやる!!」

紫髪の少年が怒りを露わにして両手を空に翳す。するとデリブリアとは比べものにならない程の漆黒のオーラを立ち昇らせ翳した両手の上に巨大な漆黒の魔力の塊を浮かせていた。


「お、おい・・・ま、まずいぞ!!あの漆黒のオーラは魔人だぞ!!」

「くっ・・・な、何故こんな所に魔人が?!このままでは全滅だぞ!!」

「・・・く、悔しいけど・・あんな巨大な魔力の塊・・・もうどうしようも無いわ・・」

いつもなら強気で立ち向かうユフィリアであったが魔力の格の違いに心が折れて膝を付いてしまう。

ゴルド達は唖然としながら只々空を見上げ最悪な瞬間を待つしかなかった・・・

「ふん・・・まぁ・・人間にしてはよくやったと褒めてあげるよ・・・ふっ・・これはこの僕、魔人王グラバルガ様配下!六星魔人マグリアル様からのご褒美だ!!・・・死ねぇぇぇ!!!」

六星魔人マグリアルが両手を振り下ろすと巨大な漆黒の魔力の塊がゴルド達目掛けて放たれた!!迫り来る圧倒的な魔力の波動にゴルド達はなす術も無く立ち尽くしていた。

「・・こ、こりぁ・・・だ、駄目だ・・・」
「・・皆・・すまない・・許してくれ・・」
「・・・くっ・・・」

そして漆黒の球体がゴルド達を飲み込もうと迫る!ゴルド達が覚悟を決めたその時!またもやデジャヴのように小さな影がゴルド達の前に現れるのであった・・・
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