16 / 18
3、あまくて、からい。
クローブを思わせる辛さに
しおりを挟む
「えっ……?」
朝、教室に入ると前の黒板には、柿本くんとわたしの名字が添えられた相合傘が描いてあって、そのすぐ近くには使いかけのコンドームの箱がマグネットで貼り付けられていて。
「えっ、えっ?」
慌ててカバンの中をまさぐってしまう。
いつも学校帰りに寄っているから、もしかして、学校のカバンのなかに入れてあるのを……!? そう思って捜したら、わたしたちが使っているものはちゃんとしまってあった。けど、そういうわたしを見た周りの目が一気に冷ややかになっていくのがわかってしまった。
「え、だ、誰?」
訊いても誰も答えてくれない。
わかってた、こんなことをする人はきっと、認めない。
「誰だよ、教えてよ! 誰がこんなの描いたの!?」
けど、口から出るのはそういう言葉だけ。
わたしだって見ていたのに、こういう目に遭った人が勝てることなんてないのは、知ってるのに。
「消さなきゃ、消さなきゃ……!」
誰も手伝ってくれない。
誰も消してくれない。
残しっぱなしじゃ、嫌だから。
わたしだけならいい、でも、柿本くんにまで迷惑がかかる。
「すっごい慌ててない?」
「わー、有栖もそーゆーことしてんだねぇ……」
「イメージと違い過ぎて、なんか引く」
「図星図星~」
ずっと、背中を声で刺されてしまう。痛い、痛い、痛い、痛い。けど、ずっと耐えているしかない。たぶん、騒いだらもっと面白がられる。わたしで止めなきゃ。わたしがこうやって言われるくらいで止めておかなきゃ。ていうか、なんでこんなに言われるの? みんなだって誰かと付き合ってるんじゃないの?
みっちゃんが大学生のセフレになってるの、知ってるよ?
しぃのチョーカーって、絞められた手の跡を隠すためなんでしょ?
さっちの制服の下、彼氏に殴られた跡でいっぱいなんだよね?
えりだって、浮気された仕返しにオフパコしまくってるって言ってたよね?
そういうみんなのとわたしのって、何がどう違うの? どうしてわたしだけこんな風に言われなきゃいけないの? 誰がやったの? ていうか、どうやってわたしたちのこと知ったの?
なんで、なんで、なんで、なんで?
頭の中がぐるぐるしてきたときに。
「キャラじゃないんだよ、彼氏作ってヤってるとかさ」
不意に、誰かから投げかけられた言葉。
……キャラ。
キャラじゃない。
なに、キャラって、なに。
まだそんなこと言われなきゃいけないの?
『隅っこでじっとしてりゃよかったのに』
高校になったら、言われないと思ってたのに。
言われないようにしようと思ってたのに。
気を付けて努力して言われなかったのに。
わざわざSNSでストレス発散してまで頑張ったのに。
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい……っ!!!
目の前が真っ赤になってくる。恥ずかしさと悲しさが、怒りに変わっていく。黒板消しを誰かに投げつけて叫び出してしまおう、そう思ったときに、見つけてしまった。
消していった文字の中に、あったのだ。
わたしが出会い目的で使っている、SNSアカウントの@ユーザー名が。
朝、教室に入ると前の黒板には、柿本くんとわたしの名字が添えられた相合傘が描いてあって、そのすぐ近くには使いかけのコンドームの箱がマグネットで貼り付けられていて。
「えっ、えっ?」
慌ててカバンの中をまさぐってしまう。
いつも学校帰りに寄っているから、もしかして、学校のカバンのなかに入れてあるのを……!? そう思って捜したら、わたしたちが使っているものはちゃんとしまってあった。けど、そういうわたしを見た周りの目が一気に冷ややかになっていくのがわかってしまった。
「え、だ、誰?」
訊いても誰も答えてくれない。
わかってた、こんなことをする人はきっと、認めない。
「誰だよ、教えてよ! 誰がこんなの描いたの!?」
けど、口から出るのはそういう言葉だけ。
わたしだって見ていたのに、こういう目に遭った人が勝てることなんてないのは、知ってるのに。
「消さなきゃ、消さなきゃ……!」
誰も手伝ってくれない。
誰も消してくれない。
残しっぱなしじゃ、嫌だから。
わたしだけならいい、でも、柿本くんにまで迷惑がかかる。
「すっごい慌ててない?」
「わー、有栖もそーゆーことしてんだねぇ……」
「イメージと違い過ぎて、なんか引く」
「図星図星~」
ずっと、背中を声で刺されてしまう。痛い、痛い、痛い、痛い。けど、ずっと耐えているしかない。たぶん、騒いだらもっと面白がられる。わたしで止めなきゃ。わたしがこうやって言われるくらいで止めておかなきゃ。ていうか、なんでこんなに言われるの? みんなだって誰かと付き合ってるんじゃないの?
みっちゃんが大学生のセフレになってるの、知ってるよ?
しぃのチョーカーって、絞められた手の跡を隠すためなんでしょ?
さっちの制服の下、彼氏に殴られた跡でいっぱいなんだよね?
えりだって、浮気された仕返しにオフパコしまくってるって言ってたよね?
そういうみんなのとわたしのって、何がどう違うの? どうしてわたしだけこんな風に言われなきゃいけないの? 誰がやったの? ていうか、どうやってわたしたちのこと知ったの?
なんで、なんで、なんで、なんで?
頭の中がぐるぐるしてきたときに。
「キャラじゃないんだよ、彼氏作ってヤってるとかさ」
不意に、誰かから投げかけられた言葉。
……キャラ。
キャラじゃない。
なに、キャラって、なに。
まだそんなこと言われなきゃいけないの?
『隅っこでじっとしてりゃよかったのに』
高校になったら、言われないと思ってたのに。
言われないようにしようと思ってたのに。
気を付けて努力して言われなかったのに。
わざわざSNSでストレス発散してまで頑張ったのに。
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい……っ!!!
目の前が真っ赤になってくる。恥ずかしさと悲しさが、怒りに変わっていく。黒板消しを誰かに投げつけて叫び出してしまおう、そう思ったときに、見つけてしまった。
消していった文字の中に、あったのだ。
わたしが出会い目的で使っている、SNSアカウントの@ユーザー名が。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~
けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。
秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。
グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。
初恋こじらせオフィスラブ
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる