アリスは眠らないで

鏡上 怜

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2、それはまるで夢の国

波の色は、どこも同じ

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「ん、むぅ、ちゅぅ……っ」
 口いっぱいに頬張った柿本かきもとくんのモノが、ピクピクと震えるのを感じる。濡れている先っぽの汁を舐めとると苦くてしょっぱくて、つい声が漏れてしまった。

「ん、ふ――――、」
 声を抑えようとしている柿本くんがなんとなく可愛らしくて、つい口に入れたまま「ふふっ」って笑ったら、たまたま触れた舌で感じちゃったのかな、もっと身体の震えが大きくなってしまった。

「ちゅ、ちゅっ、ふふ、」
 どうしてもそんな様子がおかしくて、少し蒸れたような臭いのするそれに舌を絡めたり、ヒクヒクしている鈴口の辺りに唾を入れてみたりしてしまう。 
「っ、あぁ……っ、あ、有栖ありす……?」
「ちゅ、ぢゅる……ぅ、ふぇ?」
 戸惑ったような声で名前を呼ばれたところで、やっとわたしは自分が墓穴を掘っていることに気付いた。
 よく考えてみたら、初めてデートした人のものをいきなり舐めるなんて――いくら頼まれたからって言ったって普通じゃない。普通は、たぶん慣らされるまではフェラしろって言われたってこんなことにならなかった。

 いくら好きな人だからって、その気持ちを表す基準が求めに応じる度合いなんかじゃないってわかってるはずなのに。
 ここはあの人の前でもないし、どこの誰か知らないエロい人たちと通話しているときの部屋でもないのに。

『頼めばこんなことまでしてくれるとか、俺のこと好き過ぎでしょ。ありえねぇ、思ってた以上にアリスって変態だよね』

 頭上から降ってくる、バカにしているのを隠そうともしない声を聞きながら、ひたすら求めに応じていたのを思い出す。惨めだった、悔しかった、悲しかった。
 それでも、彼以外にはいないと思っていたから、必死だった。どこかおかしいことなんてわかっていたはずなのに。

「――――――、」
 どうしたらいいの?
 わたしは柿本くんのことがこんなに好きなのに、それを伝えるために嫌われるようなことをしなきゃいけないの……? 嫌だよ、そんなの。
 あの人のことなんて忘れたいのに、柿本くんなら忘れられるって思ってたのに、どうしてこんなにはっきり思い出しちゃうの……? 怖くて、わたしが崩れてしまいそうで、吐き気までしてくる。
「あ、あの、ごめ……」
「大丈夫だよ」
 謝ろうとしたら、柿本くんはその言葉を遮ってわたしの前でしゃがみこんだ。屈んだ筋肉質な足の間に見えるモノから目を逸らそうとしたら、「ちゃんと見ていいから」と言われた。

「別に、この学年になったらお互い初めて同士だけじゃないでしょ? そういうことじゃなくて、有栖がこんなにフェラ上手かったんだな、って驚いただけだよ。すっげぇ、気持ちいい」
 喋っているうちに、柿本くんのモノはどんどん大きくなっていって、赤黒くもなっていくのもわかった。

「え、じゃあ、え、なんか引いたかなとか、え、そういうんじゃ、」
「全然。むしろ……、なんかさ、さっきまでまだちょっと迷ってたんだけど、もう我慢できなくなってきた」

 そう恥ずかしそうに言いながら、柿本くんはわたしをベッドに仰向けに寝かせた。
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