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1、時計ウサギの囁き
小さな木の穴へ
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『堀田 有栖様。
おひとりのときに読んでください。』
そう書いてある手紙を見たとき、思った。
いやいや、ありえないでしょ、今時こんなのおかしいって。何かのイタズラか何かなんじゃないの? じゃなきゃ、こんな幼稚というかアナログというか、こんなやり方で手紙渡してくるとかありえないでしょ……。
呆れながら、手紙をカバンにしまおうとしたとき。
「あれっ、それもしかしてラブレターみたいなやつじゃないの?」
わたしの後ろにいた吉田さんがどこか楽しそうに、なんだかウキウキした様子で訊いてきた。いや、まさかそんなことないでしょ。だって、SNSでだってやり取りできるし、ほんとに仲良くしたい人ならLINIEで繋がることだってできる。わざわざ形で残る手紙なんて送って来なくたっていいはずなのに……。
どうせ、何かしらのからかい半分のものに決まってる。
そうじゃなきゃ、おかしくない?
少なくとも、わたしはそう思う。でも、ラブレターなんていうものを実際に見るのが初めて(彼氏は何人かいるけどみんな手紙なんかでは告白してこなかった)らしい吉田さんは、すっかりテンションが上がってしまっている。うぅ、朝から元気だなぁ……。
「たぶんこんなの送って来ないでしょ、普通。冗談か何かだよ、きっと」
「えぇ~、まぁそうだけど……。あ、でも、そんな普通じゃないことをしてまで告白してくるって、たぶん相当本気なんだと思うよ? とりあえずさ、付き合う付き合わないは別として、会うだけ会ってみれば?」
「――――――、」
「ん、どしたの?」
ズキ。
「ううん、なんでもないよ」
ズキッ……。
「そう、なんか顔色悪いみたいだけど」
ズキズキ……。
「別になんでもないよ。今週、ほら、あれだから」
「あっ、そうなんだ、だいじょぶ~? 保健室行く?」
「うん、ありがと。ちょっと行ってこようかな」
下手な嘘だったかもしれないけど、吉田さんは信じてくれたみたい。
付き添うと言ってくれた言葉を振り切って、一応パフォーマンスとして保健室に向かっている――だけのつもりだったんだけど、ちょっと今はほんとにベッドで横になりたいかも。なんか、本当に気分が悪くなってきた。あぁ、なんてことだろう。
まさか、こんなに気分が悪くなっちゃうなんて。
会うだけ会ってみる。
『え、まさかほんとに会うだけだって思ってたの?』
この言葉は、まだわたしの心から離れてくれないみたいだ。
身体が震えて気持ち悪い。
でも、誰かくれたかもわからない手紙が、どういうわけかわたしの心を落ち着けてくれるようだった。
おひとりのときに読んでください。』
そう書いてある手紙を見たとき、思った。
いやいや、ありえないでしょ、今時こんなのおかしいって。何かのイタズラか何かなんじゃないの? じゃなきゃ、こんな幼稚というかアナログというか、こんなやり方で手紙渡してくるとかありえないでしょ……。
呆れながら、手紙をカバンにしまおうとしたとき。
「あれっ、それもしかしてラブレターみたいなやつじゃないの?」
わたしの後ろにいた吉田さんがどこか楽しそうに、なんだかウキウキした様子で訊いてきた。いや、まさかそんなことないでしょ。だって、SNSでだってやり取りできるし、ほんとに仲良くしたい人ならLINIEで繋がることだってできる。わざわざ形で残る手紙なんて送って来なくたっていいはずなのに……。
どうせ、何かしらのからかい半分のものに決まってる。
そうじゃなきゃ、おかしくない?
少なくとも、わたしはそう思う。でも、ラブレターなんていうものを実際に見るのが初めて(彼氏は何人かいるけどみんな手紙なんかでは告白してこなかった)らしい吉田さんは、すっかりテンションが上がってしまっている。うぅ、朝から元気だなぁ……。
「たぶんこんなの送って来ないでしょ、普通。冗談か何かだよ、きっと」
「えぇ~、まぁそうだけど……。あ、でも、そんな普通じゃないことをしてまで告白してくるって、たぶん相当本気なんだと思うよ? とりあえずさ、付き合う付き合わないは別として、会うだけ会ってみれば?」
「――――――、」
「ん、どしたの?」
ズキ。
「ううん、なんでもないよ」
ズキッ……。
「そう、なんか顔色悪いみたいだけど」
ズキズキ……。
「別になんでもないよ。今週、ほら、あれだから」
「あっ、そうなんだ、だいじょぶ~? 保健室行く?」
「うん、ありがと。ちょっと行ってこようかな」
下手な嘘だったかもしれないけど、吉田さんは信じてくれたみたい。
付き添うと言ってくれた言葉を振り切って、一応パフォーマンスとして保健室に向かっている――だけのつもりだったんだけど、ちょっと今はほんとにベッドで横になりたいかも。なんか、本当に気分が悪くなってきた。あぁ、なんてことだろう。
まさか、こんなに気分が悪くなっちゃうなんて。
会うだけ会ってみる。
『え、まさかほんとに会うだけだって思ってたの?』
この言葉は、まだわたしの心から離れてくれないみたいだ。
身体が震えて気持ち悪い。
でも、誰かくれたかもわからない手紙が、どういうわけかわたしの心を落ち着けてくれるようだった。
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