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1、時計ウサギの囁き
新しくて、運命的な
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「――――――、ふぅ……」
うーん。寝覚めはあんまり、いや、かなりよくない。
たぶん理由はとりあえずわかっている。たぶん、昨夜は疲れ切っていたせいで通話中に寝落ちしたからだ。もちろん、最後に聴いていた声は通話相手のお兄さんの、必死にわたしを昂らせようとして出していた喘ぎ声と、なんかエロ漫画に出てくるような隠語まみれの歯の浮くセリフ。
しかも、昨夜のお兄さんはけっこういい声をしていた。
おかげで、なんだか中途半端に気持ちを高められてしまったまま寝落ちてしまったみたいだ。もしかしたら、なにか夢でも見てしまっていたかも知れない。
だからか、朝から下着を替えなきゃいけなくなってしまった。
まぁ、もうこういうことにも慣れてきたから、声で濡れたからってその相手に恋をしているなんて錯覚は抱かない。そんな風に思い込んだりしているといろいろ後悔することになるって、もう思い知ったし。
というわけで、朝の目覚めはわりとひどいものだったけど、そこはそれ、気分の切り替えとかも慣れてしまった。
愚痴とか恨みつらみとか、そういうわたしは家に置いていく。待っててね、夜にはまたたっぷり解放してあげるから。
だから、日中はここで待っててね。
わたしは、クラスのムードメーカーでいなきゃだからさ。
そう言い聞かせて、わたしは部屋を出た。そうしていつも通り登校して、いつも通りに昇降口にやって来る。落ち着いた朝の静かなひと時をこよなく愛してはいるけど、もちろんそんなのは長続きしない。
突然走ってきたクラスメイトの吉田さんに思い切り背中を叩かれて、思わずむせかえる。そんなわたしを見て、吉田さんはとても楽しそうに笑いながら挨拶してくるんだ。
「おはよ~堀田ちゃん!」
「あっ、うん、おはよ」
「堀田ちゃん、今日も元気?」
「うん、元気元気。いつも通りだよ~」
彼女は、クラスの中心人物のひとり。
そんな彼女と一緒にいられるわたしも、まぁクラスの中ではある程度の立ち位置――というか、たぶんいつもわたしの発言が周りを和ませているという彼女の売り込みも多少はあったんだろうけど。
けど、そうやって見出だされるようなものを、わたしは持てているんだ。そんなことを思いながら、今日もいつも通りに靴箱を開ける。
すると、その中には1つの封筒があって。
そこには間違いなく書かれていた。
『堀田 有栖様。
おひとりのときに読んでください』って。
うーん。寝覚めはあんまり、いや、かなりよくない。
たぶん理由はとりあえずわかっている。たぶん、昨夜は疲れ切っていたせいで通話中に寝落ちしたからだ。もちろん、最後に聴いていた声は通話相手のお兄さんの、必死にわたしを昂らせようとして出していた喘ぎ声と、なんかエロ漫画に出てくるような隠語まみれの歯の浮くセリフ。
しかも、昨夜のお兄さんはけっこういい声をしていた。
おかげで、なんだか中途半端に気持ちを高められてしまったまま寝落ちてしまったみたいだ。もしかしたら、なにか夢でも見てしまっていたかも知れない。
だからか、朝から下着を替えなきゃいけなくなってしまった。
まぁ、もうこういうことにも慣れてきたから、声で濡れたからってその相手に恋をしているなんて錯覚は抱かない。そんな風に思い込んだりしているといろいろ後悔することになるって、もう思い知ったし。
というわけで、朝の目覚めはわりとひどいものだったけど、そこはそれ、気分の切り替えとかも慣れてしまった。
愚痴とか恨みつらみとか、そういうわたしは家に置いていく。待っててね、夜にはまたたっぷり解放してあげるから。
だから、日中はここで待っててね。
わたしは、クラスのムードメーカーでいなきゃだからさ。
そう言い聞かせて、わたしは部屋を出た。そうしていつも通り登校して、いつも通りに昇降口にやって来る。落ち着いた朝の静かなひと時をこよなく愛してはいるけど、もちろんそんなのは長続きしない。
突然走ってきたクラスメイトの吉田さんに思い切り背中を叩かれて、思わずむせかえる。そんなわたしを見て、吉田さんはとても楽しそうに笑いながら挨拶してくるんだ。
「おはよ~堀田ちゃん!」
「あっ、うん、おはよ」
「堀田ちゃん、今日も元気?」
「うん、元気元気。いつも通りだよ~」
彼女は、クラスの中心人物のひとり。
そんな彼女と一緒にいられるわたしも、まぁクラスの中ではある程度の立ち位置――というか、たぶんいつもわたしの発言が周りを和ませているという彼女の売り込みも多少はあったんだろうけど。
けど、そうやって見出だされるようなものを、わたしは持てているんだ。そんなことを思いながら、今日もいつも通りに靴箱を開ける。
すると、その中には1つの封筒があって。
そこには間違いなく書かれていた。
『堀田 有栖様。
おひとりのときに読んでください』って。
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