鏡の中から覗くのは

鏡上 怜

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アバンチュール指南・1

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 さて、それなりに物騒なニュアンスを持つこのタイトルだが、要は「こっそり出掛けているときに心がけたいこと」と言い替えたらもっとわかりやすくなることだろう。

 そもそも今の時代、なかなか抑圧される機会が多いのではないかと見受けられる。
 社会全体に対する警戒感、立地条件、家庭の事情など。
 私の場合は最後のケースが該当するが、実はなかなか自由な外出というものに縁がない半生を送ってきている。とはいえ、あまり抑圧されるのもたまったものではなかったため、適度な息抜きとして、こっそりと出かけることも少なくなかった。

 以下は、そんな折に私個人が感じたことである。

 まず、どこか行き先を偽って外に出ている際に気を付けなくてはならないことは、目立たないことである。人の目というのは案外どこにでもあるものであり、特に普段あまり外に出ない時間帯の場合、思わぬ知人に出くわすこともある。声などかけられたら気まずいことこの上ない。
 それがただ自分の知り合いならばいいが、家族ぐるみの付き合いのある相手だと、却ってかなり心配されて、家族にまで報告が行くこともなきにしもあらず、である。
 なので、多少遠回りになってもよければ――土地勘があるのなら――人目につきにくい通り道を選ばなくてはならないだろう。ならないかは別として、その方がいいのは間違いない。

 そして、次に気を付けなくてはならないのは、という点である。私の経験上、旅先ではどうしても気が大きくなってしまうことがままあるのだが、そのままに目立つ行動をしてしまうと、不要なトラブルに巻き込まれてしまう恐れがないわけでもない。
 別に、トラブルは旅先での醍醐味だろうという諸兄に対してまでこの考え方を強制するつもりはない。
 ただしこのトラブル、居場所を知られたくない相手がいる場合にはかなり厄介なものになる。

 単に周りとの軋轢が生まれてしまうこと――場合によってはこれもそれなりに気分を害してしまうものだが、それならまだいい。むしろこの点を引きずり続けなくていいのが一人旅であるように思う。
 しかし、このトラブルが大きな規模になってしまうと仲裁者が介在してくる可能性が出てくる。特に駅前では鋼板の駐在、また深夜帯には巡回している警官との遭遇が比較的多くなる(経験上)ため、目を付けられてしまうことがある。
 よしんば目を付けられるのではなく「保護の対象」として見られた場合でも、それはそれで厄介だ。
 思い出してほしい、のである。
 そんなとき、家族・友人・知人と連絡をとる必要に迫られてしまったらどうだろうか。
 これは、非常に困ることになる。たとえば、ただ隠しているだけならいい。それが、リストラされたことを告げることの叶わないサラリーマンよろしく時間潰しの外出だった場合どうだろうか。

 ……もちろん、そういった事実は早めに打ち明けて次へのステップを考える必要があるため、知られる必要もあるのだが、それはともかくとして。

 こういうこともあるため(実際に、深夜の道端で酔い潰れた女性を交番に送り届けたとき名前を尋ねられてかなり困った経験がある私としては)なるべく目立たないような行動を心がける必要性を強く訴えたい。ちなみに、私の場合はしたことが悪事でもなかったためにそこまで強くは追及されず、最終的に電話に応じながら立ち去るという強引な手法で名前を避けた。あまり印象が良くないため、おすすめはしない。
 ということで、トラブルはよくないということで、第1部を締めくくろう。
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