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知らない世界、知らない国、知らない街

攻撃

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 「我、トアキ・キクの名の下我の召喚に応じろ。我の精霊氷狐ひょうこ。」
 転びそうになりながら、噛まないように詠唱を口にする。すると、目の前が光った。眩しくて目を閉じた反動で転けてしまった。
 「っ。」
 【我を呼び出せと言いているだろうに・・】
 キク目掛けて向かってくる魔法、キクを庇うようにして氷狐が立った。
 【本当、キク。お主は世話が焼けるな。】
 「ひょ、氷狐。」
 【我、氷狐様が命じる。氷漬け。】
 氷狐は魔法に向かったて手を前に出して詠唱した。向かってくる魔法は一瞬で消えてなくなった。ここからじゃバケモノは確認できないが、相当焦っていると思う。
 【ほれ、立ち上がれ。】
 キクの方を振り返る氷狐の姿は精霊の姿でも、狐の姿でもなかった。
 「その姿って・・」
 【ふむ、この姿は精霊姿の大きいバージョンとでも言っておこうか。それで、キク。大丈夫か?】
 キクの目の前に手を差し出す。キクは躊躇わずに手を掴んだ。氷狐はキクの手を引っ張って立ち上がらせた。
 「うん・・大丈夫。ありがとう。氷狐。」
 立ち上がったキクは服を叩く。
 【・・キク。意外だな。ちゃんとお礼が出来るんだな。】
 顎に手を置いて頷いた。キクはため息をついて「はいはい。」と言う。【それより】と氷狐は真面目な顔をした。
 【まだ、あやつは生きている。キク。倒すか?】
 「・・・倒そう。」
 【それはこの辺の街のためか?】
 「いや・・自分のためだよ。」
 キクはふっと笑った。
 【そうか・・では、キク。我を指示してくれ。】
 「指示?」
 【キクも見ていただろう?サクラが精霊を使う時に『土、木の精霊よ、我らが有るべき場所に帰りなさい。』と。あれは精霊使いが精霊を使う時に言う詠唱みたいなものだ。】
 「でも、僕。精霊使いじゃ・・」
 【我はキクのそばにいれば自由だと言っただろう?それはサクラのそばにいれば自由と同じ意味だ。それはどう言う意味か分かるか?我だけの精霊使いなんだ。お主は。】
 「・・・信じ難いけど・・倒すためにはやるよ。」
 【・・では、行こうか。】
 二人は走ってバケモノの場所に戻った。
 【今だ。キク。早めに詠唱してくれ。】
 「わ、わかった・・」
 氷狐はバケモノに氷の魔法を撃つ。これだけじゃ、倒せない。キクは目を閉じて手を前に出して、言葉を繋げていく。
 『氷の精霊、氷狐。我を守り、目の前の敵を穿て』
 キクが詠唱した瞬間氷狐の体が光った。
 【“我、氷狐様が命じる。氷柱!”】
 バケモノの頭上に氷柱が出てバケモノを刺した。苦痛の悲鳴を上げた。その反動で地面が揺れる。
 「うわ・・」 
 フラッとなった反動でキクは倒れた。いつの間にか狐になった氷狐がそばに来た。
 【大丈夫か?精霊使いは攻撃魔法を使うと魔力を消費するからな。】
 「攻撃魔法じゃなかったら、消費されないのか・・?」 
 【その魔法にもよるが・・基本は消費されない。】
 「今度から・・攻撃魔法は出来るだけ使わないようにしよう・・。」
 【バケモノが出ないといいな。】
 「うーん・・氷狐。休んでいい?」
 【はぁ、わかった。少し休め。“我、氷狐様が命じる。守りの加護”】
 横になったキクに氷狐は詠唱をした。
 【我は少しの間、いなくなるからな。】
 その言葉にキクは寝声で返事をした。












 「私にお兄ちゃんを守れるほどの力を頂戴!これが私のやるべき事でしょう?
 ツバキは胸に手を置いてそう叫ぶ。アハマは腕を組んで、頷いた。サクラは嬉しそうに「そうですね」と言った。
 「ツバキちゃん。何を覚えたい?」
 アハマの顔は嬉しそうだった。
 「えーっとね。『気配察知』『重力操作』『魔法操作』『意識会話』かな。」
 「・・ツバキさん・・あの『魔法操作』はツバキさんには難しい・・と思います・・・。」
 「それでも、挑戦してみちゃダメかな?サクラさん『魔法操作』使えるでしょう?教えて欲しいの。」
 「・・・・ですが・・」
 「いいんじゃないか?」
 「アハマさん・・」
 「ツバキちゃんがこんなにやる気なら教えてあげれば?早くキク、追いかけたいんでしょう?」
 「アハマさん・・。」
 「じゃあ、『気配察知』と『重力操作』は俺が教えるよ。」
 「では、私は『魔法操作』と」
 「『意識会話』は私が教えよう。他にも『意識詠唱』を覚えてもらいたいからな」
 「姉さん・・」
 サクラの言葉を遮って奥から出て来たのはオーナーだった。
 「オーナーさん。」
 「・・・『意識詠唱』は・・難しいがやるか?」
 ツバキに向かってオーナーは言う。冷たい声。でも、優しさも含まれている。
 「やります!オーナーさん・・私に教えてください。」
 「その言葉が聞きたかった。」
 それだけ言って、その場からオーナーは離れた。サクラはオーナーの後を追いかけた。
 「オーナーさん。」
 「サクラか。」
 「『意識会話』使えるんですか?」
 「・・なんだ?使えるのはサクラとキクだけだと思ったか?」
 「私は・・転生の番人だったので・・」
 「神だけが使える魔法ではないはずだ。現に私も・・キクも持っているだろう?」
 オーナーのトーンが下がった。
 「『意識会話』は・・神様の恩恵です。オーナーさんは神様からの恩恵を受け取ったのですか?」
 「それを答えることになんの意味がある?」
 「気になるだけです。」
 「では、逆に質問をしよう。キクは何を成し、恩恵をもらった?」
 「・・キクは・・キクは元々持っていました。」
 「それだと、サクラの言っていたことに矛盾ができる。」
 「・・キクは例外です!『意識会話』は神様の、神様に認められて者しか、使うことは出来ないはずです。オーナーさんはどうして使えるんですか?」
 サクラは焦った様子でオーナーに聞く。
 「・・・ツバキには使えないと言わなかったようだけど・・どうするつもりだったんだ?」
 「何度も挑戦させて、あきらめさせようと・・」
 「それはまぁ、ツバキに酷いことをすんだな。私は・・もう行く。お前もツバキを見習え。どんどん二人に置いてがれるぞ。」
 何も言えずにサクラの前からいなくなった。
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