籠の中の天才

中岡 始

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第4幕

反撃のカウントダウン

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「これから、影山のネットワークを突破するための作戦を説明する」

情報保安庁の会議室に響く翔の声。モニターには、黎の顔がリモート通信で映し出されている。黎の背後には、セルフィアのアイコンがモニターの隅で点滅している。

翔が端末を操作しながら、シャドーネットワークの構造を示す図をスクリーンに投影した。

「影山のネットワークは非常に堅固だ。一見、完璧な構造に見えるが、負荷が集中する箇所に弱点がある。ここだ」

翔が指し示したのは、ネットワークの中枢サーバーに接続する一部のゲートウェイポイントだった。そのポイントは複雑なセキュリティアルゴリズムで保護されているが、アクセスの集中に弱い構造を持っている。

「負荷を一点に集中させれば、そのゲートウェイを突破できる可能性がある。ただし、影山もすぐに気づくだろう。その後の反撃が激化するのは避けられない」

翔の説明に、あかりが補足する。

「だからこそ、このタイミングで黎が開発している新しいプログラムが必要なの」

---

「プログラムの進捗状況は?」

あかりが通信越しに問いかける。黎の画面には膨大なコードが流れており、セルフィアが解析結果をリアルタイムで表示している。

「まだ完成していない。でも、完成すれば影山のシステムを撹乱し、自滅に追い込むアルゴリズムになるはずだ」

「制限時間は?」

翔が尋ねると、セルフィアが即座に答えた。

「シャドーネットワークの完全稼働まで、残り45分です」

「45分……間に合うのか?」

翔が不安げに尋ねる。黎は目を画面から離さず、キーボードを叩き続けた。

「やるしかない。影山を止めるためには、これが必要なんだ」

その言葉に、会議室の空気が一瞬だけ静まり返る。しかし、その静寂を破るように、黎がコードを書き進める音が響き続けた。

---

時間が刻一刻と過ぎていく中、セルフィアが次々と影山のシステムデータを解析し、黎に情報を提供していく。

「黎さん、ここで新しい攻撃アルゴリズムを挿入する必要があります」

「分かった。すぐに対応する」

黎の手が止まることはない。指先がキーボードを叩くたびに、画面に新たなコードが生成されていく。セルフィアとの連携は完璧だったが、それでも時間の圧迫が二人の動きを追い詰めていた。

---

保安庁の会議室では、翔が影山のネットワークの防御パターンをリアルタイムで解析していた。

「影山のシステムがさらに防御を強化してきている。時間を稼ぐために、僕が目くらましを仕掛ける」

「お願い」

あかりが短く答えた。その間にも、部下たちが防御態勢を整えながら、影山の攻撃を受け続けていた。

---

「残り15分です」

セルフィアの冷静な声が黎の耳に届く。黎の目は画面に集中したままだった。

「完成間近だ……あと少し」

キーボードを叩く音がさらに速くなる。プログラムの完成が目前に迫りながらも、影山の攻撃が自宅のシステムにも影響を及ぼし始めていた。

「黎さん、システム負荷が限界に近づいています」

「持たせろ、セルフィア!」

黎の声には焦りと決意が入り混じっていた。その背後では、モニターに赤い警告が点滅し続けている。

---

「完成した!」

黎がついに最後のコードを書き終えた。その瞬間、セルフィアのアイコンが明るく光り、プログラムの起動準備が整った。

「これで影山のシステムを撹乱できる。翔、そっちで準備は?」

「いつでも行ける」

翔の声は緊張感を含みながらも、確信を持っていた。

「黎、送ってくれ。そのプログラムが最後の鍵になる」

黎はプログラムを翔に送信すると同時に、自身の端末でもセルフィアに指示を出した。

「セルフィア、攻撃プログラムを起動しろ」

「了解しました。攻撃プログラムを実行します」

セルフィアの声が響き渡り、黎のモニターにプログラムの実行状況が表示され始めた。

---

「残り時間は?」

「あかり、影山のネットワーク完全稼働まで3分!」

翔の報告に、会議室の空気がさらに張り詰める。

「間に合う……絶対に間に合わせる!」

黎の声が通信越しに響いた。その声には確信があった。

プログラムが送信され、影山のネットワークに侵入を開始。次々と防御を突破し、ネットワーク中枢へと迫っていく。

---

「これが僕たちの反撃だ」

黎の声が静かに響く中、影山のネットワークに大きな混乱が発生し始めた。それは、彼らの反撃が確実に進行していることを示していた。
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