Aegis～裏切りに報いる影の正義

第１幕

Aegisへの情報提供

優子がLANオフィスを後にした後、静寂が戻ったカウンセリングルームで、真崎と川原は改めて彼女のケースについて確認し始めた。デスクの上に整然と並べられた資料には、優子が提供した情報が綿密に整理されている。ここから、ターゲットである大谷信之に関する情報だけを厳選し、被害の本質をAegisイージスへと引き継ぐ準備を進めていく。

真崎が資料に目を通し、慎重に言葉を選びながら口を開いた。

「優子さんのケースは、大谷信之という人物の典型的な詐欺手口の一部にすぎませんが、彼のターゲットとしての特性が強く現れていますね。金銭的な執着と巧妙な人心操作のテクニック……Aegisイージスが介入するには、十分すぎる根拠があります」

川原は黙って真崎の言葉にうなずき、大谷が使ったメッセージの一部や、偽装された写真、振込履歴などを再確認していた。彼女は、被害者である優子がこの資料にどれだけの思いを込めて準備したかを考え、自然と真剣な眼差しになっていた。

「彼が経営者を装い、女性たちを巧みに操り、将来を語りながら金銭を引き出していく……まさに悪質な結婚詐欺の典型例です」

川原の声には毅然とした決意がこもっていた。Aegisイージスは、こうした社会的に有害な人物を対象にした逆詐欺の制裁機関であり、LANが通常の法的手段で対応しきれないケースに対しても、最適な解決を導くことができる。大谷のような悪質な詐欺師に対して、徹底した制裁を与える準備は整っていた。

真崎はさらに慎重に資料を見直し、Aegisイージスに引き継ぐ情報を精査していた。優子の個人情報や感情的な部分は排除され、あくまで大谷のターゲットとしての特性だけが抽出されていく。彼のプロフィール、行動パターン、そして金銭的な執着心に関する情報が要点としてまとめられていった。

「これで大谷の基本情報と金銭的執着に関する特性が明確に整理できましたね。あとは、Aegisイージスに正確に引き継ぐだけです」

真崎がそう確認すると、川原もまた深くうなずいた。優子の安全と匿名性が確保される形で進行されるこのプロセスにおいて、依頼者とターゲットの情報は完全に分離されており、優子の個人情報がAegisイージスに共有されることは一切ない。

真崎と川原は慎重に暗号化されたデータ通信手順を開始し、LANの内部システムを通じて、厳密に選別された情報がAegisイージスへと送信されていった。Aegisイージスは、LANの影で活動する特殊なチームであり、表立っては対応が難しいターゲットに対し、逆詐欺という形で制裁を実行するための精鋭集団である。LANが被害者に代わって正義を果たすために用意した手段として、彼らの活動は一般に知られることのない、秘密裏に行われるものであった。

送信が完了すると、真崎は改めて川原に向き直り、静かに口を開いた。

「藤沢さんの安全は完全に確保されています。この案件は、あくまでAegisイージスが大谷信之に対して独自に制裁を行うことで、被害者が少しでも救われることを目指しています」

「ええ。ターゲットの特性もはっきりしていますし、これでAegisイージスに十分な材料が揃ったはずです」

川原も冷静に応じながら、これから始まる制裁のプロセスを想像していた。