Aegis～裏切りに報いる影の正義

第１幕

優子の決断

真崎と川原の丁寧な説明を最後まで聞き終えた優子は、心の中で静かに考えていた。彼らの言葉には真実味があり、長い間誰にも理解されなかった自分の苦しみを初めて理解してくれたような温かさがあった。彼女は、ここで自分の痛みを癒し、少しでも救われる可能性があるのなら、その手を取りたいという思いが胸に膨らんでいくのを感じた。

「これ以上、苦しみ続けたくない……」

優子は、真崎と川原の前でそう静かに呟いた。これまでの数ヶ月間、心を壊すような出来事の数々が頭をよぎった。大谷への信頼を裏切られたこと、家族や友人にも相談できず、ひとりで苦しんできた日々――その全てが、彼女の心に重くのしかかっていた。そして、その苦しみから解放されるために、自分にできることがあるならそれを試してみたいと、今、強く感じていた。

優子がゆっくりと顔を上げ、真崎と川原に視線を向けた。

「もし、私のようなケースでも助けてもらえるなら、代替支援をお願いしたいです。これ以上、自分を責め続けるのは辛いんです」

その言葉に、真崎は優しい眼差しを向けながら、静かにうなずいた。

「藤沢さん、ご決断いただきありがとうございます。私たちも、藤沢さんが少しでも前に進めるように精一杯サポートさせていただきます。そして、お伝えしておきたいのは、今回の代替支援を通じて、藤沢さんの被害額を取り戻せる可能性があるということです」

真崎の言葉に、優子の心は少しだけ軽くなった。これまで失われたものが戻るかもしれない――その可能性は、彼女にとって大きな救いだった。優子はそのまま、真崎から差し出された依頼書を見つめ、少し緊張した面持ちでペンを手に取った。

「自分の苦しみを少しでも取り戻せるなら……」

そう呟きながら、彼女は意を決して依頼書に署名をした。そのペンを走らせる音が静かな部屋に響く中、優子は今まで抱えてきた重荷を少しずつ下ろすような感覚を覚えた。