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原田くんは、思わせぶりな人だ
牛乳配達員の話2
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「習慣的に行ってることに対していきなり質問をされたら、答えられるかな?」
例えば、とエレン先生はひとりの生徒と目を合わせる。
「渚。五ヶ月前の火曜の英語塾では、なにを習った?」
「え」
「単語ひとつでもいいよ、教えてくれる?」
彼女は斜め上を見上げたあとに、「覚えていないです」と言っていた。エレン先生は、「だよね」と言った。
「翔太。君が半年前に取得した技はなに?」
空手教室に通っていると言った、男子生徒とも目を合わせる。
「ええっ。なんだったけな……」
「突き技?それとも蹴り技?」
「どっちかっていうと蹴る方だったかな……」
「本当?」
「いや、打ち技かも」
「どれやねん」
突如関西弁でツッコミを入れたエレン先生に、みんなが笑った。
「牛乳配達員も君たちと同じで、何月何日にどこの家に何本牛乳を届けたかなんか、忘れているだろう。自分の生活に馴染んでいるものって、意外と覚えてないんだよね」
身にはなっているよ、とエレン先生は付け加えた。
「去年の体育祭で勝ったか負けたかは覚えているのに、三日前にしたジャンケンの結果は覚えていない。誕生日にもらったプレゼントは言えるのに、昨日おうちの人に作ってもらった夕ご飯はすぐに答えられない」
みんなが深く頷いていた。「僕は覚えてる、カレーだったから」と、端の方からひとつ聞こえるだけ。
例えば、とエレン先生はひとりの生徒と目を合わせる。
「渚。五ヶ月前の火曜の英語塾では、なにを習った?」
「え」
「単語ひとつでもいいよ、教えてくれる?」
彼女は斜め上を見上げたあとに、「覚えていないです」と言っていた。エレン先生は、「だよね」と言った。
「翔太。君が半年前に取得した技はなに?」
空手教室に通っていると言った、男子生徒とも目を合わせる。
「ええっ。なんだったけな……」
「突き技?それとも蹴り技?」
「どっちかっていうと蹴る方だったかな……」
「本当?」
「いや、打ち技かも」
「どれやねん」
突如関西弁でツッコミを入れたエレン先生に、みんなが笑った。
「牛乳配達員も君たちと同じで、何月何日にどこの家に何本牛乳を届けたかなんか、忘れているだろう。自分の生活に馴染んでいるものって、意外と覚えてないんだよね」
身にはなっているよ、とエレン先生は付け加えた。
「去年の体育祭で勝ったか負けたかは覚えているのに、三日前にしたジャンケンの結果は覚えていない。誕生日にもらったプレゼントは言えるのに、昨日おうちの人に作ってもらった夕ご飯はすぐに答えられない」
みんなが深く頷いていた。「僕は覚えてる、カレーだったから」と、端の方からひとつ聞こえるだけ。
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