原田くんの赤信号

華子

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原田くんは、思わせぶりな人だ

原田くんの天気予報5

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 目の前にある切なげな原田くんの瞳に、今にも丸ごと吸い込まれそうになった。ドキドキと今日の雨みたくさわぐわたしの鼓動は、恋かと一瞬間違えそうになるほどだ。

 原田くんはわたしなんかを好きじゃないって、それはもう何度も学んだこと。だから振りまわされたくはない。

「す、好きになれるわけないじゃんっ」

 原田くんを遠ざけようと、わたしは彼の腕に手をやった。だけどもびくともしなかった。

「俺のこと好きになってよ」
「ならないっ」
「付き合おう」
「いやだ!」

 なんでよ、どうして。どうしてわたしを好きじゃない原田くんと、原田くんを好きじゃないわたしが恋人同士にならなきゃいけないの?おかしいよ原田くん。変だよ原田くん!

 退かせない腕を諦めて、上半身ごと後ろに逃げようとした、その瞬間だった。

「あっ」

 勢いあまって、コンクリートに頭を打ちつけてしまいそうになったわたしを、原田くんは抱きかかえて受け止めた。

 ドキドキドキドキ

 原田くんの胸元に引き寄せられたわたしの耳に届く、彼の鼓動。

 ドキドキドキドキ

 わたしを好きじゃないのに、どうしてこんなに速いの?

「なあ……」

 原田くんの声は、少し上から降ってきた。

「どうやったら俺のこと、好きになってくれる?」

 切ない声。やるせなさそうな声。「好きだよ」とは言ってくれない、変な告白。

 わたしは首を横に振るので精一杯。でも不思議と、この場所から逃げたいとは思わなかった。

「ねえ瑠夏」
「………」
「ねえってば、おい」
「………」
「キス、してみる?」
「へ!」

 とんでもない発言に、縮こまっていた体をガバッと起こした。
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