道理恋慕

華子

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守護と殺人

守護と殺人13

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「ただいま」と玄関から聞こえた父親の声は、蓮にとって何かの合図になった。

「きゃっ」

 床へ座ったままの桜子の首に腕を回した彼は、自身に彼女の身体を密着させ、銃口を俺と母親に向けてくる。
 突拍子もない蓮の行動に驚愕し、俺は強張った。

「れ、蓮……?」
「大和兄貴、喋らないでもらっていいっすか?」
「蓮お前…なにやってんの……?」
「喋らないでくださいってば。撃ちますよ?」

 桜子は唇の動きだけで「助けて」と何度も言っていた。しかし助けようにも、相手がとんでもない武器を持っている以上、方法がなさすぎる。
 俺は母親を自分の背後にやり、彼女の盾になった。

「ん?やけに静かだな」

 カウンターの一直線上にある、居間と廊下を隔てる扉が父親の声と共にカチャンとひらくと、銃の先が俺を逸れた。
 俺が目視出来るのは、蓮を視界に捉えた父親の背中。彼は居間へ入って1歩のところで立ち止まる。

「な、なんだお前……」

 こちらから父親の顔は確認できないが、声からはかなり大きな動揺が伝わった。
 銃口を父親に向ける蓮。無邪気な犬のような蓮は消え失せて、喜怒哀楽全てを失った木彫り人形の如く、瞬きすらしていない。

「おかえりなさい組長さん。あんたが遅いから、もう少しで帰らされるとこでしたよ」
「ああ?」
「あんたのタマ、今から取りますんで」

 これは廃墟アパートの他人事ではない、建設現場のドラマでもない。

「がっつり殺しますから」

 今から俺等家族が巻き込まれるのは、凄惨な現実だ。
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