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絶望と憤慨
絶望と憤慨2
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「え……」
もう、俺の中で正解は出ている。けれど俺は佐藤に聞く。
「な、なんなんすかこれ………」
これはただの光る石。そんな回答でもしてやくれないかと、僅かな望みをかけて。
デスクの上にそれを置き、佐藤は言う。
「一希の金歯だろ、これ」
その瞬間、脳天がぐらりと揺れた。
「う、嘘だ………」
「嘘じゃねえよ!じゃああいつ、今日なんでここにいねえんだよ!」
ダンッと佐藤が卓に拳を落とした衝撃で、金歯は数ミリ飛び跳ねる。蛍光灯の光を反射し煌めくそれに、聖一希の笑顔が広がった。
「…ど、どこにあったんすかこの歯」
「今日本部に寄ったら親分の灰皿に入ってた!」
「父さんの灰皿……?」
「親分はヤキを入れただけでタマは取ってねえって言ってたけど、一希と全く連絡取れねえんだよ!お前ならなにか知ってるんじゃねえのかよ!」
怒鳴りつけられながら、俺はつい先日の彼との会話を思い返していた。
俺、まじでそろそろ内田組からは足洗うから。今日の龍は、最後のプレゼントな。
そう言った彼の横顔は、野球部を引退する青年のように清々しかった。
彼はきっと、違う道へ進もうとしていた。それが理にかなった道なのかどうかは分からないけれど、自身の居場所を移そうとしていた。
「そんな、嘘だろ……」
たったそれだけで彼が殺められてしまうなんて、俺は信じない。
もう、俺の中で正解は出ている。けれど俺は佐藤に聞く。
「な、なんなんすかこれ………」
これはただの光る石。そんな回答でもしてやくれないかと、僅かな望みをかけて。
デスクの上にそれを置き、佐藤は言う。
「一希の金歯だろ、これ」
その瞬間、脳天がぐらりと揺れた。
「う、嘘だ………」
「嘘じゃねえよ!じゃああいつ、今日なんでここにいねえんだよ!」
ダンッと佐藤が卓に拳を落とした衝撃で、金歯は数ミリ飛び跳ねる。蛍光灯の光を反射し煌めくそれに、聖一希の笑顔が広がった。
「…ど、どこにあったんすかこの歯」
「今日本部に寄ったら親分の灰皿に入ってた!」
「父さんの灰皿……?」
「親分はヤキを入れただけでタマは取ってねえって言ってたけど、一希と全く連絡取れねえんだよ!お前ならなにか知ってるんじゃねえのかよ!」
怒鳴りつけられながら、俺はつい先日の彼との会話を思い返していた。
俺、まじでそろそろ内田組からは足洗うから。今日の龍は、最後のプレゼントな。
そう言った彼の横顔は、野球部を引退する青年のように清々しかった。
彼はきっと、違う道へ進もうとしていた。それが理にかなった道なのかどうかは分からないけれど、自身の居場所を移そうとしていた。
「そんな、嘘だろ……」
たったそれだけで彼が殺められてしまうなんて、俺は信じない。
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