道理恋慕

華子

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刺青と鬼胎

刺青と鬼胎5

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 田中の待つ車へ急いで戻ったが、貧乏揺すりをしていた彼に怒鳴られた。

「遅えよ大和!なにしてたんだよっ!」

 俺のせいじゃない、でもそんな事は言えない。

「す、すみませんっ。なんかちっとも袋の中身信用してもらえなくて、めちゃめちゃ確認されちゃってっ」
「お前の見た目が明らかにガキくせえからだろっ!少しは気ぃ遣えよ!」
「すみません……」

 煙草に火を灯した田中は、車を急発進。しかしコントロールを誤ったようで、ボディーをガードレールに擦りつけていた。

「ああもう、畜生!」

 こんなにも苛立つ彼は、初めてだ。

 時折する舌打ちや、独り言のような小言を耳にしながら行く帰路は居心地が悪かった。不機嫌な田中を隣に、俺も不愉快になっていく。

 サイドミラーをふと見れば、正真正銘中学生のチンケな男と目が合った。
 ナメられたくない、あなどられたくない。これでは仕事に支障が出る。

「田中さん……どうやったら俺、ナメられなくなりますかね……」

 気付けばそう聞いていた。

「もう嫌なんすよ、俺。ガキだガキだって言われるの」

 サイドミラーに映る中坊。煙草を持って火をつけて、そこへ煙を吐きつけた。すると田中が今日初めての笑顔を見せてきた。

「なんだよ大和。お前、さっきの俺の言葉気にしてんの?」

 普通に喋ってくれた彼に、俺は胸を撫で下ろす。

「それもありますけど、他でも言われるんで……」
「まあ、お前は他の組の奴と比べても格段に若えからな。しょうがないっちゃしょうがないよな」
「もうちょっと大人に見られる方法ありますかね……?」
「はははっ。じゃああれだ、スミでも入れりゃあいいじゃん」
「スミ?刺青の事っすか?」
「おう。そしたら少しは厳つく見えんだろ」

 確かにただでさえ恐い父親を、より恐ろしく見せているのは、刺青の影響もあると思う。が、しかし。

「無理っすよ、俺まだ未成年っすもん。このご時世、15歳の身体彫ってくれるとこなんてないっすよ」

 刺青など入れる勇気はないし、法的に無理だしで却下する俺の傍、田中は「チチチ」と人差し指を揺蕩わせた。

「法律気にしてる極道なんか、いねーぞ」
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