道理恋慕

華子

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刺青と鬼胎

刺青と鬼胎1

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 小学5年生から中学3年生の9月まで、約4年半付き合った彼女との関係に、終止符を打った。
 それは心にぽっかりと穴が空く出来事で、同時に俺の中の何かもふっと宇宙そらの向こうへ葬られた気がした。きっとそれは、人間として失ってはいけない『何か』だったのだろうけれど、今となってはそんな事どうでもいい。

 俺はヤクザの息子。その肩書きにそぐうよう、これからを生きていかなければいけないのだから。

「父さん、帰ってたの?」

 神社から帰宅すると、俺以外の家族3人が居間に揃っていて、各々自由に時間を過ごしていた。夕飯は鶏そぼろ丼。匂いだけで分かる。

「おかえり大和。昨日は大変だったな、よくやったじゃないか」

 父親の言う『昨日』とは、建設現場での1件だろう。食卓に座る彼と向き合うかたちで、俺も椅子に腰を掛けた。

「俺はなにもしてないよ。1歳しか変わらない蓮の方が全然上手くやる」
「蓮?」
「蓮だよ、知らないの?」
「いや、父さんは入団する輩全員とさかずきを交わすようにしているから、知っているはずだ。なんだったっけなぁ蓮、蓮……」

 腕を組んだ父親は、斜め上の天井を見た。そんな彼を見て、母親がくすりと笑う。

「あなたいつも酔っ払いすぎなのよ。昨日入ってきた新人の子達の顔も覚えてないでしょ」
「あ~、えーっと。昨日のはどんな顔だったかなあ……」
「ほら、まったくも~。大和、お酒でこんな風になっちゃだめよ」

「参った参った」と頭を掻いた父親は、手元のビールに口をつけた。夫婦のそんなトークには、俺も笑った。
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