道理恋慕

華子

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懺悔と離別

懺悔と離別8

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「芽衣立って。ここじゃ通行人の邪魔になるよ」

 自身を抱えて身を震わせる君に、俺は感情を抑えて言った。

「芽衣聞いてる?こんなとこでしゃがんでちゃ、迷惑だよ」

 次第に呼吸が荒くなる芽衣。酸素を取り入れる事すら難しそうだった。

「芽衣……」

 抱きしめたい。今すぐ芽衣を抱き寄せて「ごめんね嘘だよ」とキスがしたい。

『やめとけ。犯罪者だろ?』

 けれどもそれは、自身が制した。
 心の中、もうひとりの自分が己を腐す。

『お前の真っ黒な手なんかで芽衣に触るなよ、彼女がけがれるじゃないか。お前は人を撃ったんだ。そのせいであいつは死んだんだ』

 違う。俺のせいじゃない。殺したのは他の奴だ。

『でもお前が逃してやれば、命は助かった』

 そんな事はない。たとえあの時脱出に成功したとしても、必ず見つかって殺されていたんだ。内田組の連中は、そういう奴等の集まりだ。

『廃墟の男もお前が金さえ貰っていれば、死ななかった。お前が命を奪ったようなものだ』

 そんなっ。

『違うのか?』
 
 その途端、真実が俺を射抜く。

 俺が金を受け取り損ねたあの男の生存を有耶無耶うやむやにしたかったのは、罪の意識を取り除くだけの暗示で、本当はずっとずっと分かっていたんだ。
 死にいく彼の腹を勝手に動かしていたのは俺のイメージの中だけで、とっくに息なんてしていなかったって事。

 芽衣は絶望という螺旋らせんに巻かれているのにもかかわらず、妙な俺の様子に勘付き失意の顔を上げてこう言った。

「うっちゃん、どうしたの……?」

 様々な衝撃な出来事が、飛び交う俺の脳。

「ねえ、うっちゃん。私と別れなきゃいけない理由はなんなのよおっ」

 ぼろぼろと、懺悔の涙を垂れ流す自分に嫌気がさした。
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