127 / 196
懺悔と離別
懺悔と離別8
しおりを挟む
「芽衣立って。ここじゃ通行人の邪魔になるよ」
自身を抱えて身を震わせる君に、俺は感情を抑えて言った。
「芽衣聞いてる?こんなとこでしゃがんでちゃ、迷惑だよ」
次第に呼吸が荒くなる芽衣。酸素を取り入れる事すら難しそうだった。
「芽衣……」
抱きしめたい。今すぐ芽衣を抱き寄せて「ごめんね嘘だよ」とキスがしたい。
『やめとけ。犯罪者だろ?』
けれどもそれは、自身が制した。
心の中、もうひとりの自分が己を腐す。
『お前の真っ黒な手なんかで芽衣に触るなよ、彼女が汚れるじゃないか。お前は人を撃ったんだ。そのせいであいつは死んだんだ』
違う。俺のせいじゃない。殺したのは他の奴だ。
『でもお前が逃してやれば、命は助かった』
そんな事はない。たとえあの時脱出に成功したとしても、必ず見つかって殺されていたんだ。内田組の連中は、そういう奴等の集まりだ。
『廃墟の男もお前が金さえ貰っていれば、死ななかった。お前が命を奪ったようなものだ』
そんなっ。
『違うのか?』
その途端、真実が俺を射抜く。
俺が金を受け取り損ねたあの男の生存を有耶無耶にしたかったのは、罪の意識を取り除くだけの暗示で、本当はずっとずっと分かっていたんだ。
死にいく彼の腹を勝手に動かしていたのは俺のイメージの中だけで、とっくに息なんてしていなかったって事。
芽衣は絶望という螺旋に巻かれているのにもかかわらず、妙な俺の様子に勘付き失意の顔を上げてこう言った。
「うっちゃん、どうしたの……?」
様々な衝撃な出来事が、飛び交う俺の脳。
「ねえ、うっちゃん。私と別れなきゃいけない理由はなんなのよおっ」
ぼろぼろと、懺悔の涙を垂れ流す自分に嫌気がさした。
自身を抱えて身を震わせる君に、俺は感情を抑えて言った。
「芽衣聞いてる?こんなとこでしゃがんでちゃ、迷惑だよ」
次第に呼吸が荒くなる芽衣。酸素を取り入れる事すら難しそうだった。
「芽衣……」
抱きしめたい。今すぐ芽衣を抱き寄せて「ごめんね嘘だよ」とキスがしたい。
『やめとけ。犯罪者だろ?』
けれどもそれは、自身が制した。
心の中、もうひとりの自分が己を腐す。
『お前の真っ黒な手なんかで芽衣に触るなよ、彼女が汚れるじゃないか。お前は人を撃ったんだ。そのせいであいつは死んだんだ』
違う。俺のせいじゃない。殺したのは他の奴だ。
『でもお前が逃してやれば、命は助かった』
そんな事はない。たとえあの時脱出に成功したとしても、必ず見つかって殺されていたんだ。内田組の連中は、そういう奴等の集まりだ。
『廃墟の男もお前が金さえ貰っていれば、死ななかった。お前が命を奪ったようなものだ』
そんなっ。
『違うのか?』
その途端、真実が俺を射抜く。
俺が金を受け取り損ねたあの男の生存を有耶無耶にしたかったのは、罪の意識を取り除くだけの暗示で、本当はずっとずっと分かっていたんだ。
死にいく彼の腹を勝手に動かしていたのは俺のイメージの中だけで、とっくに息なんてしていなかったって事。
芽衣は絶望という螺旋に巻かれているのにもかかわらず、妙な俺の様子に勘付き失意の顔を上げてこう言った。
「うっちゃん、どうしたの……?」
様々な衝撃な出来事が、飛び交う俺の脳。
「ねえ、うっちゃん。私と別れなきゃいけない理由はなんなのよおっ」
ぼろぼろと、懺悔の涙を垂れ流す自分に嫌気がさした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる