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懺悔と離別
懺悔と離別6
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人が疎らな神社はひっそりとしていたけれど、この街にはもう生存していないだろうと思っていた蝉が、ジリリと鳴いていた。
「うっちゃんお願いごとしてくー?ふたり揃って高校受かりますようにーって」
「いや、いいや。金持ってないし」
「私あるよ」
ゴソゴソと財布を漁り出した芽衣を目にしていると、君は茶色の硬貨を1枚取り出す。
「これでふたり分でもいいかなあ?5円と5円で、足して10円」
「ケチかなあ?」と自嘲する芽衣に、俺の顔も綻んだ。「ご縁にかけたんだろ?」と、その硬貨を一緒に賽銭箱に放り投げたかった。しかし俺は、それを出来ない人種だから。
「芽衣。俺、硬貨投げられない」
繋いでいた君の手を、矢庭に離したんだ。
「え……?」
鈴へと歩んでいたふたりの足も、同時に止まった。ぽかんと俺を見上げる君。何も知らない初な瞳で見つめられれば、グサリと刃物が胸を抉る。
「なんで?たったの10円だし、気にしなくていいのに」
「10円でも千円でも、俺は投げられない」
「どうして?うっちゃん」
素朴な疑問、けれどそれは重い質問。
「俺……」
頑張れ、大和。
「俺、高校には行かないから」
「うっちゃんお願いごとしてくー?ふたり揃って高校受かりますようにーって」
「いや、いいや。金持ってないし」
「私あるよ」
ゴソゴソと財布を漁り出した芽衣を目にしていると、君は茶色の硬貨を1枚取り出す。
「これでふたり分でもいいかなあ?5円と5円で、足して10円」
「ケチかなあ?」と自嘲する芽衣に、俺の顔も綻んだ。「ご縁にかけたんだろ?」と、その硬貨を一緒に賽銭箱に放り投げたかった。しかし俺は、それを出来ない人種だから。
「芽衣。俺、硬貨投げられない」
繋いでいた君の手を、矢庭に離したんだ。
「え……?」
鈴へと歩んでいたふたりの足も、同時に止まった。ぽかんと俺を見上げる君。何も知らない初な瞳で見つめられれば、グサリと刃物が胸を抉る。
「なんで?たったの10円だし、気にしなくていいのに」
「10円でも千円でも、俺は投げられない」
「どうして?うっちゃん」
素朴な疑問、けれどそれは重い質問。
「俺……」
頑張れ、大和。
「俺、高校には行かないから」
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