道理恋慕

華子

文字の大きさ
上 下
103 / 196
決意と懇願

決意と懇願6

しおりを挟む
「なんなの、ふざけてんの?それとも俺への情け?」

 不愉快を惜しみなく出した勇吾は、足を組む。

「小学校の時からずっと好きな女の子と男友達が付き合ってるのを間近でいつも見せられてるから?奪えるなら奪ってもいいよってこと?」

 芽衣への恋心は隠していたはずの彼なのに、それも惜しみなく出してきた。

「そ、そうじゃない」
「じゃあどういう意味だよ。さっきから説明が足らなすぎてよく分からないよ」

 俺は頭が足りていない。補足も何もなしに、要望だけを押し付ければ友達が不快になる事くらい明白なのに。
 勇吾には、秘密にしておくメリットもなければデメリットもないと思っている。俺はとっくに崖の下にいるのだし、これ以上落ちる事もないだろう。
 もしかしたらドン引きされて、今日以降もう2度と俺とは関わってくれなくなるかもしれないが、それはやむを得ない。勇吾の判断に任せよう。

 徐々に固めていく気持ち。最後にぎゅっと押さえつけ、崩れるなよと釘を刺す。
 おもむろに、ひらく口。

「俺、高校行こうと思ってたんだけど、やめたんだ」
「え」
「本当はさ、芽衣と同じ高校とこ行こうと思って勉強してたんだけど、父さんにその事話したら、進学しないで家の仕事手伝えって言われちゃって。ガキみたいに反抗してみたけど、だめだった」
「家の仕事?」
「そう。だから俺働くことにしたんだ。中学出たらすぐに」

 淡白に話を進めていても、勇吾がしてくるだろう質問を予想してしまうと、どうしても脈は速くなった。

「大和の家って、なにやってるの?」

 ほら、これ。

 粘土のように固めた気持ち、もう大丈夫。

「俺の親の仕事はねえ」

 大丈夫っ。

「ヤクザだよ。反社会的勢力ってやつ」
しおりを挟む

処理中です...