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中毒と未来
中毒と未来12
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芽衣とは2週間ぶりに会える。彼女の塾や、俺の仕事の都合でなかなか予定は合わせられず、こんなにも日にちが空いてしまった。
俺は就寝前の、ほんの隙間時間でもいいから会いたいタイプだけれど、君の家は遅い時間に出歩く事を許さない家庭。高校生になればもう少し俺に君を任せたりしてくれるのかな、なんて淡い期待を寄せても無駄だろうか。
「うっちゃん、プール行かない?」
前日の君は液晶の中、弾んだ声で言ってきた。俺の答えは勿論これ。
「行く!」
待ち合わせ場所など決めなくても、それは信号機の下だと決まっている。蝉の声は夏を盛り上げ、燃ゆる陽炎が暑さを助長する。しかしうなじを滴る汗だって、君と一緒ならば不快には思わない。
「おはよー!うっちゃん早いじゃーん!」
芽衣のビーチサンダルが、ペタペタと夏を駆けてきた。
「おはよ芽衣。可愛い」
「え。なに朝から」
挨拶に続いての褒め言葉に、君の顔が赤く染まった。
「好き」
「へ?」
「ちょー好き」
「なになに、うっちゃん変だってば!今日なんか、甘い!」
薄手の白いTシャツに、デニム生地のミニスカート。華奢な身体、滑らかな肌。今すぐ抱きしめたいと強く思った。
「行こっか」
「うんっ」
手を繋ぎ、並んで歩く。芽衣の歩幅に合わせてゆっくりと。
俺を変わらず現実社会に留めてくれるのは、愛しい君だ。君がいるから俺は組には行きたくないし、道徳的な判断をして、真っ直ぐな道を歩みたいと思う。
手から伝わるこの温もりは、失いたくない。
「楽しみだなあ、うっちゃんとプールっ」
無邪気に笑う君の、側にいたい。
俺は就寝前の、ほんの隙間時間でもいいから会いたいタイプだけれど、君の家は遅い時間に出歩く事を許さない家庭。高校生になればもう少し俺に君を任せたりしてくれるのかな、なんて淡い期待を寄せても無駄だろうか。
「うっちゃん、プール行かない?」
前日の君は液晶の中、弾んだ声で言ってきた。俺の答えは勿論これ。
「行く!」
待ち合わせ場所など決めなくても、それは信号機の下だと決まっている。蝉の声は夏を盛り上げ、燃ゆる陽炎が暑さを助長する。しかしうなじを滴る汗だって、君と一緒ならば不快には思わない。
「おはよー!うっちゃん早いじゃーん!」
芽衣のビーチサンダルが、ペタペタと夏を駆けてきた。
「おはよ芽衣。可愛い」
「え。なに朝から」
挨拶に続いての褒め言葉に、君の顔が赤く染まった。
「好き」
「へ?」
「ちょー好き」
「なになに、うっちゃん変だってば!今日なんか、甘い!」
薄手の白いTシャツに、デニム生地のミニスカート。華奢な身体、滑らかな肌。今すぐ抱きしめたいと強く思った。
「行こっか」
「うんっ」
手を繋ぎ、並んで歩く。芽衣の歩幅に合わせてゆっくりと。
俺を変わらず現実社会に留めてくれるのは、愛しい君だ。君がいるから俺は組には行きたくないし、道徳的な判断をして、真っ直ぐな道を歩みたいと思う。
手から伝わるこの温もりは、失いたくない。
「楽しみだなあ、うっちゃんとプールっ」
無邪気に笑う君の、側にいたい。
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