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中毒と未来
中毒と未来9
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人生2度目。駅前での受け子を命じられた俺は、「行ってきます」と事務所の扉に手をかけた。
「大和、携帯持ってけ、トバシの方」
そう言って田中から胸元に放られたのは、1台のスマートフォン。
「なんかあったら俺に電話しろ。まあこの前も上手くできたから、平気だとは思うけど」
「はい。わかりました」
「あと、見張り役はもう現場に着いてっから。何口で受け取るかはそいつに電話で確認してな」
覚悟を決めて1歩外に出れば、俺はその瞬間から『内田大和』ではなくなった。今日は知らない老婆の孫の、後輩の弟という設定だ。
ドクドクと鼓動が速まるのは、初回と何も変わらない。
俺は事務所が入っているビルの下で気休めの一服をすると、隙間から顔を出す太陽を見上げて呟いた。
「ごめんね、ごめんなさい……」
まだ見ぬ婆さん、利用してしまうその孫。
「芽衣、ごめん……」
そして、芽衣。
彼女を裏切っているような気分になった自分には、こんな事を言って聞かせる。
これは本当の俺ではない。だって今の俺は、『内田大和』ではない人間だから。
煙草の煙が太陽へ向かって昇って行くさまを目で追ってから、俺は目的地へと向かった。
「大和、携帯持ってけ、トバシの方」
そう言って田中から胸元に放られたのは、1台のスマートフォン。
「なんかあったら俺に電話しろ。まあこの前も上手くできたから、平気だとは思うけど」
「はい。わかりました」
「あと、見張り役はもう現場に着いてっから。何口で受け取るかはそいつに電話で確認してな」
覚悟を決めて1歩外に出れば、俺はその瞬間から『内田大和』ではなくなった。今日は知らない老婆の孫の、後輩の弟という設定だ。
ドクドクと鼓動が速まるのは、初回と何も変わらない。
俺は事務所が入っているビルの下で気休めの一服をすると、隙間から顔を出す太陽を見上げて呟いた。
「ごめんね、ごめんなさい……」
まだ見ぬ婆さん、利用してしまうその孫。
「芽衣、ごめん……」
そして、芽衣。
彼女を裏切っているような気分になった自分には、こんな事を言って聞かせる。
これは本当の俺ではない。だって今の俺は、『内田大和』ではない人間だから。
煙草の煙が太陽へ向かって昇って行くさまを目で追ってから、俺は目的地へと向かった。
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