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中毒と未来
中毒と未来4
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「私?私は近所の笹北高校に行こうかなって思ってるよ。うっちゃんは?」
テスト勉強を口実に誘った俺の自宅で、芽衣は下敷きで顔を扇ぎながら言った。
「うっちゃんは高校どこ行くの?」
「暑い?」
「うん、ちょっと」
「うい」
ピッピッと空調を操作して、リモコンをその辺に置く。
「琴ちゃんは私立目指すんだって。うっちゃんは?」
「まだ決まってない。っていうかなんでみんなもう決まってんの?決めるの早くねえか?」
「だって早く目標立てなさいって、お母さんがうるさいんだもん」
「ふーん」
うちの両親は、長男の俺が受験生になったところで、べつに何も言ってこねえけど。
シャープペンを指で回し、そこへ溜め息を落としていると、芽衣が「じゃあさ」と下敷きを止めた。
「どこ行くか決まってないなら、うっちゃんも私と一緒の高校行こうよ。1駅しか離れていないから、通学も楽ちんだよ」
「えー……笹北ってレベルどんくらい?」
「私の圏内くらいじゃん?」
「んなら俺よりは全然上か」
高校へ進学しても、なるべく長い時間芽衣といたい。けれどこんな頭脳の持ち主の俺が、今から君を追えるのだろうか。
「芽衣のとこ、俺受かんのかなー。微妙じゃね?」
「頑張れば受かるよ」
「どんくらい」
「みんなと同じくらい」
シャープペンを回しては落とし、回しては落としを繰り返している俺の前、芽衣は口を動かしながらもペンを走らせていた。
「みんなと同じくらい、かあ……」
体育以外は大嫌いな勉強。「うーん」と唸り続け、カチャカチャと手元で音を立てる俺に、芽衣は呆れた顔でこう言った。
「うっちゃんと勉強するの、今日で最後にするね」
「え」
「だってさっきからうっちゃん、遊んでばっかりなんだもん。士気が下がる」
「し、しき……?」
ぴんと角を生やした芽衣は、そこから一定時間、口をきいてはくれなかった。
君の背中を見送った後に『しきがさがる』をスマートフォンで検索した俺は、がっくりと肩を落とした。
テスト勉強を口実に誘った俺の自宅で、芽衣は下敷きで顔を扇ぎながら言った。
「うっちゃんは高校どこ行くの?」
「暑い?」
「うん、ちょっと」
「うい」
ピッピッと空調を操作して、リモコンをその辺に置く。
「琴ちゃんは私立目指すんだって。うっちゃんは?」
「まだ決まってない。っていうかなんでみんなもう決まってんの?決めるの早くねえか?」
「だって早く目標立てなさいって、お母さんがうるさいんだもん」
「ふーん」
うちの両親は、長男の俺が受験生になったところで、べつに何も言ってこねえけど。
シャープペンを指で回し、そこへ溜め息を落としていると、芽衣が「じゃあさ」と下敷きを止めた。
「どこ行くか決まってないなら、うっちゃんも私と一緒の高校行こうよ。1駅しか離れていないから、通学も楽ちんだよ」
「えー……笹北ってレベルどんくらい?」
「私の圏内くらいじゃん?」
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高校へ進学しても、なるべく長い時間芽衣といたい。けれどこんな頭脳の持ち主の俺が、今から君を追えるのだろうか。
「芽衣のとこ、俺受かんのかなー。微妙じゃね?」
「頑張れば受かるよ」
「どんくらい」
「みんなと同じくらい」
シャープペンを回しては落とし、回しては落としを繰り返している俺の前、芽衣は口を動かしながらもペンを走らせていた。
「みんなと同じくらい、かあ……」
体育以外は大嫌いな勉強。「うーん」と唸り続け、カチャカチャと手元で音を立てる俺に、芽衣は呆れた顔でこう言った。
「うっちゃんと勉強するの、今日で最後にするね」
「え」
「だってさっきからうっちゃん、遊んでばっかりなんだもん。士気が下がる」
「し、しき……?」
ぴんと角を生やした芽衣は、そこから一定時間、口をきいてはくれなかった。
君の背中を見送った後に『しきがさがる』をスマートフォンで検索した俺は、がっくりと肩を落とした。
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