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空虚と妖雲
空虚と妖雲2
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「ただいまー。うっちゃん来たよー」
「お、お邪魔します」
寝起きでボサボサの髪にワックスを押しあてただけで、服装はいつも通りのよれっとしたやつ。芽衣が早速出してくれた白いスリッパに差し込む、使い古したスニーカーソックス。
場違いだな、とふと思う。
「いらっしゃい、君がうっちゃん?ずっと会いたかったんだよね」
まず最初に出迎えてくれたのは、彼女の6つ歳上だという兄。
「は、はじめましてっ。遅れてすみませんっ」
「気にしてないよ。リビングの方が暖かいから、さあどうぞ」
アイボリーのニットを着て、ジーンズはぴったり目で、どちらかと言えば勇吾のような優等生タイプに見えた。
「冬休みはどこか行ったの?」
「あー……行ってないです」
「そっか。のんびりもいいよね」
「のんびりも、度が過ぎると退屈ですよ」
「あはははっ」
そんなやり取りをしながら廊下を進んでいると、ふと後ろからの視線が気になり振り返る。するとそこには、どこか嬉しそうに微笑む芽衣がいた。
「な、なに芽衣」
「べつにー。ふふっ」
「なんで笑ってんの」
「さあ」
そんな芽衣を見て、俺は彼女が桜子とアイドルトークに花を咲かせていたあの日を思い出す。
いい景色だから。
君もそう思ってくれたのだろうか。
「お、お邪魔します」
寝起きでボサボサの髪にワックスを押しあてただけで、服装はいつも通りのよれっとしたやつ。芽衣が早速出してくれた白いスリッパに差し込む、使い古したスニーカーソックス。
場違いだな、とふと思う。
「いらっしゃい、君がうっちゃん?ずっと会いたかったんだよね」
まず最初に出迎えてくれたのは、彼女の6つ歳上だという兄。
「は、はじめましてっ。遅れてすみませんっ」
「気にしてないよ。リビングの方が暖かいから、さあどうぞ」
アイボリーのニットを着て、ジーンズはぴったり目で、どちらかと言えば勇吾のような優等生タイプに見えた。
「冬休みはどこか行ったの?」
「あー……行ってないです」
「そっか。のんびりもいいよね」
「のんびりも、度が過ぎると退屈ですよ」
「あはははっ」
そんなやり取りをしながら廊下を進んでいると、ふと後ろからの視線が気になり振り返る。するとそこには、どこか嬉しそうに微笑む芽衣がいた。
「な、なに芽衣」
「べつにー。ふふっ」
「なんで笑ってんの」
「さあ」
そんな芽衣を見て、俺は彼女が桜子とアイドルトークに花を咲かせていたあの日を思い出す。
いい景色だから。
君もそう思ってくれたのだろうか。
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