道理恋慕

華子

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日常と異常

日常と異常6

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 俺の知っている喧嘩というものは、大体途中で誰かが割って入るか、お節介な生徒が先生にチクって終了。酔っ払い同士の争いなんかは、警察官に止められたりもしている。
 けれど、今回は違う。ここは誰にも邪魔されない場所で、対極に立つ俺等しか居ない空間だ。

「大和、念の為内鍵もかけておけ。誰か来ないか聞き耳立ててろ」

 鈴木の膝蹴りが男の鳩尾にガッツリ入ったところで、佐藤は扉付近で突っ立ったままの俺に指示を出す。
 けれど馬乗りになった鈴木が、男の顔面向けて猛打を浴びせているこの場面に、俺の身体はすぐには動けない。

「おい早くしろ大和!」

 彼等をキレさせたら俺もこんな仕打ちにあってしまうのかと、その気持ちだけで懸命に行動した。

 震える足、震える手。内鍵のチェーンに付着したであろう俺の指紋が、気にかかった。

 いつの間にやらポケットの中の銃は、護身用と化していた。佐藤や鈴木が俺にも牙を剥いてきたらやるしかないと、漠然と思った。
 手を膨らみに運んでいく。するとそこに頼もしさを感じる自分がいた。

「おいオッサン!くたばんのはまだはえぇぞ!残りの薬はどこに隠した!それだけ言ってから逝け!」

 血だらけで原型も留めていない男の顔は、とてもじゃないが見られたものではない。

「…か、勘弁してくれ……い、命だけは………」
「いいからありかを言え!」

 グホッと床へ血溜まりを吐いた男は「あ、あそ…こ、引き出し……」と一直線に伸ばせもしない人差し指を、隅の箪笥に向けていた。
 男に跨ったまま、目だけで佐藤に合図を送った鈴木は、すぐにその視線を男に戻す。

 1番上の引き出しから順に開けてはその中身を乱雑に放り、底が見えるとまた次の引き出しを探る佐藤の足元には、書類やくたびれた衣類で溢れていく。

「んだよ、どこだよもうっ!」

 用済みの引き出しが増える毎に、れる佐藤。俺もそれに比例した。

 万が一粉1包いっぽうでも出てこなければ、俺が命で償う番だ。

 助けてっ。

 そう強く祈った時、脳を掠めたのは神の姿や仏ではなくて、ボールを一緒に追いかけていた頃の父親だった。
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