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初犯と狼狽
初犯と狼狽16
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ちんたらしている暇はない。早く任務を終えて帰らなければ、桜子の心配する時間が延びてしまう。
7番出口までの地図をスマートフォンでチェックした俺は、先を急いだ。
「イラッシャイマセー。オ兄サンドウ?ヨッテカナイ?」
マッサージ屋の前では、数人の外国人女性がタイトなスカートで客引きをしていた。
「イラッシャイマセー。ア、コノ子ハダメダメ、ワカスギ。ミセイネン」
未成年には施せないマッサージとは、一体どんなだよ。
じろじろ見てくる彼女達の視線から逃れるように路地へ入ると、一気に遮断された光。
すれ違う事も難しそうな狭い路地には外灯ひとつとしてなくて、目が慣れるまでには少しの時間を要する。だから俺は、突然現れた気がした男に驚いた。
「わっ!」
「おい、大きな声出すんじゃねぇっ」
「す、すみませんっ」
深く被られた黒いニット帽に、黒い服。顔はよく見えない。
その男はポケットから取り出した封筒を俺の胸元へ押し付けると、くいくいと曲げた指だけで、『モノ』を催促した。慌ててビニール袋を彼に渡せば、「サンキュ」と言って背中を向けられる。
足音も立てずにすぐ暗闇に溶け込んだその背中を見て、俺はついさっきまで桜子と観ていたテレビ番組を思い出した。
「……帰ろう」
ミッション完了。
お年玉よりずっと分厚い封筒の中身は、怖くて覗けやしない。
7番出口までの地図をスマートフォンでチェックした俺は、先を急いだ。
「イラッシャイマセー。オ兄サンドウ?ヨッテカナイ?」
マッサージ屋の前では、数人の外国人女性がタイトなスカートで客引きをしていた。
「イラッシャイマセー。ア、コノ子ハダメダメ、ワカスギ。ミセイネン」
未成年には施せないマッサージとは、一体どんなだよ。
じろじろ見てくる彼女達の視線から逃れるように路地へ入ると、一気に遮断された光。
すれ違う事も難しそうな狭い路地には外灯ひとつとしてなくて、目が慣れるまでには少しの時間を要する。だから俺は、突然現れた気がした男に驚いた。
「わっ!」
「おい、大きな声出すんじゃねぇっ」
「す、すみませんっ」
深く被られた黒いニット帽に、黒い服。顔はよく見えない。
その男はポケットから取り出した封筒を俺の胸元へ押し付けると、くいくいと曲げた指だけで、『モノ』を催促した。慌ててビニール袋を彼に渡せば、「サンキュ」と言って背中を向けられる。
足音も立てずにすぐ暗闇に溶け込んだその背中を見て、俺はついさっきまで桜子と観ていたテレビ番組を思い出した。
「……帰ろう」
ミッション完了。
お年玉よりずっと分厚い封筒の中身は、怖くて覗けやしない。
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