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恋慕と成就
恋慕と成就11
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小学5年生で恋人がいるというのは、世間一般的には早いらしい。現に俺等の学年ではそんな噂、聞いた事もなかった。それに、もしカップルの1組や2組、学年でいたとしても、きっとその連中はこそこそ会ったり「好き」を囁いたりして、密かに愛を育むんだ。たぶん俺みたいに、愛情を全面に出したりなんかしない。
「芽衣と結婚したいなあっ」
翌日。クラスメイトの誰よりも早くに給食を食べ終えた俺は、同じ班の奴等の目も憚らずに呟く。芽衣の鼻からは、少し牛乳が吹き出たように見えた。
俺が口にした思いの丈は、隣の班の勇吾の耳にも届いたようで、彼は斜めに傾けた椅子と共に聞いてくる。
「え、なに。芽衣と大和って付き合ってんの?」
勇吾のフナのような顔を目視してから芽衣に視線を戻すと、彼女は口元を袖で拭いながらぶんぶんと大きく横へ首を振った。そんな彼女のさまに胸を撫で下ろした勇吾が、「だよな」とどこか自信あり気に言ってくるから、俺のヘソは曲がったんだ。
「なに言ってんの芽衣、俺等付き合ってるじゃん」
「ちょ、ちょっとうっちゃん!」
「本当のことだろ」
「そ、それはっ……!」
「ていうことだから。勇吾、俺の彼女に手ぇ出さないでね」
これは勇吾への意地悪なのか、芽衣を苛めているのか。自分でも性格が悪いと思う発言だった。
周りがヒューヒューと俺と芽衣を囃し立て始めると、空気の読める優等生の勇吾は椅子の角度を戻し、黙って残りのおかずを口に運んでいた。
「……うっちゃんのバカっ」
のっけから俺になんてなかった君のハートが、どんどん遠ざかる。
「芽衣と結婚したいなあっ」
翌日。クラスメイトの誰よりも早くに給食を食べ終えた俺は、同じ班の奴等の目も憚らずに呟く。芽衣の鼻からは、少し牛乳が吹き出たように見えた。
俺が口にした思いの丈は、隣の班の勇吾の耳にも届いたようで、彼は斜めに傾けた椅子と共に聞いてくる。
「え、なに。芽衣と大和って付き合ってんの?」
勇吾のフナのような顔を目視してから芽衣に視線を戻すと、彼女は口元を袖で拭いながらぶんぶんと大きく横へ首を振った。そんな彼女のさまに胸を撫で下ろした勇吾が、「だよな」とどこか自信あり気に言ってくるから、俺のヘソは曲がったんだ。
「なに言ってんの芽衣、俺等付き合ってるじゃん」
「ちょ、ちょっとうっちゃん!」
「本当のことだろ」
「そ、それはっ……!」
「ていうことだから。勇吾、俺の彼女に手ぇ出さないでね」
これは勇吾への意地悪なのか、芽衣を苛めているのか。自分でも性格が悪いと思う発言だった。
周りがヒューヒューと俺と芽衣を囃し立て始めると、空気の読める優等生の勇吾は椅子の角度を戻し、黙って残りのおかずを口に運んでいた。
「……うっちゃんのバカっ」
のっけから俺になんてなかった君のハートが、どんどん遠ざかる。
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